十九話
食堂を出て、あたりを見回して飛鳥を探していると、飛鳥の後ろ姿を見つけた。その後ろ姿へと向かって走る。
「飛鳥!」
後ろを振り返り陽人に気づいた飛鳥は、走って逃げ出した。しかし差は徐々に縮まり陽人は飛鳥の腕をつかむ。
「待てよ飛鳥」
「なに?離してよ」
「ごめん飛鳥。おれが悪かった」
「いいよ。べつに本当のことだし。日芽香みたいに性格良くないし」
「そんなことない」
「だから友達がいないんだってわかってる」
「たしかに飛鳥は感情表現は上手くないし、不器用だよ」
「私はこんな自分が嫌だよ」
飛鳥の目には薄っすらと光るもの浮かんでいる。陽人は飛鳥を抱き寄せる。
「でも、飛鳥の性格悪いとは思わない。あーだこーだ言っても優しいし」
「そんなことない」
「文句を言いながらも最後まで絶対頑張る子だってことも知ってる。おれはそんな飛鳥が好きだよ」
一瞬沈黙に包まれる。
「なにそれ、告白?」
「ち、違うわ!幼馴染として、人間としておまえのそういう所が好きだってことだよ」
「ありがとう陽人」
陽人は飛鳥を見下ろすと、満面の笑みで飛鳥は陽人を見ていた。
「私を怒らせた罰として今度二人で遊んで。もちろん全部陽人の奢りだからね」
「わかったよ」
少しすると、飛鳥がソワソワし始めた。
「あのさ陽人そろそろ離して?人目が…」
辺りを見ると学生がチラチラ陽人たちの方を見ながら歩いてる。陽人は慌てて飛鳥から離れる。
「おまえら公衆の面前でなにやってんだ?」
陽人と飛鳥が振り返ると、ニヤニヤしながら陽人たちをみる雅月と日芽香がいた。
「なんでおまえらここにいるんだよ」
「日芽香と陽人と齋藤探しに食堂行ったら、生田にあって、おまえらがさっき食堂出て行ったっって聞いて、辺りを見渡してたら、抱き合ってるおまえらを見つけた」
「べつに抱き合ってないし、陽人が勝手に抱きついてきただけだし」
顔を少し赤くしながら答える飛鳥。
「そんなこと言って、うれしかったくせに」
「日芽香!余計な事言わなくていいの!」
日芽香の口を押えようとする飛鳥。いつも通りの飛鳥に戻ったようで少しホッとする陽人。
「これはみんなに報告だな」
「みんなって誰だよ?」
「大樹とか、麻衣さんとか、ゼミのやつらとかかな?笑」
「やめてくれよ」
「嫌だね〜まぁこんだけ堂々とやってれば、黙ってても結局バレそうだけどな」
雅月の予想は当たり、次の日から会う知り合い全員に弄られた陽人だった。