二章
十九話
食堂を出て、あたりを見回して飛鳥を探していると、飛鳥の後ろ姿を見つけた。その後ろ姿へと向かって走る。

「飛鳥!」

後ろを振り返り陽人に気づいた飛鳥は、走って逃げ出した。しかし差は徐々に縮まり陽人は飛鳥の腕をつかむ。

「待てよ飛鳥」

「なに?離してよ」

「ごめん飛鳥。おれが悪かった」

「いいよ。べつに本当のことだし。日芽香みたいに性格良くないし」

「そんなことない」

「だから友達がいないんだってわかってる」

「たしかに飛鳥は感情表現は上手くないし、不器用だよ」

「私はこんな自分が嫌だよ」

飛鳥の目には薄っすらと光るもの浮かんでいる。陽人は飛鳥を抱き寄せる。

「でも、飛鳥の性格悪いとは思わない。あーだこーだ言っても優しいし」

「そんなことない」

「文句を言いながらも最後まで絶対頑張る子だってことも知ってる。おれはそんな飛鳥が好きだよ」

一瞬沈黙に包まれる。

「なにそれ、告白?」

「ち、違うわ!幼馴染として、人間としておまえのそういう所が好きだってことだよ」

「ありがとう陽人」

陽人は飛鳥を見下ろすと、満面の笑みで飛鳥は陽人を見ていた。

「私を怒らせた罰として今度二人で遊んで。もちろん全部陽人の奢りだからね」

「わかったよ」

少しすると、飛鳥がソワソワし始めた。

「あのさ陽人そろそろ離して?人目が…」

辺りを見ると学生がチラチラ陽人たちの方を見ながら歩いてる。陽人は慌てて飛鳥から離れる。

「おまえら公衆の面前でなにやってんだ?」

陽人と飛鳥が振り返ると、ニヤニヤしながら陽人たちをみる雅月と日芽香がいた。

「なんでおまえらここにいるんだよ」

「日芽香と陽人と齋藤探しに食堂行ったら、生田にあって、おまえらがさっき食堂出て行ったっって聞いて、辺りを見渡してたら、抱き合ってるおまえらを見つけた」

「べつに抱き合ってないし、陽人が勝手に抱きついてきただけだし」

顔を少し赤くしながら答える飛鳥。

「そんなこと言って、うれしかったくせに」

「日芽香!余計な事言わなくていいの!」

日芽香の口を押えようとする飛鳥。いつも通りの飛鳥に戻ったようで少しホッとする陽人。

「これはみんなに報告だな」

「みんなって誰だよ?」

「大樹とか、麻衣さんとか、ゼミのやつらとかかな?笑」

「やめてくれよ」

「嫌だね〜まぁこんだけ堂々とやってれば、黙ってても結局バレそうだけどな」

雅月の予想は当たり、次の日から会う知り合い全員に弄られた陽人だった。





白夜 ( 2018/09/07(金) 13:20 )