二章
十五話
絵梨花が目を開けたとき、女の手を押さえていた人物それは陽人だった。

「おまえら生田に何してんだ?」

「白石君!?これは・・・その・・・」

陽人の登場に動揺を隠せない女たち。

「おまえら絵梨花になんかしてみろ、ただじゃすまないから!」

陽人の言葉を聞くと、女三人はその場を走り去っていった。

「大丈夫か生田?」

陽人がそう聞くと、絵梨花の緊張の糸が切れたのだろうか、絵梨花の目には涙がこぼれる。それを見た陽人は絵梨花をそっと抱きしめる。

「怖かったよな。もう大丈夫だから」

陽人の胸で泣く絵梨花。

「もう大丈夫だよ。助けてくれてありがとう」

陽人から離れ、笑顔でそう告げた絵梨花。すると講義の終わりのチャイムが鳴る。

「白石君次講義じゃなかったっけ?私は大丈夫だから行っていいよ」

「次の講義はサボるよ。こんな状態の生田を一人置いてはいけないよ」

それを聞いた絵梨花は嬉しそうな顔したがすぐに少し不機嫌そうな表情に変わった。

「おれ生田のことなんか怒らせるようなこと言ったかな」

「さっきは・・・って言ってくれたのに」

陽人は絵梨花の言葉をちゃんと聞き取れずに聞き返す。

「さっきは絵梨花って呼んでくれたのに、生田に戻ってる・・・」

少し恥ずかしそうにつぶやく。

「さっきのはついとっさに呼んでしまっただけで」

するとプク顔をして陽人を見つめる絵梨花。

「わかったよ。これからは絵梨花って呼ぶよ」

陽人は少し顔を赤くしながら言う。

「じゃあ私も陽人って呼ぶね?」

笑顔でそう言う絵梨花に、ドキドキする陽人であった。

白夜 ( 2018/09/03(月) 01:13 )