十一話
男が水をかけようとした瞬間、祐希は水をかけられることを悟り目をつぶる。バシャッ、水の音が聞こえる。しかし祐希には水が感覚が一つもない。恐る恐る目を開けると、陽人が祐希をかばって水をかけられていたのだった。
その光景に静まり返った店内。その中最初に声を発したのは陽人だった。
「祐希大丈夫か?水かかってないか?」
陽人は祐希の方へ振り返り、祐希の心配をする。
「大丈夫です…」
「ならよかった」
安堵の表情を浮かべる。そのあとすぐ男方へと向く。
「お客様、他のお客様のご迷惑になりますので、お帰りいただいてもよろしいでしょうか?」
陽人がそう言うと、お店の他の客からの視線などをきにしたのか、
「こんな店二度とくるか!!」
男は捨て台詞をはいて店を後にした。
その後陽人は濡れた髪を少し拭いてから、各テーブルを回り、お騒がせしましたと謝罪しキッチンに戻って行った。
「設楽さんすみません。出過ぎた真似をして。お店の評判が落ちたりしたらおれの責任です」
「気にするな陽人。おれがちゃんと店長には後で伝えとくから」
「ありがとうございます」
その後、陽人はいつも通り働き、そしてバイトが終わった。陽人は着替えお店をでて帰ろうとすると・・・
「白石先輩!!!」
後ろから祐希が走ってきた。
「今日は私のせいで本当にすみませんでした」
深々と頭を下げる祐希。
「全然大丈夫だよ。気にすんな。それよりも与田に水かからなくてよかったわ」
「あのときはありがとうございました。先輩のことちょっとかっこいいなって思いました」
笑顔で陽人の方をみる祐希。祐希の笑顔に思わず見とれてしまった。
「お先に失礼します」
祐希はそのまま走って帰ってしまった。
「青春だな」
「設楽さん!?見てたんですか」
「流石イケメン君だわ笑」
「やめてくださいよ〜」
設楽にからかわれる陽人だった。