翼を駆る少女〜4〜
しばし滑走路とその向こうにある海を眺めながら押し黙る2人…
やがて沈黙を破ったのはたかみなだ
「そういやあんときぱるるを撮ってた玲奈…なんか惚けてたよね」
「え?あたしそんな顔してました?いや〜意識してなかったな〜」
顔が真っ赤になっているのが自覚できる
この島に来てから様々な写真を撮影したが、そのどれもがジャーナリズム精神が働いた物だ…
故に取り上げられた訳だが…
だがあの一枚は違った
「まぁ…可愛いしね〜愛想はないけどね。まったく職業柄、愛想は必要なくてももう少し…」
たかみなが横で話している間も私は彼女の事を考えていた
島崎遥香…この島に任官しているパイロットの1人だ
年齢は20歳…14歳で成人としてある程度の権利が与えられるこの国では、その年齢から軍人という職業も選べる
彼女やたかみなは14歳で軍人としてのキャリアをスタートさせていた
島崎遥香はパイロットとしてようやく独り立ちした若手だ
あの時…そんな彼女の儚げさに思わず見とれてしまいシャッターをきったのだ
「玲奈って…まさかそっちの方の…」
たかみなが何かを探るような目でこっちを見ていた
「ん?違いますよ!ち・が・い・ま・す」
慌て否定をする私にたかみなは突然吹き出した
「アハハハ!冗談だって!そんなムキにならなくても」
私の肩を叩きながら爆笑するたかみなに微妙な表情になる
「楽しそうですね〜」
唐突に後ろからの声に振り返る
そこには整備用の繋ぎを着た男性が立っていた
頭は禿げ上がり腹も出て中年の男性は柔和な表情でこちらを見ていた
「お〜おやっさん!整備は終わったんだ〜いつもありがとうございます」
たかみなは立ち上がり頭を下げる
彼は福本修一…階級は空曹長…この基地にある機体の整備を担当する整備班の主任だ
みんなから「おやっさん」と呼ばれ慕われている
玲奈もまた例外ではなく、年齢差を感じる事なく友情を育んでいた
「高橋一尉…京都の空軍庁には出頭しないんですか?」
歩み寄りながら話し掛ける彼に、たかみなは苦虫を潰した顔になる