<オムニバス> 大人気イメクラ店「slope」突撃リポート

















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指名→「橋未来虹ちゃん」
→体験します (怒りブースター編)
(※名前変更推奨。大いに感情移入して、まずはイライラをお溜めください←笑)


 ドアを開けて入った瞬間、漂う薬品臭に懐かしさを感じるヒマもなく、いきなり、
「ちょっと、遅くな〜い?」
「何分、待たせんの?」
「待たせてんだから走ってきなさいよ、走って」
 と矢継ぎ早に罵声を浴びせられた。
(へっ…?)
 ぽかんとして目をやると、テーブルの上にどっかり座った制服女子が三人、呆れた表情でこっちを見ている。
(さ、三人…?あれ?4Pコースにしたっけ?)
 なんてことに戸惑っていると、三人の中で最も長身の女が、
「次、私たち待たせるようなマネしたらマジでボコるかんね?お前なんか私たちでも勝てるんだから」
 と凄んだ後、
「ところで、頼んだもの、ちゃんと買ってきたんでしょうね?」
 と、蔵夫が提げてるレジ袋を寄越せという。
(あぁ、なるほど…!)
 どうやら自分はこの冒頭から鼻につく生意気JK3人組のパシリで、だからレジ袋を持って入れと指示があったのかと納得した。
 おそるおそるレジ袋を手渡すと、早速、中を漁り出す三人だが、
「ちょっと…私、ワッフルって言ったよね?何これ?あんパン?いや、どういう間違い?意味わかんないんだけど…バカなの?」
「はぁ?カフェオレっつったのに何でブラックコーヒー買ってきてんの?こいつ、うっざ!」
「ねぇ、アイスは〜?」
 と、非難囂々。
 そこで、またも、あの長身の女が、
「アンタってさぁ、おつかいもまともに出来ないの?つーか、マジ、何だったら出来るの?ポンコツすぎるんだけど」
 と嫌味な言い方をする。
 苦笑いでかわす蔵夫だが、内心、
(このノッポ…さっきからちょっとムカつくな…)
 と思った。が、チラッと名札を見ると、

<高橋>

 と書いてある。
(なるほど、この娘が今日の相手か…どうりでイライラさせやがる…)
 演出とは思えないほど、自然と憎しみが溜まっていく。
 未来虹の高圧的な態度はなおも続き、
「ねぇ、謝ってよ。おつかいも満足にこなせなくてすいませんでした、でしょ?ほら、早く言えよ」
 と、時折、汚い言葉も交えて言ってくる。
「…お、おつかいも満足にこなせなくて…す、すいませんでした…」
 と、とりあえず言われるままに謝ると、
「いや、全っ然、聞こえない!この距離で聞こえないんだけど!…ねぇ、茉莉(まりぃ)、今の聞こえた?」
「んーん」
「陽世は?」
「聞こえなーい」
「ほら、誰も聞こえてないって言ってるよ?もっもちゃんと言って」
「ちゃ、ちゃんとって言われても…」
 と口ごもると、未来虹はニヤッと笑って、
「そうだ。一発ギャグっぽく言えば聞こえるかも…♪」
 と素人特有の雑なムチャブリを始め、それに、
「あぁ、いいねぇ!それ!」
「見たい♪見たい♪」
 と茉莉と陽世も乗っかる。
 この空気…完全にやる空気…!
(マ、マジかよ…!)
 仕方なく、絶対にウケないことは空気で察しながら、

「…あ、あーい、とぅいまてーん…!」

 と、某一発屋芸人のギャグを全力で披露した。…が、案の定、
「…く、くくっ…」
「え?な、なに?今の…?」
「と、とぅいまてん…?意味わかんないんだけど…」
 と、輪になってヒソヒソ話の三人。
 苦笑止まりの大スベリ…消えたくなるぐらいの大事故だ。
 中でも特にギャグを振った張本人である未来虹の無責任さが半端ない。
(く、くそ…!この小娘ども…!かかなくてもいい恥をかかせやがって…!)
 みるみる顔が赤くなる蔵夫。
 何がムカつくって、恥をかかせるだけかかせておいて、何事もなかったかのように澄ました顔で雑談を始めたことだ。

「ねぇ。こないだのテスト、どうだった?」
「私、けっこうできたよ」
「マジ?私、ヤバかったんだけど」
「そういや、最近、彼氏とどんな感じ?」
「ん〜…イマイチ。何か、浮気されてる疑惑あるんだよねぇ…」
「ほらー、だから言ったじゃん。アイツはやめた方がいいって」
「あ、それで思い出したんだけどさ。最近、加藤先輩と高本先輩で若林先生の取り合い戦争が勃発してるって知ってる?」
「うっそぉ!?」
「マジぃ!?」
「しかも二人ともけっこう本気なんだって…」
「えー、先生と生徒はまずいよ…」
「禁断のヤツじゃん…」

 と話が尽きない三人。
 その間ずっと、蔵夫は放置され、傍で佇んでいたが、ふと、未来虹が、
「あっ…!」
 と声を上げた。
 見ると、話に夢中で手が滑ったのか、飲んでいたジュースを落としてこぼしているではないか。
「もぉ、何やってんの!」
「だっさぁ…」
 と、茉莉と陽世に笑われ、
「やっちゃったよぉ…最悪だぁ…」
 と肩を落とす未来虹。
 床に広がるジュースの水溜まり。
「ねぇ。跡とか残ったら私たちが溜まり場にしてるのバレちゃうよ」
「とりあえず拭かなきゃ…!」
 と言われて、未来虹は、蔵夫に目を向けて、
「ねぇ、何とかしてよ」
「…え?お、俺…?」
 全てのポケットを探るも、ティッシュもハンカチも入っていない。
「な、何も持ってないよ…」
 と正直に言うと、
「もぉっ!ホント使えないっ!こんな時のためにハンカチぐらい持っとけっつーの!」
 と自分が悪いくせに八つ当たりをし、
「何か拭くもの、他にないの?」
 と、急かした挙げ句、
「ねぇ、学ラン着てるじゃん。学ランで拭けば?」
「バ、バカ!な、何でだよっ!」
 とんでもない暴論にさすがに言い返すも、未来虹は悪びれる様子もなく、
「別にあってもなくても一緒じゃん!ほら、脱げよ!」
「あっ!コラっ…!」
 剥ぎ取るように学ランを脱がされ、床にこぼれたジュースの上に被せられる。
 それをソックスを穿いた細くて長い脚でグリグリと踏みつけて水分を吸わせ、
「これでよし!」
(よし!じゃねーよ…!)
 恨めしそうに未来虹を睨む蔵夫だが、当の本人は悪びれる様子もなく、
「…なに?その目。いいじゃん、別にアンタが学ラン着てるかどうかなんて誰も見てないって。むしろ、いてもいなくても誰も興味ないんだから」
 と、なかなか酷いことを言ってゲラゲラ笑う。
 そのあまりの言い分に、
「アハハ!それはひどい!」
「ウケるっ!」
 と笑い転げる茉莉と陽世。
(こ、この野郎…!いいかげんにしろよ…!)
 度を越した生意気に沸々と溜まるフラストレーション…。
 本当に演出なのかと疑いたくなるイジメのクオリティ。
 おかげで見事に復讐心が芽生えた。
(このノッポ、覚えてろよ…!その生意気な態度、今に改めさせてやるからな…!)
 とはいえ、どうやって復讐にこぎつけようか考えていると、まるで、その蔵夫の心情を察したように、突然、スピーカーから、

「おーい、誰かいるのかー?」

 と見回り教師の声がして、
「ヤ、ヤバっ!」
「隠れてっ!」
 と慌ただしくテーブルの下に潜る未来虹、茉莉、陽世。
「ほら、アンタもしゃがみなさいよ!見つかるじゃんッ!」
 と言われ、渋々、身を屈める。
 演出は気が利いていて、

 コツコツ…

 と足音が近づき、ふいに、

 ガラガラっ!

 とドアを開く音とともに、間接照明が廊下の明かりが差したように光る。
「…気のせいか。話し声が聞こえた気がしたが…」
 とスピーカーから呟きが漏れ、そしてドアを閉め、足音が遠ざかる。
「…ふぅ」
「今の、野球部の顧問やってる春日でしょ?説教、長いんだよ。アイツ」
「危ない危ない…」
 と、何とかやりすごしてホッと一息の三人だが、茉莉と陽世が、
「また戻ってくるかもしれないよ」
「ちょっと見てこよう」
 と、こそこそテーブルの下から飛び出した。
「え、ちょっ…待ってよ!二人とも!」
 出遅れて取り残された未来虹。
「大丈夫。すぐ戻ってくるよ」
「は、早くしてよ?コイツと二人きりとか、私、マジで無理だから…!」
 と口を尖らせる未来虹。
 そして、茉莉と陽世が部屋から出ていった。
 部屋に残るは、蔵夫と未来虹、二人だけ。
(チャンス…!)
 お膳立ては充分、テーブルの下で蔵夫の目が輝いた。

鰹のたたき(塩) ( 2021/07/31(土) 09:04 )