欅共和国外伝 女王陥落物語 ― 悪魔の襲来 ―










小説トップ
関有美子の陥落物語
1.転落の始まり
「…うぅっ…」
 気を失っていた有美子が、ようやく目を覚ました。
 だが、重い瞼を開いても視界は真っ暗のまま…。
 それが、テープで目の位置をぐるぐる巻きにされていると気付くのに、そう時間はかからなかった。
「え…?な、何なの、これ…!?」
 さらに、革張りの台の上に仰向けに寝かされていること、その台の四隅に手足を「X」の字で固定されていること、そして、いつのまにか着ていた服や下着を全て脱がされ、裸体の上に大きなバスタオルを一枚、掛けられているだけのことなど、続けざまに気付いて困惑する有美子。
「くっ…!」
 手足を揺すってもがいてみるが、手首、足首をそれぞれ固く留めた革バンドは微動だにしない。
 そして、何度も挑戦するうちに、急に何かに気付き、抵抗をやめる有美子。
(周りに…誰か…いる…!)
 視界を奪われても、何となく、気配で察した。
 まるで死んだように動きを止めていると、ふいに、
「…何だ、無駄な抵抗は諦めたのか?ククク…」
 と男の笑い声がした。
(やっぱり…!)
 と有美子は思いながら、
「だ、誰…?」
 と、同じ空間にいるその男に問う。
「なに、名乗るほどの者じゃない」
 と男は笑みを含んで答え、
「関有美子…聞くところによると、統治メンバーのリーダー、菅井友香さえも一目置くほどの箱入り娘らしいじゃないか?えぇ?」
「━━━」
 そっぽを向く有美子。
 同時に、
(さてはコイツが、虹花さんを手にかけ、理佐ささんを拉致した、例の反抗勢力の親玉…!)
 と気付き、緊張が走る。
(で、でも、何で…?私は、確か、ねるさんに…)


 先輩である長濱ねるから
「相談したいことがあるんやけど…」
 と言って呼び出された有美子。
 そして待ち合わせ場所に向かい、ねると会ったところまでは覚えている。…が、なぜか、そこから、今、目覚めるまでの記憶だけがぽっかりと抜けていて思い出せない。
(ねるさんと会った後、いったい何が…?そして、ねるさんは…?)
 と目隠しの下で訝しげな目をする有美子。
 まさか、そのねるが既に快楽調教に屈して鮫島の言いなりになっており、次の生贄に選ばれた有美子を罠にかけて誘い出したとは思いもしない。
 まんまと呼び出された有美子の隙を突き、背後から劇薬を染み込ませたハンカチで鼻と口を塞ぐねる…。
 そして失神させた有美子を、あろうことか、そのまま、ねるに運ばせ、
「ククク…可哀想な女だ。自分を呼び出した先輩が、まさか快楽欲しさに後輩を売った裏切り者だとも知らずに」
 と笑みを浮かべる鮫島は、まさしく、この女尊男卑の国に現れた悪魔だ。
 そして、その悪魔の手先と化したねるは、言われるがまま、倒れた有美子を復讐兵団の秘密アジトへと運び入れ、これから行われる本日の拷問メニュー、その名も『悶絶必至の女体性感マッサージ責め』の準備を進めた。
 まず、正体のない有美子の服を脱がせて施術台に手足を拘束し、その周りに強力媚薬を含んだアロマオイルを並べる。
 そして傍に置くワゴンの上には、ローター、バイブ、電マなど、これから有美子を責め立てるための大人のオモチャの数々に加え、ねるを自制心を溶かして狂わせたあの『淫蟲』が入ったビンも…。
 それらを並べ終え、
「準備できました…」
 と報告するねる。
「ククク…よろしい」
 と鮫島は満足げな笑みを浮かべ、
「褒美として、向こうの部屋で、たっぷり可愛がってもらうがいい!」
 と言って、ねるを別の部屋に追いやった。
 そこは配下の男たちの溜まり場。
 早足にその部屋へと消えていったねるは、一足先にその部屋に入った理佐とともに、今宵も、群がる絶倫の野獣たちによって力尽きて気絶するまで犯され、よがり狂うのだ。


 そんな先輩たちの情事など露知らず、施術台の上で身動きもできない有美子。
 今の彼女には、まな板の上の鯉…という喩えがピッタリだ。
「ククク…さぁ、早速、始めようか!箱入り娘の裏の顔を引きずり出してやろう!」
 という鮫島の声とともに、身体の上に掛けられたバスタオルがサッと取り払われた。
「やぁっ…!」
 その抜群のプロポーションが敵の目に晒される。
 ぷるぷる震えるスベスベ肌の二の腕と、いい感じに肉のついた細長い脚。
 さらに、ツンと上を向いて型崩れしない美乳、そして手入れの行き届いた陰毛まで…。
「ほぅ、これは素晴らしい…」
 百戦錬磨の鮫島すら、思わず感嘆として声を漏らす極上の裸体。
「こいつは堕とし甲斐がありそうだ。ククク…」
「くっ…!み、見ないで…!」
 と吐き捨てる有美子をよそに、
「やれ!」
 と号令がかかり、それとともに、四方八方から伸びた手が一斉に有美子を身体を撫で回し始めた。
「んっ…や、やぁっ…!」
 鮫島の配下の、女体殺しの術を会得したマッサージ師たちの手。
 有美子に襲いかかる全ての手の平には、既に媚薬オイルが馴染ませてあった。
「あっ…くっ、んっ…!」
 胸に指を添え、ぷるんぷるんと肉を揺する手もあれば、脚の付け根から鼠径部へと、大胆に進む手もある。
 それら、細部まで入念に這い回る無数の手により、瞬く間に全身オイル漬けにされる有美子。
「ククク…気分はどうかな?“有美子お嬢様”?」
 おどけながら声をかける鮫島。
「う、うるさい…!あ、あなたたち…!こんな事していいと思ってるの…?しょ、承知しないわよ…!」
 と、やんわり圧をかける有美子に対しても、
「ほぅ、さすが箱入り娘。前に相手をしてやった理佐だか何だかいう女とは言葉遣いが違うぜ」
(や、やっぱり…!)
 有美子は歯を食い縛り、
「くっ…!よ、よくも理佐さんを…!」
「理佐だけじゃないぞ?石森虹花…だったか?あの女も、犬好きと聞いたから立派な雌犬にしてやった。そして、お前を誘い出した長濱ねるも、俺のテクニックでヒィヒィ鳴いて、堪らず最後は自ら肉奴隷となることを志願したのだ」
「な、何ですって…!?」
「まぁ、そう驚くことはない。じきに貴様も同じ道を歩むことになる」
 と鮫島は言ってから、
「おっと、貴様というのは無礼でしたねぇ。これは失礼しました、有美子お嬢様。ククク…!」
 と笑った。

 彼の言う通り、先に堕とされた先輩を憂いでいる場合ではない。
 なぜなら、有美子自身の戦いの火蓋も既に切って落とされているからだ…!


(つづく)

鰹のたたき(塩) ( 2020/09/29(火) 23:21 )