欅共和国の罠 ― 捕らわれた男たちの記録 ―

















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序章編 菅井友香と守屋茜に捕まった男
4.必殺テクニック
「それじゃあ、次は私がこっちを責めようかな」
 それまで背後にいた菅井が五郎の目の前に躍り出て、ひざまづき、汗だくの下腹部に指を這わせ、その指を徐々に下へ向ける。
 その先にある五郎のシンボルは射精直後にもかかわらず、まだ一定の固さをしっかりと保っていた。
 そこに到着する菅井の指。
「うぅ…!」
「あらぁ?一回出したのにまだこんなにカチカチ…誘ってるのかしら?」
「バ、バカな事を言うな…そんなワケな…い…くぅっ!」
 もう少しで言い終わる寸前だったが、竿を扱かれ、つい反応してしまった。
 先ほどの守屋とはまた違う感触。
 竿を鷲掴みにするような力強さとスナップの利いた手つきがマッチしていた守屋に対し、この菅井の手コキはフェザータッチで掴むというよりは指を添えているような感じだ。
 だが、そのかわり、空いたもう一方の手が股ぐらを這い、金玉をくすぐるように動いて、それがやたらにもどかしい。
 特に、先に一度イカされて敏感になった身体には、むしろこっちの方が効果てきめんだった。
「や、やめろ…この変態ども…!」
 精一杯の強がりを見せる五郎だが、睨みつけようと見下ろしたわりには、艶かしく覗く胸元が視界に入ると慌てて目線を戻す。
 逆に菅井の方は、意地悪な笑顔で五郎を見上げ、
「早く喋らないと、このまま私のオモチャにしちゃうわよ?」
 と言った。
 拷問官にそぐわない可愛らしい顔のわりに意外と逞しい腕が五郎の股間をまさぐるのも、それはそれでエロチックだ。
 あまりの快感に制止できず、右へ左へ、磔で動かせない身体を必死に揺する五郎。
「どう?気持ちいい?」
 入れ替わって背後に回った守屋が乳首に指を這わせ、
「もっとも、これは奉仕じゃなくて尋問。感じてるヒマがあったら、さっさと喋ってほしいんだけど?」
「う、うるさい…!」
「それとも、もしかして…」
 守屋が、爪の先で尖った乳首を弾きながら、
「こういうことをもっとしてほしくて、わざとだんまり決め込んでるのかなぁ?」
「ふ、ふざけるな…うぅっ!」
 守屋の指は、まるでエステティシャンのように、乳首以外にも、脇腹、下腹部などを這い回る。
 そんな甘い刺激が、イチモツへの刺激を高めるアクセントとなり、五郎を再び、じりじりと追い詰めてゆく。
「ふふっ…さっき出したばかりなのに、もうすっかり元通り。欲しがりさんなんだからぁ」
 目を細め、まるで子供をあやすように笑う菅井。
 その言葉の通り、いつのまにか菅井の手コキのストロークが長くなっていた。
 あっという間に固さと長さを取り戻した五郎の肉棒を、先端から根元まで、しっかりと包み込む。
「うぅっ…ううっ!」
「あらあら、息が荒くなってきちゃって…またイクの?」
「くっ…や、やめろ…て、手を止めてくれ…!」
「だったら言いなさい!あなたは誰?ここに来た目的は?そして、あなたを寄越したのは誰なの!?」
 声を張り上げる守屋。
 しかし、その問いに答えたり、言い返す余裕もなく、五郎は、
「くっ…あぁっ、で、出るっ…うぅっ!」
 と情けない声を上げ、目の前の菅井の胸元めがけて二度目の射精をした。
 さっきよりは控えめとはいえ、それでもまだ白濁とした汁を勢いよく撒き散らした五郎。
「あーあ、またこんなにたくさん…」
 肩越しに苦笑する守屋に対し、顔を赤くして黙って俯く五郎。
 この状況で二度もイカされ、それをクスクスと笑われている屈辱に、五郎は、恥ずかしさで死にそうだった。
 そんな五郎の顔を、下から笑顔で覗き込む菅井。
「ふふっ…またイッちゃったね」
「━━」
「ほら…見て、これ」
 菅井が差し出した手の平には、先ほどと同様、指と指の間で糸を引く精液まみれになっていた。
「二回目なのに、こんなに出しちゃって…恥ずかしくないの?」
 恥ずかしいに決まっている、と唇を噛む五郎。
 菅井も、その手の平で五郎の顔を鷲掴みにして精液を塗りつけ、しっかり敗北の現実を突きつけると、再び五郎の前にひざまづき、
「まだ終わらないよ?白状するまで、だからね」
(…!)
「…うあぁっ!」
 再開する菅井の手コキに悲鳴を上げる五郎。
 既に二回も発射し、敏感になっているので、さすがに辛い。
 守屋の乳首責めも本格化し、弾き、摘み、指で転がす。
 確実に追い詰められている五郎。
 その証拠に、強がり口調が一気に減った。
 ますます防戦一方となる五郎を慣れた手つきで追い詰める菅井、そして守屋。
 守屋は、乳首に爪を立てて引っ張りながら、
「ちなみに今まで何人も潜入に失敗した男がいたけど、ゆっかーの責めに耐えることが出来た男はいないのよ?みんな、ゆっかーのテクニックで骨抜きにされて、最後は涙を垂らしながら、すらすら何もかも喋るの」
(な、何だって…!?)
「あなたはそうならないように頑張ってみる?…といっても、もう既にヤバそうだけど」
 守屋は笑いながら、
「さぁ、ゆっかー。そろそろ“アレ”やっちゃってよ」
 と言った。
 その言葉に思わず表情が強張る五郎。
(…ア、アレ…?アレって何だ…?ま、まさか、これよりまださらにすごいことを…?)
 そして身構えるより先に、五郎の口から声が漏れた。
 菅井が、掴んだ竿の先端に口に含んだのだ。
 そして上目遣いで五郎の苦悶の表情を見ながら、口内で舌を這わせ、さらに竿は扱き続ける。
 この、こちらの反応を見ながら責める様がとんでもなく卑猥で、無意識に男としての欲情を掻き立てられ、妙に興奮してしまう。
 だが今は、下半身に血液を集めている場合ではない。
 むしろ逆効果だ。
「んふっ…また勃ってきてる…」
 口を離し、呟く菅井。
 そしてまたすぐに咥え込み、舐め回す。
 竿を扱く手も速くなり、睾丸への刺激はなおも続く。
「うぅっ…ぐぅぅ…!」
 すっかり脂汗を浮かべる五郎。
 守屋が言った通り、確かに絶妙なテクニックだった。
 これが恋人なら願ったりだが、残念ながら違う。
 それどころか、むしろ耐えなければならない立場だ。
 だが、その意に反して再び高まってくる射精感。
(ウ、ウソだろ…?三回目…こんな短いスパンで…!?)
 菅井の手と口が止まらない。
 睾丸をさする指は「早く精液を製造しろ!」という精巣への発破だろうか。
 竿を扱く手にひねりが加えられ、バキュームの威力が増す。
 上目遣いの目がニヤリと笑った。
 まるで、
(さぁ、まだまだ出るでしょ?出しなさい!)
 と訴えているように。
 そして…。
「があぁぁっ…!イ、イクぅっ!うわぁぁっ…!」
 三回目の射精。
 さすがに勢いは落ち、濁りも薄まった水っぽいものが出た。…が、そんな発射して萎みかけた肉棒が、再び、生暖かい感覚で覆われる。
(…!!)
 ギョッとした目で股間に目をやると、菅井の意地悪な上目遣いと目が合った。
「ま、待ってくれ…!もう無理だ…もう出ないっ!」
 五郎の声を無視して再開される尋問。
「ふふっ。射精直後の追撃フェラって男の人は堪らないんでしょ?ねぇ、どうなの?教えなさいよ」
 冷やかす守屋だが、もうそれどころじゃない。
「ぐわぁぁ!や、やめろぉっ!やめてくれぇぇっ!」
 絶叫する五郎。
 だが、菅井は止まらず、亀頭をしゃぶり、竿を扱き続ける。
 頭を十字架の杭に打ちつけ、手首の鎖をジャラジャラといわせながら五郎は悶絶する。
「どう?そろそろ辛いでしょ?気が変わるなら今のうちよ?」
 乳首を爪の先でつつきながら、守屋が問う。
 だが既に五郎は、物事を判断できる状態になかった。
 拘束が無ければ、今ごろ、飛び上がり、のたうちまわっているだろう。
 とても、駆け引きが思いつくような状況ではない。
 ふいに、背後にいた守屋も前に出てきた。
 その整った顔をぐっと近づけ、
「アンタのその情けない反応を見てたら、私も舐めたくなっちゃったなぁ〜…」
 と言って出した舌を、ゆっくりと乳首へ…。
「ひ、ひぃぃぃ…!」
 すっかり突起と化した乳首に巻き付く舌。
 大きさを確かめるように円周を描いた後、ジュルジュルと音を立てて吸う。
 ここが風俗なら「二輪車」と呼ばれる贅沢な状況にもかかわらず、五郎の顔は蒼ざめている。
「うわぁぁぁっ…!」
 恐怖に絶叫する五郎。 
 口を割るまで終わらない…。
 二人の責めは、その後も延々と続いた。
 
 ……

 そして半時間後。
「がぁぁっ…も、もうやめろぉ…これ以上は…!」
 気が狂ったように呻き声を上げる五郎。
 何回もイカされた。
 イッて萎みかけても、すぐに巧みな舌技で勃起を維持させられ、いたぶられた。
 もう精液はとうに枯れ、一滴も出ない。
 ただ身体がびくびく痙攣するだけなのに、それでも二人の女は、責めの手を止めてくれない。
「ほら、早く言いなさい!言うまで続けるわよ!」
「わ、分かった…!言うっ!言うから、もうやめてくれぇっ!」
 とうとう泣きべそのような声を上げる五郎。
 怒濤の追い込みの前に、敏腕スパイを謳っていた自信、プライド、自尊心が次々に崩れ落ちた。
 五郎の陥落させ、満足げに口を離す菅井。
 束の間のインターバル。
 肩で息をしている間に、二人の女は目の前に仁王立ちになっていた。
 守屋が、いつの間にか手にしていたテープレコーダーを五郎の目の前に突き出し、
(さぁ、全てを喋りなさい)
 という目をした。
 もはや逆らえない。

「お、俺の名は━━五郎…。━━に成功報酬100万円で雇われたスパイで、目的は━━」

 全てを自白した五郎。
 その内容を、しっかりと録音し、満足げに部屋を出ていった二人。
 こうして彼は、完膚なきまで叩きのめされ、初めての敗北を喫した。


 そして、その後…。
 スパイとしての評判が地に落ち、帰る場所を失くした五郎は、今、欅共和国に亡命し、静かな余生を過ごしている。
 現在の彼の仕事は、毎週、あの欅ハウスに呼びつけられ、一週間ぶん溜めた精液が枯れるまで、菅井と守屋にひたすら弄ばれることだった。


(おわり)

鰹のたたき(塩) ( 2020/04/09(木) 23:39 )