欅共和国の罠 ― 捕らわれた男たちの記録 ―

















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序章編 菅井友香と守屋茜に捕まった男
2.地獄の始まり
 それから15分が経った。
「何て強情なのかしら…ラチがあかないわね」
 菅井が、思わず溜め息をついた。
 同時に守屋もムチを持つ手を下ろし、攻撃を止める。
「はぁ…はぁ…どうした?もうおしまいか?」
 呆れる二人の女をよそに、五郎はニヤリと笑った。
 結局、五郎は黙秘を貫いた。
 身体の節々が痛むが、今は秘密を守ることの方が大事だ。
(俺が、この程度の拷問ですんなり口を割るとでも思ったか?ざ、ざまぁみやがれ…!)
 そういう思いで、気持ちでは優位に立てた。
 あとは脱出の方法だ。
 だが、まだ、いまいち力が入らない。
「はぁ…仕方ないわねぇ…」
 守屋は溜め息をつくと、ムチを構えたまま、ゆっくりと磔にされた五郎に近づく。
(と、とうとう殺る気か…?)
 だが、背筋が凍ったのは一瞬だけで、五郎はすぐに苦笑して、
「まったく、根気がないヤツらだな」
「…どういう意味かしら?」
「殺すのは勝手だが、殺せば聞き出したかったことを永久に知ることはできなくなるぞ?それでもいいのか?」
 拷問を執行する者は、この手の文句に弱い。
 案の定、守屋の足が止まった。
 ここで上手く言葉巧みに立ち回り、どうにか拘束を解かせる運びになれば、あとは、たかが女二人、何とか脱出できるかもしれない。
 少し希望を持った思った五郎は、急に饒舌になり、
「どうだ?取引をしないか?」
 と持ちかけた。
「取引…?」
「俺だって人間だ。確かに秘密も大事だが、天秤にかけたら、やっぱり命の方が惜しい。…そこで、どうだろう?ここらで俺を解放してくれるというなら、お前らが聞き出したい秘密を教えようじゃないか。そのまま俺はトンズラするし、あとはお前らの好きにすればいい」
「……」
「どうだ?悪い話じゃないだろう?」
 守屋も菅井も、黙って聞いている。
(もう一押しか?)
 と五郎は思い、
「もちろん逃げた後も、ここで何を見たか…なんて話は墓まで持っていく。お前さんたちのことも誰にも言わないよ」
 と続けた。
 だが、五郎の予想に反し、二人はクスクスと笑いだし、
「貴方、自分で言ってて恥ずかしくないの?」
「そんな見え透いたウソに騙されると思ったのかしら?」
 呆れる二人に、思わず舌打ちをする五郎。
「ヘタのウソのおかげで、私たちも火がついたわ」
「秘密を教えてもらうだけじゃなく、ついでに、そのひねくれた性格もたっぷり後悔させてあげないとねぇ」
 不敵な笑みを浮かべる菅井、そして守屋。
 守屋が再びムチを構える。…が、さっきまでと違って、打ってはこなかった。
 そのかわりに、ムチの先端で五郎の身体をスゥ〜っとなぞっていく。
 赤く腫れたところに触れられるとヒリヒリする。
 やがてムチは乳首のところで止まり、そのまま、先端で乳輪をなぞるように円を描く。
「や、やめろ!何をする!」
 てっきり、また、さっきのようにムチの乱打を食らうと思って身を固くしていた五郎は、守屋の予想外の行動に戸惑いながら声を上げた。
 しかし、守屋は笑って、
「さっきので貴方が痛みに強いのはよく分かったわ。だから、これからは“こっちの責め方”で尋問して、あ・げ・る」
(こ、こっちの責め方…?ま、まさか…!)
 なおも狼狽しているところに、次は菅井が、背後から耳に息を吹きかけてきて、
「痛みに強い人なんてごまんといるけど“快楽”に強い人は聞いたことがないなぁ…貴方はどうかしら?」
「や、やめろよ…お前ら…くっ!」
 十字架に磔にされて動けない中、頭だけを懸命に左右に振り、耳にかかる吐息から逃げる五郎。
 しかし、その間に守屋の操るムチの先端は、乳輪からお腹へと下り、そして唯一の防具であるボクサーパンツの上から股間をペチペチと叩く。
「ぐわっ…!」
「男の人ってさぁ。いくら身体を鍛えても、ここは鍛えることが出来ないんでしょ〜?ほらぁ、どうなの〜?」
 悪戯な笑みを浮かべ、ムチの先端で卑猥に股間を撫で回してくる守屋。
 さらに背後からは菅井が同じく笑みを浮かべ、耳に息を吹きかけながら、猫の手で左右の乳首を引っかいてくる。
「よ、よせ…!」
 身動きのとれない五郎は、その菅井の爪がくすぐったくて、くねくねと腰を揺らす。
 そんな反応を楽しむように、菅井はなおも乳首を責め、一方の守屋はそのパンツの中で眠る男性器のかたどるようにムチを這わす。
 それを繰り返しているうちに、守屋が、わざとらしく、
「あれぇ〜?何だか大きくなってきた気がするんだけどぉ〜?」
「バ、バカなことを言うな…!そんなワケないだろうが…!」
「だって、ほらぁ〜…ここだけ明らかに盛り上がってるじゃん?」
「ふざけるなっ!こ、この状況でそんなことになる筈がないだろう…!」
「あら、そう…」
 ムチの先が、より的確に男性器をかたどる。
 言葉とは裏腹に、いつのまにか、亀頭、竿、そして金玉までもが浮き彫りになってしまった五郎の股間。
「ねぇ。ゆっかーも見てよ。これ…大きくなってるよね?」
 守屋は、あえて声を張って菅井に問う。 
 問われた菅井は、乳首への責めは続けながら、五郎の肩越しに股間を見下ろし、
「ホントだぁ〜!真上から見たら、すごくよく分かる!確かに大きくなってるわ!」
 と、こちらも、わざと声を張って答えた。
 そのやりとりに、耳を真っ赤にして黙ってしまう五郎。
 守屋は、なおもムチの先でのソフトタッチを続けながら、
「ほら、ゆっかーも言ってるじゃない。素直に認めなさいよ。ムチでなぞられて勃起しちゃったんでしょ?これ」
「だ、黙れ…くそっ…!」
「ふーん…往生際が悪いわねぇ」
 そう言うと、守屋は、五郎のパンツのゴムを掴み、
「そんなに言うなら脱がせて確かめさせてもらうわね?」
「な、なにっ!?や、やめろ…!おいっ、ま、 待て…!」
 冷や汗を垂らして慌てる五郎をよそに、じりじりと下ろされていくパンツ。
「さぁ、どうなってるのかなぁ〜?」
 耳元には、菅井がクスクスと笑う声が聞こえる。
「や、やめろぉ…!やめろぉぉっ!」
 十字架に磔にされた五郎は、女二人の視線を浴びながら、情けない声を張り上げた。

鰹のたたき(塩) ( 2020/04/08(水) 02:06 )