乃木坂抗争 ― 辱しめられた女たちの記録 ―




























































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<番外編>堕ちた女たちの流刑地 ━捜査官ソープ『N46』泡姫━
中田花奈と岩本蓮加の控え室 (プロローグ)


 ある日の控え室。
「樋口!遠藤!西野!指名だ!」
 とマネージャーの声が飛び、続けて、
「三人とも扮装アリ!樋口は女教師、遠藤はシスター、西野はCAだ。すぐに準備しろ!」
「はーい」
 次々に立ち上がる三人。
 表情が明るいところを見ると、やはり、指名されると嬉しいものなのか。
 いそいそと控え室の隅の衣装エリアに足を進めながら、
「ねぇ、女教師ってやっぱり眼鏡とかあった方が映えるかなぁ?」
「あー、確かに」
「なーちゃん、CAって似合いそうだよねぇ」
「そうかなぁ?」
 と女子校のように話す樋口日奈と西野七瀬、そして、その後ろをちょこちょことついていき、黙々とハンガーを探っては、シスターのローブを見つけ、それを身に纏う遠藤さくら。
 こうして、指名された泡姫たちは、この後、注文された衣装で殿方を相手に性技に励むことになる。
 そんな着替えを終えた三人がいそいそと控え室を出ていくのを、
「行ってらっしゃーい」
 と見送る中田花奈。
 もはやベテラン嬢の風格すらある彼女は、こうして自分が指名から漏れた日もサバサバとしているが、それとは対照的に、不貞腐れたような表情をしているのが岩本蓮加。
「いいなぁ…やっぱり、さくちゃんって人気だなぁ…男の人は、あーゆー娘、絶対、好きだもん…」
 と、ここ数日、指名が途絶えない新入りに対して恨み節。
 それを、
「こらこら、妬まないのっ!蓮加だって、よく指名されてるでしょ?私なんか、こないだ三日連続待機とかあったんだから」
 と自虐を交えては、まるで母親のようにたしなめる中田。
 それを言われては蓮加も何も言えず、
「は〜い…」
 と、口を尖らせるのみ。
 言い方は悪いが“残り物”となってしまい、暇を持て余す二人。
 並んで化粧台に座ると、蓮加が、
「そういえば花奈さん。最近、あの人、来るんですか?あの背の高い色黒の…」
「あぁ、○○興産の社長ね。先週は二回ぐらい来たかな。多分、明日ぐらいにまた来ると思うけど」
 と中田は答え、返す刀で、
「蓮加こそ、あの、ちょっとコワモテの人は…?」
「最近、来てくれないんです…飽きられちゃったのかなぁ…」
 と、常連客、いわゆる「太客」の話で暇を潰す二人。
 蓮加は肩をすくめて、
「花奈さんはいいじゃないですか、お得意さんが三人ぐらいいて。蓮加、あまり贔屓にされないタイプなんですよ。いつも初めての人ばっかりで…」
「そっちの方がいいじゃん。常連は常連で苦労するよ?毎回、アプローチ変えないといけないし」
「でも、常連になるってことは気に入られてるってことじゃないですかぁ?蓮加も、もっと気に入られたいですよぉ…」
 と、悩み相談のように漏らす蓮加は、溜め息をついて、
「はぁ…私も花奈さんみたいにナイスバディーだったらなぁ…!」
「なに言ってんの。充分いい身体してるじゃん。実際、蓮加みたいなムチムチした身体の方が好きなんだよ、男の人は」
「いや、花奈さんには敵いませんよぉ…だって、まず、おっぱいがすごいですもん…」
 と、隣の中田の胸の盛り上がりに目を移す蓮加。
 服を押し上げる巨乳、通称・花奈パイ。
 そんな、同性でも思わず揉みしだきたくなる膨らみに目を奪われると、
「ちょっと、こら!どこ見てんの!やめてよ、エッチ!」
「アハハ♪」
 ペチッ…と肩を叩かれ、きゃっきゃっ笑う仲睦まじい光景。
 蓮加は、だんだん興味津々になって、
「でも、それだけ魅力的なおっぱいだから、やっぱり“アレ”してくれってよく言われるんじゃないですか?」
「アレ…?」
「アレですよ、アレ。ほらっ」
 と、胸を寄せて上下に揺らすジェスチャーをする蓮加に、中田は、
「あぁ、パイズリね」
 と、あっさり頷き、
「まぁ、それは確かに言われるよね。ほぼ毎回、言われる」
「いいなぁ…うらやましいです」
「でも、蓮加だってできるじゃん。けっこう大きいでしょ?」
「でも、蓮加、言われないんですよ。それに、やり方もイマイチよく分からないし…」
「へぇ…でも、もったいないよ。せっかくいいモノ持ってんだから…♪」
 と、お返しに蓮加の胸の膨らみをまじまじと見る中田。
 視線に気付き、
「やぁーだ!」
 と無邪気な笑みで膨らみを覆う蓮加。
 そこで終わっていればいいものを、お節介な中田は、退屈も相まってニヤリと笑うと、
「じゃあさ、私と一緒に練習してみる?」
「練習…?」
「だって、ほら…ちょうどいいのがいるじゃん…♪」
 と、壁を指差す中田。
 そこには、手錠をかけられ、まるでテディベアのように床に座り込んでいる例の“ストレス発散用”の男がいた。
 パンツ一丁の状態で、逃げられないよう天井から垂れる鎖に繋がれた首輪をしている。
 日々、意識が朦朧とするクスリを投与され、今では、まるで置き物のように、控え室にいることが当たり前となった。
 席を立ち、不敵な笑みで男に近寄る中田。
「ほら、起きなよ」
 ヒールの先で、コン、コン…と小突いてやれば、
「━━━」
 と、虚ろな目で顔を少し上げる。
 その逞しい胸板と口元には、だいぶ薄れはしたが、キスマークの口紅が、まだいくつか残っていた。
 おそらく、昨日、誰かがストレス発散をした痕跡だろう。
 それに目をやった中田はクスッと笑って、
(日奈かな…?それとも与田ちゃん…?いや、この口の小ささは飛鳥かも…♪)
 と、キスマークをつけた犯人を想像しながら、首輪に繋がる鎖の外してやった。
 ジャラっ…と音を立てて壁に当たる鎖。
「ほら、こっち来て」
 と、自由になった男の手を引いて、控え室の隅に置かれたマット、いわゆる“ストレス発散エリア”へ連行する。
 蓮加も後ろに寄ってきて、
「蓮加、まだ“それ”使ったこと一回もないんですよね」
「じゃあ、ちょうどいいじゃん♪オモチャのわりに、けっこういいモノ持ってるって、みんなから評判よ♪」
 と笑いながらマットへ放り投げる中田。
 よろけた男は床とマットの段差に蹴躓き、無様に転んでマットに沈むと、仰向けになるのが精一杯。
 そんな男を不敵な笑みで見下ろす中田、そして蓮加。
「さぁ…!今日は、たっぷり練習台になってもらうからね♪」
 と告げて、クスッと笑った花奈。
「━━━」
 クスリのせいで声が出ない男。
 もはや恐怖も何も感じなくなった死んだ目で反対側に視線を移すと、中田と同様、蓮加もニヤニヤと見下した眼で笑っていた…!


(つづく)

鰹のたたき(塩) ( 2021/09/15(水) 11:03 )