乃木坂抗争 ― 辱しめられた女たちの記録 ―




























































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第一部 第四章・与田祐希の場合
3.封印された過去
 与田祐希。
 現在は、性犯罪撲滅組織「乃木坂46」の一員。
 しかし、その前は…。

 一年前。
 当時まだ学生だった祐希は、ある日の帰り道、男たちに拉致された。
 美貌が仇となった不運だった。
 街で見つけた気に入った女を拉致し、怪しい薬で狂わせて性奴隷に仕立て上げるという鮫島たちの非道な遊びの標的に選ばれてしまったのだ。
 そして祐希は、鮫島が根城にする別荘の地下で、性拷問を受けた。
 誰の助けも届かない地下室。
 やがて、抵抗するだけ無駄だと悟ると、次は快楽との戦いが始まった。
 幾多の媚薬が盛られ、脳と身体を狂わされる。
 何度も戦いに敗れた。
 卑猥な言葉を無理やり言わされたこともある。
 耐えきれずに自ら懇願してしまったこともある。
 絶頂し、淫汁を撒き散らしながら失神したこともあった。
 そして最後は男たちに完膚なきまでに犯され、性奴隷へと堕とされて屈服の証を身体に刻まれる。
 これを、一年前、祐希も体験した。
 その時のことは思い出したくもない。
 今でも、自然と防衛本能で記憶から消してしまっている。
 しかし、慰み物にされて三日後、神も同情したのか、運が救いの手を差しのべた。
 当時、鮫島一派は警察庁の特殊犯罪対策課、中でも桜井玲香、若月佑美の二人の捜査官から徹底的にマークされており、その日も、二人の捜査官が鮫島に接近した。
 当時から拉致した女を調教する場として使っていたこの別荘は他人名義を隠れ蓑にしていたため、もし、この別荘の存在が明るみになると隠しきれない証拠が出てくる危険があった。
 そのため、鮫島は、急遽、この別荘を捨てて逃げ出すことになり、その隙をついて祐希も脱出した。
 鮫島は完全に堕としたつもりでいたが、まだわずかに理性が残っていた祐希は最後の力を振り絞って、この忌まわしい別荘から逃走した。
 その後、ほどなくして祐希は治療先の病院で、鮫島が逃亡先のフィリピンで事故死したという噂を聞いた。
 祐希は、やっと、悪魔の支配から解放されたのだ。

 そして、その半年後、治療を終えた祐希は、「乃木坂46」という性犯罪撲滅組織の存在を知った。
 世の女性たちが自分と同じ目に遭わないように、そして、鮫島のように女を食い物にする悪党を根絶やしにするために、祐希は、自ら望んでその組織に加入した。
 訓練は辛かったが、そのかわり、仲間が出来た。
 しかし、最近になって、仲間の山下美月、梅澤美波が相次いで行方不明になった。
 先日、とうとう先輩の齋藤飛鳥まで…。
 そして、今朝、解放された齋藤飛鳥の身体を刻まれた調教の印を見て、祐希は戦慄を覚えた。
(鮫島は、まだ生きている…!)
 その確信を持つとともに、おそらくヤツは、あの時の同じ、隠れ蓑のこの別荘に潜んでいるに違いない、山下と梅澤も、過去の自分と同様、そこに監禁されているに違いないと考えた。
 乗り込む覚悟は出来た。が、それを周りに打ち明けることは出来なかった。
 言うと必然的に過去のことも明るみに出ると思ったし、言えば軽蔑されると思った。
 だから、誰にも言わず、黙って一人で来た。
 こんな猪突猛進な自分のことを心配してくれる仲間がいることに気付かずに。
 そして結果的に理々杏を巻き添えにし、自分も再び捕らわれてしまった。
 あの悪夢が、再び、訪れようとしている。

 ……

「ククク、目が覚めたか?」
 嫌な声が聞こえた。
「くっ…」
 見覚えのある忌まわしい部屋で、最悪の目覚めだった。
 いつのまにか衣服は剥ぎ取られて下着姿、手は後ろ手に手錠をかけられ、脚はM字開脚に固定されてソファーに座らされていた。
「どうだ?一年ぶりのこの部屋、そして、その格好は?」
「……」
「あの時、まんまと逃げられたのは不覚だった。お前のようないい女は一緒にフィリピンに連れて行きたかった。てっきり俺のものになったと思っていたが、違ったんだなぁ?」
「ふん、誰がアンタなんかと…!」
「ほぉ、そのわりには俺のモノが欲しいと言って股を開いたこともあった筈だがな」
「くっ…!」
「まぁ、いい。一年ぶりの再会に照れているんだろう。すぐに思い出させてやるさ」
 鮫島は、そう言うと、ナイフを取り出し、ブラの紐を刃で引っ張った。
 あっさり切断され、露わになる美乳。
 鮫島は、その膨らみの先にある尖りを指で弾いた。
「んんっ!」
「大好きだっただろ?ここを嬲られるのが」
 鮫島の一言一言が、忘れていた黒い記憶を奥から引きずり出していく。
 そしてナイフは下へ。
「いくら強がっても、ここを見れば分かるんだ。俺が愛してやった女は、みんな、ここにその証がある」
「や、やめろ!」
 よく研がれた光る刃の前には布など無力に等しい。
 抵抗むなしく切り捨てられたパンティの下から現れたサソリの刻印。
「いやぁぁぁ!」
「さぁ、一年前の続きだ。理性のカケラもなくなるぐらいに堕とし、次こそ、正真正銘の俺の女にしてやる!」
 と鮫島は言った。


鰹のたたき(塩) ( 2019/12/09(月) 16:15 )