乃木坂抗争 ― 辱しめられた女たちの記録 ―





























































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★第三部と第四部の間の短篇集★
久保史緒里のその後… (後)
「んっ…はぁっ…」
 ホテルの一室、女の吐息が漏れる。
 バーを出た二人は、どちらからともなく近くのホテルを目指し、足を進めた。
 部屋に入るなり、もつれるようにベッドに倒れた二人は、そこで、外では躊躇してしまうような熱いキスを何度も何度も繰り返した。
 そして、ベッドの脇に一枚ずつ増えていく脱いだ服の山。
 そして、その山頂に次に追加されたのは史緒里のブラだ。
 露わになった白くて綺麗な胸の膨らみを遥希の手の平が覆う。
 五指に力を込め、ゆっくりと揉むと、絡み合う舌がサッと離れ、
「あっ、んんっ…!」
 と、史緒里の吐息は、はっきりとした声に変わった。
「どうだ?久保…痛くないか?」
 と聞く遥希に対し、
「んっ、んっ、い、痛くはない…です…あんっ!」
 と頷き、そして、
「く、久保じゃなくて…んっ、あっ…今だけは…し、史緒里って呼んで…ください…んんっ!」
 と言った。
「…分かった。史緒里、行くよ?」
 遥希は頷くとともに、手の平で感触を楽しむ胸の先端に、そっと吸いつき、舌を這わせた。
「んあぁっ!?」
 ビクンと身体を跳ね上げ、敏感に反応する史緒里は、思わず遥希の頭を赤ん坊のように抱き締めた。
「んんっ!あぁっ!?ダ、ダメぇっ…!」
 舌先で優しく愛撫をして尖らせた乳首を、ジュル、ジュル…と音を立てて吸われ、悶絶する史緒里。
 サラサラした自慢の長髪が、みるみる乱れてゆく。
 さらに下半身へと降りた遥希の指が、むっちりとした内ももを蜘蛛のように這い、脚の付け根へ迫ると、
「あっ、あっ…!」
(憧れの先輩の前で恥ずかしい…!だけど早く触ってほしい…!)
 そんなゾクゾクする感覚の中、待ち遠しそうにジタバタとくねらせる美脚。
 パンティのゴムを伸ばし、その隙間から遥希の手が中に潜り込んだ。
 陰毛を掻き分け、指先が、放っておいてもみるみるとろけていく秘貝に触れる。
「んんっ、あぁっ…!」
「すごい反応…すごく濡れてるよ?史緒里…」
「やぁっ…!い、言わないでくださいぃっ!ひゃあぁっ!?」
 そのままズブズブと遥希の指が呑み込まれてゆくと、キュッと挟み、食いちぎるかのように掴んで離さない史緒里の秘肉。
 その狭い可動域の中でクチュクチュと関節を曲げて掻き回してやれば、史緒里は、その一見おっとりした顔に似合わず、
「んはぁぁっ!?」
 と絶叫してベッドの上を暴れる。
「すごい…!すごく敏感なんだね、史緒里は」
「ダ、ダメ…!ダメです、先輩っ!んあぁっ!イ、イッちゃう…!イッちゃいますぅっ…!」
「いいよ…?イクところ、見ててあげるから」
「あぁっ、や、やだっ…!恥ずかしいっ…!恥ずかしいよぉっ…!」
 と言って顔を覆い隠そうとする史緒里の腕。
 その手首を捕まえ、
「恥ずかしがらないで」
 と真上からその顔を見つめる遥希。
「んんっ、やあっ、あっ…そ、そんな見ないで…!やぁっ…イ、イクっ…!イクぅっ!」
 潤んだ目と噛み締めた唇。
 頬を真っ赤に染め上げて、史緒里は、水揚げされた魚のようにピチピチと跳ねながら、遥希の腕の中で絶頂を極めた。
「はぁ…はぁ…」
 息を乱す史緒里。
 まだ二、三度、余韻でビクンビクンと震えている。
 そんな中、遥希は、スルスルと、史緒里の最後の一枚、股ぐらにうっすらとシミが滲んだパンティを脱がせた。
「や、やぁっ…!」
 隠すように遥希の身体に抱きつく史緒里。
「恥ずかしいの…?」
 という当たり前の質問に、コクリと頷き、
「あ、明るいのが…恥ずかしい…です…」
 と呟き、より強く遥希の背中の抱き締める。
 そんな史緒里を気遣うように、遥希は、抱きつく史緒里の身体もろとも布団を被った。
 そして、再び、緊張を取り除くためのキス。
 舌を絡め合ううちに、抱きつく史緒里の力も和らいできた。
「なぁ、史緒里…」
 と遥希が声をかけると、史緒里は、
(分かりました)
 という目をして、布団の中でモゾモゾと体勢を変えた。
 仰向けにした遥希の脚の間に背中を丸めてひざまずき、ゆっくりと遥希のパンツを下ろす。
 そして、バネのような反動で飛び出した男根を掴み、ゆっくりと先端から丁寧に舐め始めた。
 上半身だけ布団から出してベッドに寝そべる遥希。
 お腹から下を覆う布団はこんもりと盛り上がり、その中からは、

 ジュル、ジュル…チュッ…ジュポ、ジュポ…

 と、こもった濁音が漏れ聞こえる。
「はぁ…はぁ…し、史緒里…!」
 息を荒くして布団に潜る女の名を呟く遥希。
 彼を夢心地へといざなうのは、史緒里が、身体を許してもいいと思った相手にしか見せない献身的な舌遣い。
 あの時のような、快楽を餌に強制させられたものではなく、史緒里が自らすすんで行う至極の奉仕活動だ。
 その心地よさに、つい、好奇心が湧き、こっそりと布団をめくり、中を覗く遥希。
 すると、ちょうど、頬をしぼませ、上目遣いで上下に首を動かす史緒里と目が合った。
 史緒里は、慌てて咥えた男根から口を離し、
「や、やだっ…!み、見ちゃダメですっ…!」
 と言って、素早く、めくられた隙間を手で覆った。
 その恥じらう姿に、完全に心を射抜かれた遥希。
 そして、またしばらく奉仕が続いた後、布団の隙間から亀のようにちょこんと顔だけ出した史緒里。
 その物欲しげな表情がたまらない。
「…挿れたいの?」
 と聞くと、史緒里は、上目遣いのまま小さく頷いた。
 そんな史緒里に、
(いいよ、好きにして)
 という目を送ると、史緒里はスッと首を引っ込め、モゾモゾと布団の膨らみを波打たせた。
 中から漏れてくる荒い吐息と、男根の先に触れる生暖かい感触。
 そして…。
「…うぅっ…!」
 その生暖かい感触に竿が呑み込まれると同時に、布団の中からも、
「あっ、んっ…!あぁぁっ…!」
 と甲高い声が聞こえた。
 そして再び亀のように顔を出した史緒里の顔は、まさに情事の最中のそれ。
 一定の間隔で眉を寄せ、ウルウルした目で唇を噛み締めるオンナの表情だ。
「可愛いよ、史緒里…」
 そう言うと、遥希は、布団の中に潜り込ませた両腕で史緒里の背中を抱き締め、膝を立てて、ゆっくりと下から腰を突き上げ始めた。
「んんっ…!あぁっ!あんっ…!あんっ…!」
 遥希の腕の中で躍る肉感的な白い身体。
 生暖かくてよく締まる肉の中へ打ち込むピストンは、まるで男根がアイスキャンディーのように溶けてしまいそうなほどの気持ちよさだ。
「あぁっ…あぁっ…し、史緒里ぃっ!」
「は、遥希先輩っ…!あぁっ、ダ、ダメぇっ!んはぁぁっ…!イ、イクっ!先にイッちゃう!あぁぁっ…!」
 抱き締めた腕を弾き飛ばすほどの力で痙攣する史緒里の身体。
 それでもなお遥希は下から突き上げを続けると、史緒里は、
「んひぃっ!?ダ、ダメですっ!先輩っ!い、今…イッたところだからぁっ…!ダ、ダメぇっ!そ、そんなにやられたら、お、おかしくなっちゃいますぅっ!んあぁぁっ!」
「いいよ、おかしくなっても…今夜は、史緒里の全てが見たいんだ…!」
 と言って、ふいに隠れ蓑の布団も取っ払う遥希。
 その中から現れたのは、壁に留まったカエルのように遥希の上に覆い被さり、瑞々しい尻肉を波打たせる史緒里の白い背中だった。
「あぁぁっ!?や、やだぁっ!恥ずかしいっ…!」
 隠れ蓑を奪われ、遥希の胸板に真っ赤な顔を擦りつけて隠れる史緒里。
 構わず、ベッドの反発を利用し、抱き合ったままバウンドするように跳ねる遥希。
「ねぇ、史緒里。こっち向いて…!」
 と声をかけ、顔を上げたところで唇を奪う。
「んっ、んっ…んんっ、んっ!」
 ジュル、ジュル…と、舌を噛みそうな揺れの中でも濃密に絡み合う二人の舌。
 遥希は優しく笑って、
「史緒里も、もっと好きに動いていいんだよ?」
 と声をかけた。
 それを受けて身体を起こし、クネクネと小刻みに腰を揺する史緒里。
「んはぁぁっ!あぁぁっ!す、すごぉっ…!んひゃぁぁっ!」
 下から差し出された遥希の手を掴み、それを支えにして、ひとすら夢中で行うグラインド騎乗位。
 その純朴な見た目とは裏腹に、気持ちが入りすぎるあまり、思いのほか手慣れた腰つきを見せるしまう史緒里。
(ダ、ダメ…!腰が…止まらない…!こ、こんな動き…!先輩に嫌われるっ…!変態だと思われちゃうよぉっ…!)
 必死に自戒するも、燃え上がった身体はもう止まらない。
 パンっ!パンっ!…と史緒里の尻肉が、遥希の太ももに打ち付けられる音。
 そのまま弓なりに仰け反り、
「あぁっ、イ、イクっ!またイクぅっ!」
 と絶叫し、憧れの遥希の身体の上で最高のオーガズムを味わう史緒里。
 火がついた敏感な身体は、激しく痙攣し、そのまま前のめりに崩れ落ちた。
 思わず、
「し、史緒里…!?」
 と心配する遥希だが、史緒里は倒れ込んだ遥希の耳元で、
「つ、続けて…続けてください…もっと…」
 と小さく呟いた。
(忘れたい…!嫌なことを全部、忘れたい…!何もかも忘れて…立ち直りたい…!)
 その一心で、体力の続くかぎり、行為に没頭する史緒里。
 最後は正常位で激しいピストンのラストスパート。
「んあぁっ!あぁっ!は、遥希先輩ッ!ひゃあぁっ!も、もうダメぇっ…!」
 と絶叫する史緒里に対し、
「うぅっ…!うぅっ…!」
 と、遥希も、発射間近を示す小さな呻き声を上げる。
「あぁっ…し、史緒里…!くっ、うぅっ…出すよ…!」
「あぁっ!せ、先輩っ!んあぁっ…!」
「うあぁっ…!」
 勢いよく引き抜かれるとともに、史緒里の白い身体に発射される白濁とした塊。
(あ、熱っ…!)
 お腹に、そして胸に、灼けるような熱さの精液が着弾し、それとともに史緒里も、もう何度目かも分からない、この日一番の絶頂へ達した。
「はぁ…はぁ…」
 仰向けのまま、放心状態の史緒里。
 その身体は、空を舞う天女のように、ベッドのスプリングの上で細かく揺れていた。


 お酒の勢いとセンチメンタル…。
 踏むべき段階は、いくつか飛ばしてしまったが、憧れの先輩との濃密なセックスは、史緒里の心を雁字搦めに縛った呪縛を断ち切るには充分な特効薬となった。
 そして、行為後、二人で一つのベッドに寝そべりながらのピロートーク。

「なぁ、史緒里…?」
「…何ですか?」
「来月からのことなんだけど…」
 遥希が言うのは、来月、上京し、都内でケーキショップをオープンするという話。
 遥希は、打ち明けるような語り口で、
「実は、俺、すごく不安だったんだ…。東京でお店を持たせてもらえるのはすごく嬉しい。でも、正直、成功するかなんて分からないし、東京に知り合いもいないし…」
「━━━」
「東京でも、また会えるかな…?」
「━━━」
「史緒里に会えれば、俺、東京で頑張れる気がするんだ。史緒里が近くにいてくれれば、東京にいても寂しくないと思うんだ」
 遥希はその思いを熱弁し、
「どうかな…?」
 と聞いた。
「━━━」
 しばしの沈黙。
 史緒里は目を伏せて、
「お店がオープンするの、一ヶ月後でしたよね…?」
「あぁ」
「一ヶ月…か」
 …結局、史緒里は、返事を保留した。
 その一ヶ月の間に、今、仲間たちが抱えている今回のヤマが全て片付くとは限らなかったからだ。
(でも…!)
 だからこそ史緒里は、明日にでも戦線復帰をしようと思った。
(いつまでも悩んでいる場合じゃない…!)
 これ以上、時間を無駄にしていると、一ヶ月後、上京する遥希を迎えることが出来ない。
(あと一ヶ月…その間に、このヤマは絶対に片付けなくちゃ…!)
 そう思って、史緒里は、隣の遥希に、ひとまず別れのキスをした。
 そして、一ヶ月後、次は笑顔で再会のキスをする。
 それから毎日のように会って、何度も、何度でも…。
(そのためにも、この一ヶ月は絶対に無駄にはしない…!)
 史緒里は、今、そう固く心に誓ったのだ。


(つづく)

鰹のたたき(塩) ( 2020/09/28(月) 00:53 )