乃木坂抗争 ― 辱しめられた女たちの記録 ―




























































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★第三部と第四部の間の短篇集★
白石麻衣のその後… (背徳編)
 本部の廊下。
 佐藤楓、中村麗乃、向井葉月の三人組は、段ボールを持ってよろける大園桃子に出くわした。
「桃子。どうしたの?それ」
 と聞くと、桃子は、なぜか少し慌てた様子で、
「し、白石さんから、至急、持ってきてって頼まれて…捜査に必要なんだって」
「へぇ。私たちも手伝おうか?」
「え…?い、いや、私一人で大丈夫…!」
 とだけ返し、なおもよろけながら階段を降りていく桃子。
 そんな同期の姿を見送った三人は、
「さすが白石さん。すごいね」
「リハビリ中でも捜査に余念がない」
「私たちも見習わなきゃ!」
 と感心を口にする。
 三人にとっての白石は、戦線離脱してもなお、憧れの存在に変わりはない。
 まるで崇拝者のように、指揮官の帰りをいつ何時も心待ちにしている三人。
 そして再び歩き出した時、ふと、向井が呟いた。
「ところで、あんな段ボールいっぱいの捜査に必要なものって何だろうね?」


 ……

 施設に到着した桃子は、エレベーターで七階に上がり、個室の戸をノックする。
「白石さーん。桃子ですぅ」
 と桃子が声を出すと、中から小さく、
「入って」
 と声がした。
 スライドドアを開けると、ベッドに上半身だけ起き上がった麻衣が迎えてくれた。
 桃子は、持ってきた段ボールを下ろして、
「頼まれてたもの、これで全部です」
「そう…ありがとう」
 礼を言う麻衣だが、どこか口調が素っ気ない。
 少しナーバスになっているようにも感じた。
 しばらくの沈黙の後、
「あ、あの…」
 桃子は勇気を出して口を開き、
「それ…何に使うんですか?」
 と、気になっていたことを聞いた。
 いくら考えても、なぜ麻衣が“このブツ”を必要としたのか、よく分からなかったからだ。
 それに、

「みんなには内緒にしておいて」

 と釘を刺されたことも気になる。
 だから、ここへ来る途中、間が悪いことに同期の三人と廊下で鉢合わせしてしまった際も、何とか誤魔化した桃子。
 麻衣は、少し黙り込んでから、小さく、
「捜査の一環よ」
「捜査の一環…?」
 聞き返す桃子だが、麻衣は、それ以上、教えてくれなかった。
 何か、麻衣には麻衣の考えがあるのだろう。
「…な、何か買ってきましょうか?ジュースとか…」
 と話を変えても、麻衣は、
「ううん、大丈夫」
 と素っ気なく返すだけ。
 まるで、用が済んだら早く帰れというような雰囲気。
 たまらず桃子は、
「じゃあ、また何かあったら言ってください…桃子、いつでも来ますから」
 と言い残して部屋を後にした。
 いささか疑問が残る態度だが、それでも桃子は、麻衣を尊敬している。
(何か、白石さんには白石さんの考えがあるんだ。きっと、そう…)
 と自分に言い聞かせ、桃子は施設を後にした。


 桃子が帰っていく後ろ姿を窓から見下ろす麻衣。
(桃子…ごめん…)
 素っ気なく振る舞った罪悪感に唇を噛みつつ、そうするしかなかった。
 桃子が自分のことを尊敬してくれているのは麻衣自身もよく分かっている。
 それゆえに、だ。
 やがて桃子の姿が見えなくなると、麻衣は、急に緊張した面持ちになって、まず、下の職員に内線電話をかけ、
「701号室の白石です。少し眠りたいんですけど━」
「分かりました。では、夕方の回診は控えさせていただきますね」
「申し訳ありません」
「夕食はどうしましょう?定時にお運びしてもよろしいでしょうか?」
「いえ。起きた時に、また、こちらから頼みます。とにかく今は眠りたくて…」
「そうですか。分かりました」
 電話口の職員は誠実な対応にも少し罪悪感が沸いたが、とにかくこれで余計な邪魔は入らない。
 それでも一応、念のため、部屋には内カギをかけた。
 密室の完成に、
(よし…)
 と、一つ、溜め息をついた麻衣。
 早速、桃子に持ってこさせた段ボールを開封する。
 まず取り出したのはポータブルDVDプレーヤー。
 それに、音漏れしないようにヘッドホンをつける。
 そして、同封されていたDVDを取り出す麻衣。
 その盤面には、それぞれ、

「西野七瀬 媚薬寸止め調教、淫乱開花3Pプレイ」
「堀未央奈 ハケ水車大量失禁、本性丸出しS●X」
「北野日奈子 レズ調教、ペニバン奴隷堕ち」
「伊藤純奈 武闘派陥落、人格矯正おねだりS●X」
「山下美月 淫乱捜査官、童貞喰い」
「遠藤さくら&清宮レイ 双頭バイブでイキまくり」

 と、字面だけでも赤面するような卑猥なタイトルともに馴染みのある名前が刷られている。
 麻衣は、それらのタイトルをじっと読み比べて吟味し、まず一枚、プレーヤーで再生した。
 やや粗めの画質で唐突に始まる性交シーン。
 露わになる性器のドアップ、しかも無修正。
 画面の中で、犯され、断末魔のような喘ぎ声を上げている女は、皮肉にも自身の仲間だ。
 そんな、仲間が録られた裏ビデオを捜査の一環と称して見直し、思わず息を飲む麻衣。
(す、すごい…!こんなに激しく突かれて…)
 そんなことを思った途端、また、いつものように股の間に熱を帯び、息を荒くする指揮官…。


 強力媚薬『HMR』に冒された麻衣の身体は、入院して一週間が経っても疼きが引くことはなかった。
 そして、それを何とか収めるため、夜な夜な、隠れて一人、気が済むまで自慰に没頭する麻衣。
 感度の高まった身体は、いまや、自らの指だけで五、六回は絶頂に達する。
 そこまでして発散しないと寝つけない身体になってしまったのだ。
 そんな麻衣の、ここ数日の悩みは、ずばり「興奮する材料が欲しい」こと。
 興奮する材料…。
 卑猥な言い方をするなら「オカズ」である。
 毎晩、消灯した暗い一人個室で布団にくるまり、、ぼーっと天井を見上げながら、その身体を慰めることの繰り返し。
 そんな、ただ身体の熱を取り除くためだけの自慰行為に、次第に麻衣は飽きを感じ始めていた。
 だが、かといってやめるという選択肢はない。
 毎晩の疼きに耐えられないかぎり、自慰を始めてしまうのは必然なのだ。
 そこで麻衣が思い出したのが、捜査の過程で押収された裏ビデオ。
 仲間の裸体と性行為が無修正で収められた卑劣きわまりないモノだが、それは同時に、オカズとしては申し分のないモノでもある。
 思いついたのは三日前。
 だが、指揮官として、それを断罪する立場の者として、その一線は絶対に越えてはいけない。…そう思って、いつものように、暗闇を見上げながら指の刺激だけで我慢した。
 一昨日も同様、想像を頼りに自慰行為に没頭した。
 内容は、ずばり、セックスをする妄想。
 もっといえば、無理やり犯されるような妄想…そんな、指揮官としてあるまじき想像を興奮の材料にした。
 それで満足できなかったワケではない。
 だが、元々、妄想家ではない麻衣にとって、想像だけでいつまでも続けるのは無理があった。
 やはり視覚と聴覚で、すなわち映像で見ることが最も手っ取り早いと痛感したのだ。
 そして、そう痛感したことで一度は封じ込めた筈の裏ビデオが再び頭によぎった。
(あ、あれに勝るものはない…!)
 そして麻衣は、ひそかに桃子に頼み、押収した裏ビデオを本部から持ってこさせた。
 自らの抑えきれない性欲のために、自らを慕う後輩を利用したのだ。
 それも「捜査の一環」という下手な嘘をついてまで…。
(桃子…ごめん…)
 我に返れば自分自身がふがいない。
 優秀な若手の女捜査官が慕う先輩は、実は、仲間が犯される映像で興奮を得るような最低の変態女…。
 そんな胸をキュッと締めつけられる背徳感を持ちつつ、プレーヤーの画面を凝視し、ヘッドホンから流れる喘ぎ声を聞く麻衣。

「んあぁっ!あぁっ!」
「おら!どうだ!気持ちいいのか?えぇ!?」
「ち、違う…!も、もうやめてぇっ!嫌ぁっ!」
「まだだよ!まだまだ終わらせねぇぞ!このままイキ狂うまで続けてやるからなぁ!」
「ひ、ひぃぃっ!イ、イクぅっ!」

 ずっぽり奥まで挿さったイチモツ。
 そのまま激しいピストンで突き上げられ、絶叫しながら痙攣し、気をやる女捜査官。
 そして、その映像を見ながら、同様に、指を二本、イチモツに見立てて自身の割れ目に挿入し、画面のピストンに合わせて抜き挿しをする麻衣。
 まるで、今、自分がこの画面の中の男に犯されているように…。

「何だ、もうイッたのか?へへへ。一回や二回で終わらせると思ってるのか?続けるぞ!おらっ、おらぁっ!」

「んあぁっ!?あぁっ!ダ、ダメぇっ…」
 映像に合わせて声を漏らす麻衣。

「ほら、胸も揉んでやるよ!ついでに乳首も吸ってやるぜ!」

「んひゃぁぁっ…!」
 自ら胸を揉みしだき、先端の突起を口で吸われているテイでクリクリと弄る。

「へへへ。よく締まるマンコだ!さぁ、イケ!イッてしまえ!」

「んっ、あぁっ、あっ…イ、イクっ!イクぅぅっ…!」
 その白い美脚をピンと伸ばし、画面の中の女捜査官とほぼ同時に絶頂に達する麻衣…。
 熱中するあまり、布団の中はサウナのように蒸れ、またいつものように股ぐらのあたりにイキ潮を飛ばして湿りが広がる。
 その美貌とは裏腹に、いつのまにかイクたびに潮を噴く特異体質になってしまっていた。
(す、すごい…!き、気持ちいい…!)
 自然と口が緩み、舌を出して恍惚の表情を浮かべる麻衣。
 そして、男の射精とともに映像がブラックアウトした後も、まだ取り憑かれたように指を動かし、二回戦に突入する。
 右手で割れ目を弄くり回しながら、器用に左手でDVDを取り出し、すぐにまた別のDVDをプレーヤーに挿入する。
 再び映し出される凌辱映像。
(あぁっ…す、すごい…!次は、男が二人がかりで…!)
 まだ昼過ぎにもかかわらず、仲間が犯される映像をオカズに、延々と自慰を繰り返す麻衣。
 果たして彼女は、その背徳の底無し沼から這い上がることは出来るのだろうか…。


(つづく)

鰹のたたき(塩) ( 2020/09/22(火) 00:01 )