乃木坂抗争 ― 辱しめられた女たちの記録 ―




























































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第三部 第七章・二人の女王様 ―ダブルインパクト― (橋本奈々未、伊藤万理華)
橋本奈々未サイド―1.vs女王様
 万理華が目を覚ましたのと同じ頃。
 もう一隻のクルーザーのキャビンでは、同じ状況下に置かれた橋本奈々未が、自身を取り囲む男たちと睨み合っていた。
「……」
「…へへへ。なかなかいい目をするじゃねぇか」
 男たちは下品な笑みを浮かべると、奈々未の顎を掴み、ぐっと持ち上げた。
「は、離せ…汚らわしい!」
 首を振り、掴んだ手を振り払う奈々未。
 その様を見たリーダー格の男が笑って、
「ほぅ、さすが橋本さんだ。気が強いねぇ」
(…!)
「お、お前…どこで私の名前を…?」
「へへへ。驚いたか?」
「まぁ、ウチにも、いろいろ調べることに長けた人間がいるからなぁ」
 と男たちは口々に笑った。
(し、柴崎弁護士…?)
 と奈々未が想像していると、再びリーダーが奈々未の顎を掴み、
「名前だけじゃねぇぜ?お前についてはなかなか面白い噂話も聞いている」
(う、噂話…?)
「何やら聞くところによると、お前、一時期、SMクラブで働いてたことがあるんだってなぁ?」
(…!!)
「俺が聞いた話だと、短い期間だが、元来のS性も手伝って、女王様がけっこうサマになってたらしいじゃねぇか。」
「だ、誰がそんなデタラメを…!?」
「デタラメじゃねぇぜ。わざわざ北海道まで行って仕入れてきた情報だ。覚えてんだろ?━━って男。当時、お前に入れ込んでた常連のM男だよ」
(ウ、ウソ…!?)
 予想外の情報源に動揺する奈々未。
「こいつが言ってたぞ?お前、ひぃひぃ悶えるM男の顔を見るのが好きで、そのたびに手を叩いて笑うんだってな?そのくせ、男がニヤけてたらビンタするらしいじゃねぇか。まったく、とんでもねぇ女王様だ」
「くっ…!」
「だからよ。そんな意地悪な女王様は、果たして何をされても本当に女王様を貫けるのか、これから確かめてやるぜ」
「ふ、ふざけないで…!」
「へへへ。女王様を調教するなんて、こんな興奮できる遊びはねぇよ。男冥利に尽きるってもんだ」
「こないだの伊藤純奈ってヤツは生意気な態度のわりには実際たいしたことなかったからなぁ。格の違いを見せてくれよ」
「まさか元女王様ともあろう女が俺たちみたいな雑魚に堕とされるなんてことはねぇよなぁ?」
 煽り文句のオンパレードのさなか、目隠しを取り出し、奈々未に迫るリーダー。
「まずはこれをつけて、今まで散々いたぶったM男の気持ちになってもらおうか」
「や、やめろ…!」
 両手を吊られたまま、必死に身体を揺するが、背後に回った男に額を掴まれ、あえなく目隠しを装着された。
 きついゴムがしっかりと側頭部を締めつけ、もう、いくら髪を振り乱しても外れない。
 奪われた視界。
 そして、ふいに耳元に近づく男たちの唇。
 彼らは、おどけながら、
「さぁ、女王様。これから我々がたっぷり女王様の身体に奉仕をさせていただきます」
「女王様に気持ちよくなっていただけるよう、精一杯、努力しますので、どうぞ、心ゆくまで堪能してくださいませ」
 と囁き、最後に、
「へへへ。さぁ、始めようか!女王様の強制まな板ショーだ!」
「一生、記憶に残る、忘れられないクルージングにしてやるぜ!」
 と笑った。

鰹のたたき(塩) ( 2020/05/25(月) 16:23 )