8.自己犠牲と裏切り (田村真佑)
男たちに捕まり、廃校の旧音楽室に押し込まれた田村真佑と筒井あやめ。
朽ち果てたピアノが置き去りにされた部屋の中で、二人はともに羽交い締めにされ、立たされた。
「へへへ…さぁ、どっちから手をつけてやろうか?」
男たちは、二人を見比べた後、筒井の方に目をやって、
「こっちはまだガキだな」
「処女かもしれねぇぞ?」
「構わねぇよ。むしろ、捜査官のバージンを頂けるなんて機会はそうそうねぇからな。男冥利に尽きるってもんだ」
「確かにそうだな」
「それに、しつけ甲斐がある。ガキのウブな身体にオトナの快楽を叩き込んでやるのも一興だ」
男たちがニヤニヤしながら話す。
その常軌を逸した獣たちの会話に、怯えた表情を見せる筒井。
「ちょっ、ちょっと待って…!」
真佑は、たまらず声を上げ、
「アンタたちの相手は私がするわ。だから、せめて、その娘は離してあげて!」
と言った。
同期の中で最年長の自分に対して、筒井は最年少だ。
既に成人している自分はともかく、まだ少女という年齢の彼女が、その歳から男に対する恐怖心を植え付けられ、乱暴をされるのが我慢ならなかった。
「ほぅ…」
男は、真佑に目をやり、
「それじゃあ、お前が身代わりになるってことだな?」
「━━」
真佑は静かに頷いた。
「ダメだよ!真佑ちゃん!」
震えた声で叫ぶ筒井を無視して、真佑は、
「その通り。私が身代わりになるわ。だから、この娘には手を出さないで…この娘には…まだ早い…」
「真佑ちゃん…!」
筒井の何ともいえない表情が心に突き刺さる。
「へへへ…たいした女だな。自分の身を犠牲にするというのか?」
真佑は、唇を噛み締めながら、再度、頷いた。
(そ、それであやめが助かるのなら━)
「よし、分かった。それじゃあ、早速、始めようじゃねぇか」
淫獣たちの欲情した目が、一斉に、筒井から真佑へと移った。
「こっちのガキと違って、お前は大人だから、これから自分が何をされるか…分かるよなぁ?」
男が、真佑に迫る。
(くっ…!)
自分から申し出た条件だが、本音を言えば、自分だって嫌に決まっている。
全ては、あやめを逃がすため…それだけだ。
「ほ、本当に、あの娘のことは見逃してくれるんでしょうね…?」
真佑が後ずさりしながら念を押すと、男は頷いて、
「ヤクザだって約束は守る。あっちのガキには手を出さねぇ。ちゃんと誓うさ。もちろん、お前が俺たちに歯向かわなければ…だがな」
と言った。
要は、抵抗するのをやめて自分たちの言いなりになれ、ということか。
敵を目の前にして太刀打ちできないのが悔しい。
だが、それでも、男の言った「筒井には手を出さない」という言葉で少しだけホッとする真佑。
「よかったなぁ、お前。仲間に感謝しろよ?」
男に声をかけられた筒井は、俯いたまま何も言わない。
(あやめ…ごめん)
もしかしたら筒井は、自分が身代わりを買って出たことを快く思ってくれないかもしれない。
こんな時まで子供扱いすることを怒っているのかもしれない。
だが、真佑は、それでいいと思った。
(あやめ…私に構わず逃げて!私が、この身を犠牲にして時間を稼ぐから、その間にできるだけ遠くへ…)
そう念じながら、男に抱き寄せられる真佑。
「たっぷり愛してやるぜ」
ニヤリと笑う男に、嫌々、身を預ける真佑は、その腕の中でブラウスのボタンを一つずつ外されてゆく。
薄ピンクの可愛らしい下着と色白の肌が露わになる。
恥じらいから、頬を紅く染める真佑。…と、その時。
(…なっ!?)
閉じかけた真佑の目が一瞬にして吊り上がった。
自身を抱き寄せた男の脇から、男たちが暴れる筒井の口にガムテープを貼りつけ、その華奢な身体を椅子に縛りつけているのが見えたのだ。
「ま、待って!」
真佑は肩を抱く男を突き飛ばし、
「話が違うわ!その娘には手を出さないって約束でしょ!!」
と怒鳴った。
だが、男は悪びれる様子もなく、澄ました顔で、
「何を言ってるんだ?確かに“手は出さない”とは言ったが誰も“逃がす”とは言ってねぇだろ?」
「ふ、ふざけないで!」
慌てて縛りつけられた筒井の元へ駆け寄ろうとする真佑だったが、男たちに進路を阻まれ、二人がかりで襲われて、あっさり組み伏せられてしまう。
「ひ、卑怯者…最低よ、アンタたち…!」
鬼のような目で男たちを睨みつけるが、男たちは気にも留めず、
「よく確かめもせずに信じたお前が馬鹿なんだよ。ハハハ!」
と笑った。
口を塞がれ、椅子に縛りつけられた筒井が、床に這いつくばる真佑の方を向けられた。
「いい機会だ。こっちのガキにセックスってのはどうやってやるのか実演して見てもらおうじゃねぇか!なぁ?」
「な、何を言って…や、やめてっ!」
立たされ、はだけたブラウスを剥ぎ取られる真佑。
さらにスカートのホックも外され、ずるずると下ろされていくと、ブラと同じ薄ピンクの可愛らしいパンティと、肉付きの良いむっちりとした白い太ももが晒された。
目の前2メートルには筒井がいる。
(やぁっ…み、見ないで…!)
男に掴まれた手首が動かせず、太ももを内股にして隠す素振りを見せることしか出来ない真佑。
その真佑の姿に顔を背けて目を反らした筒井。
だが、そんな少女の髪を鷲掴みにした男は、
「せっかく、お前の身代わりになって今からセックスを目の前で実演してくれるんだ。その眼に焼きつけるのが礼儀だろ」
と、無茶苦茶な言い分を述べ、無理やり視線を向けさせる。
男たちの手が、ブラの上から胸を揉み、内股の太ももをこじ開けてパンティの上から股間をなぞる。
「や、やだっ…やめてっ!こんなの、あやめには見せないで…!」
先ほどの気丈な態度から一変、あやめの視線が気になって口調までたどたどしくなる真佑。
そんな彼女が同期の少女の目の前で男たちに犯され、公開セックスをさせられるという最悪の地獄絵図が、まさに今、始まろうとしている…。