乃木坂抗争 ― 辱しめられた女たちの記録 ―





























































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第三部 第四章・白石麻衣の場合 (危機一髪編)
2.女神の危機
(……!)
 目を覚ました白石は手足を麻縄で束ねられ、アルファベットの「I」の字で寝かされていた。
「くっ…!」
 必死に身体を揺らすが、きつい結び目はびくともせず、むしろ余計に食い込んで少し痛い。
「どうやら気がついたようだな?」
 ハッとして声の方を見ると片桐が微笑しながら立っていた。
「き、貴様…!片桐…!」
「そうさ。もっとも、これからは、お前の“ご主人様”になるワケだがな」
「ふ、ふざけないでっ…くっ!」
「無駄だ。自分一人では解けない」
 片桐は、まな板の上の鯉となった白石にゆっくりと近寄る。
 近くで見れば見るほど、いい女だった。
 整った顔立ちに色白の肌、スタイルも抜群だし、何より、凛とした表情がたまらない。
 この毅然とした顔が快楽に歪み、メスの顔になって屈服すると思うと、それだけでも下半身に血が集まる。
「さぁ、早速、始めようか。インターポールの捜査官さんよォ!」
「ま、待って…!他のみんなは…?」
「へへっ…心配するな。仲間は無事だ。別の部屋の牢に押し込んである」
「すぐに解放しなさい。私が身代わりになるわ」
「いや、それは出来んな。まずはお前、そして、お前を堕としたら、あとは順番に肉便器にして、全員、同じように雌犬として飼ってやるさ。だから何も寂しいことはないぞ。仲間で仲良く同じ運命を辿れ」
「げ、外道め…!」
 白石は、キッとした眼で睨みつけるも、片桐はニヤリとして、
「いいぞ、その眼。そういう表情をしてくれないと張り合いがない。すぐに『お願い〜、イカせて〜』なんて言われたら興醒めってもんだ」
「くっ…!」
 唇を噛む白石。
 絶体絶命の状況の中、そんな彼女がすがる唯一の希望。
 それは、先ほど、本部を襲撃された時のことだ。

 催涙ガスの煙に巻かれながら、白石は、咄嗟に近くにいた部下の大園桃子を奥のロッカーに押し込んで隠した。
「絶対に開けちゃダメ!何があっても…分かった?」
 と白石は、催涙ガスに苦しみながら念を押した。
 その直後、白石は抵抗むなしく捕まってしまうワケだが、こうなった以上、残してきた桃子に全てを託す。
 この危機を誰かに伝えてほしい。
(沙友理か、もしくは一実に…)
 松村か高山、ともに信頼しているベテランの部下だ。
 その二人なら、すぐに捜索を開始して助けに来てくれる筈だから、それが伝わると信じて耐え忍ぶしかない。
(もし、桃子も見つかって、捕まっていたら…)
 その時は、これから、この身に地獄が降りかかることになるだろう。
(お願い…桃子…!)
 白石は願った。

鰹のたたき(塩) ( 2020/03/22(日) 23:15 )