乃木坂抗争 ― 辱しめられた女たちの記録 ―





























































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第三部 第二章・山崎怜奈の場合
3.測定
 長い手足の誇る美しいスタイルの身体を這い回る野蛮な男たちの指。
 それに対し、固い意思で無反応を貫く怜奈。
「……」
 首筋や耳、大股開きの太ももに指を這わされても、胸を揉まれても、股の間の恥ずかしい部分を見られても、冷徹な目で男たちを睨みつけ、閉じた口から声を漏らすことはない。
 下衆な男たちに対する嫌悪感を強く念じていれば、性感に触れることはなかった。
「ほぅ…」
 子分の責めを、くわえタバコで静観している片桐は感心して、
「息も乱れず…か。さすが女捜査官、なかなか手強いな」
「これで分かったでしょ?これ以上、こんなことを続けても時間の無駄よ」
「フフフ…果たしてそうかな?」
 片桐は、薄ら笑いを浮かべたまま、子分に継続して怜奈の身体を触らせる。
 しかし、反応は変わらない。
「チッ…!」
 次第に男たちの方から失望の舌打ちが聞こえ、
「アニキ。ダメですよ、コイツは。責めていても面白みがない」
 と文句を言った。
「もう、さっさとヤッてしまいましょう。別に濡れてなくたって構わねぇ。無理やりぶちこんで、痛みの苦痛で堕としてやれば同じですよ」
 と言って、ベルトに手をかける男たちに対し、片桐は、
「まぁ、待てよ」
 と苦笑しながら制し、
「それじゃあ“快楽”拷問にならんだろう。ただのレイプじゃ芸がない。『捜査官狩り』は、こういう気丈な女を快楽に酔わせて堕とすから楽しいんだ」
 と言った。
 それを聞いて、怜奈は、
(悪趣味なヤツ…大嫌いだわ)
 と思った。
 片桐は、くわえていたタバコを足元に捨て、踏みにじってから、
『コイツは、今、仮面を被ってるんだよ。俺たちのような下衆な男に触られても決して感じたりしない…と強く念じて、全ての感情をゼロにする仮面をつけてやがるんだ。…なぁ?そうだろう?』
「……」
 答えず、目も合わせない怜奈。
「だから、まず、その仮面を外してやればいいのさ。そうすれば反応もするし、いい声で鳴いてくれるぜ」
「なるほど。でも、アニキ。どうやって…?」
 目の前の裸体に触れることしか頭にない男たちは、揃って首を傾げる。
「こういう秀才の優等生ってのは変にプライドが高いんだ。コイツの澄ました顔がそれを物語っているだろう?だから、まずは、その妙なプライドを崩してやればいい」
 片桐はそう言って笑うと、何やらポケットを探る素振りを見せた。
 怜奈の眼が一瞬きつくなったのは、もしかすると自分たちが警戒している非合法ドラッグ『HMR』ではないかと思ったからだ。
 秀才らしく、そのクスリについての知識は既に頭に入っている。
 即効性で、なおかつ持続性があり、感度を急激に高めるセックスドラッグ。
 細かい粉末なのでカプセルにも詰めれるし、水溶性の高さを活かして催淫オイルやローションにも加工できる。
 原産地のフィリピンでは、マフィアが、この粉末を溶かした酒を女に飲ませて無理やり行為に及ぶことが問題化している。
 もし、それだとしたら、今、こうして手足を拘束された状態では投与を阻止するのは不可能だ。
 実際どれほどの効き目か知らないが、劣勢に陥ることは間違いない。
 余裕を装って表情には出さないまでも、しっかり身構えながら片桐の手を凝視する怜奈。
 片桐はポケットから“ある物”を取り出した。
 しかし、それは怜奈が懸念した違法ドラッグ『HMR』ではなかった。
(あれは…ノギス…?)



 ノギスとは、長さや幅を測る時に使われる測定器具である。
 予想外の器具の登場に、その意図が汲み取れず、困惑する怜奈。
 片桐は笑って、
「怪しいクスリでも出てくると思ったか?フフフ…」
「ノギスなんて持ち出して、何をする気…?」
「ほぅ。その歳でこの器具の名称がすぐに出てくるとは、さすが優等生」
 片桐は感心して、
「女のプライドを打ち砕く一番の方法は何か知ってるか?…ずばり“恥”だよ。耐え難い恥辱を与えることによって、女のプライドなんてものは脆くも崩れ落ちる。そしてプライドという防具を失った女は、焦り、追い詰められ、一丁前の啖呵を切ってしまったことを悔やみながら最後はあっけなく堕ちていくのさ」
「……」
 片桐は、怜奈の目の前で、手にしたノギスをちらつかせて、
「これから、こいつを使ってお前の身体をいろいろ調べてやる。身体測定だ。といっても、ただの身体測定じゃないぞ?お前のプライドを打ち砕くための測定だ。たとえば…」
(…!)
 片桐の手が、大股開きの怜奈の恥丘を覆う陰毛を撫でる。
「優等生のマンコの割れ目は何センチ、膣の穴の直径は何センチ、勃起したクリトリスは何センチ…とかなぁ?」
(くっ…!)
 その説明でようやく、この場にノギスが登場した意図が分かり、はじめて、ぴくりと眉が動かした怜奈。
 女として屈辱の身体測定が、まもなく行われようとしている。
「フフフ…さぁ、始めようか。お前のプライドが勝つか、俺たちの与える恥辱が勝つか、だ」
 と、片桐は楽しそうに声を上げた。

鰹のたたき(塩) ( 2020/02/25(火) 10:11 )