乃木坂抗争 ― 辱しめられた女たちの記録 ―




























































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第三部 第二章・山崎怜奈の場合
2.捕らわれた秀才
 山崎怜奈。
 高学歴の秀才で「乃木坂46」きっての頭脳派だが、その頭脳を持ってしても、背後からのトラックの追突は防ぎようがなかった。
 目を覚ました瞬間から身体の不自然さを感じ、 見てみると、分娩台の上でM字開脚のように大股開きにされていた。
 慌てて脚を閉じようとしたが、左右の足首をしっかりと固定されていて閉じられない。
 何度か身体を揺すってみても、外れる気配がない。
 むしろ少し足が痛い。
 どうやら追突された時のショックでどこかに打ちつけてしまったらしい。
 怜奈は溜め息をついて暴れるのを止めた。
(この足じゃ、一人で逃げるのは難しい。それに無駄な抵抗は余計な体力を使うだけ…)
 冷静といえば冷静だが、冷めた性格という風にも受け取れる。
 おとなしく時間が過ぎるのを待っていると、ようやく、男たちがぞろぞろと入ってきた。
 花田組の組員だというのはすぐに分かったし、一番最後に入ってきた男は、怜奈が、北野日奈子とともに尾行していた花田組の幹部の一人、片桐だった。
(そうだ!日奈子は…?)
 少なくとも、この狭い部屋の中には見当たらない。
「お目覚めか?優等生さんよォ」
 片桐が声をかけ、
「まったく、人のケツをちょろちょろ尾け回しやがって…」
「……」
「おら!誰の指示なんだよ?白石とかいうインターポールのエリートか?」
 と睨みつける片桐に対し、怜奈は、終始、冷めた表情で、
「それを聞いてどうするつもり?」
「決まってるだろ。気に障ることをしてくるヤツはタダじゃ済まさねぇ。そんなヤツには男の怖さを思い知らせてやるからよ」
「男の怖さ、ねぇ…」
 怜奈は大袈裟に溜め息をついて、
「気に障るのは貴方自身に後ろめたい気持ちがあるからじゃないの?やましいことがなければ別に気にならないと思うけど…?」
「何だとォ…?」
「それに、タダじゃ済まさないと言ったけど、果たして、貴方一人で白石さんと対峙する勇気があるかしら?今の私でさえ、こうやって動けないように拘束した上、子分をぞろぞろ引き連れてやっとでしょ?男の怖さの前に、まず、男らしさを見せたらどうなの?」
「てめぇ!コノヤロォ!」
「ちょっと頭が良いからってバカにしてんじゃねぇぞ!」
 怜奈の煽りにイライラする組員たち。
 当の片桐は苦笑して、
「さすが優等生。なかなか弁が立つじゃないか」
「褒められても別に嬉しくないけど」
「まぁ、いい。その鼻につく態度も、いつまで続けていられるか楽しみだ」
 その声で、組員たちが一斉にハサミを取り出した。
「よし、やれ」
 という声を合図に数人がかりで怜奈の服を切り裂いていった。
(くっ…!)
 内心、唇を噛みながらも、表情には出さず、冷めた眼で男たちを見る怜奈。
「フフフ、いい眼だ。その眼を是非とも最後まで続けてくれよ」
 と片桐は笑っている。
 手慣れた男たちの手により、あっという間に下着姿にされた怜奈。
 下衆な男たちの輪の中、恥ずかしい気持ちは当然あるが、これまで同じ目に遭った幾人の捜査官と違い、怜奈は、取り乱すことはなかった。
 秀才であるがゆえ、怜奈には冷静な分析力と判断力がある。
(敵の手に堕ちる、イコール、こういう目に遭うのは分かっていたこと。できれば、こうなりたくはなかったんだけど━)
 だが、そうなってしまった以上、仕方ない。
 時には諦めも肝心。
 潔く諦めるところは諦め、次の可能性を探る。
(反応してはいけない。無反応のままいれば物足りなくなって、すぐに飽きる筈━)
 ついつい甘い反応をしてしまうから男は喜び、増長するのだ。
 だから怜奈は、軽蔑した目で無反応を貫く。
 とにかく今は耐え、相手の油断を誘って逆襲に転じるチャンスをじっと待つしかないからだ。
「さて…それじゃあ、優等生の裸体ってのを拝ませてもらおうか」
 片桐の意気揚々とした指示で、ブラ、そしてパンティへと近づく周囲のハサミ。
 目を見合った組員たちが一斉にハサミを入れると、最後の防具はともに切り裂かれ、あっけなく肌からずり落ちた。
 歓声を上げる男たちに対し、怜奈は無反応で冷めた目を続けた。
(分かっていたこと…別に裸を見られるぐらい何とも…)
 怜奈は、そう自分に言い聞かせ、動揺を押さえつける。
「どうだ?素っ裸で大股開きにさせられて恥ずかしいか?」
「別に…」
「隠したくても手足が動かせないと隠せねぇなぁ?」
「隠した方がいいの?だったら、これ、外してくれない?」
「俺たちに裸を見られるのはどんな気分だ?」
「そんなの、私が自分で脱いだワケじゃないもの。アンタたちが無理やり脱がせたんでしょ?」
「この後、どんな顔して堕ちていくのか楽しみだなぁ?」
「そうね。期待通りのものが見れたらいいけど」
「チッ…!さっきから可愛いげのない女だな!」
 期待したような反応と違う冷めた返答ばかりでイライラする組員たち。
 おそらく彼らは、ここで怜奈が、「いやっ、やめて…!」とか「見ないで…!」と言うのを期待したのだろう。
「アニキ。面倒ですから、さっさとヤッちまいますか?」
 と問う組員もいたが、片桐は苦笑し、
「そう焦るな。やり方はまだ他にいくらでもある」
 と、たしなめてから、怜奈に目をやり、
「そうやって気丈な態度をとっていられるのも今のうちだ。あとで後悔させてやるから覚悟しておくんだな」
「ふん…!」
「さぁ、秀才の優等生の本性、たっぷり見せてもらおうか。泣くなよ?…フフフ」
 と片桐は笑い、いよいよ、怜奈への拷問が始まった。

鰹のたたき(塩) ( 2020/02/23(日) 14:10 )