乃木坂抗争 ― 辱しめられた女たちの記録 ―




























































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第二部 第八章・桜井玲香の場合
2.敗北宣言
 ソファーに腰を下ろし、優雅にワイングラスを口に運ぶ鮫島。
 その眼前に、拳銃などを全て没収され、丸腰で立たされた玲香は、屈辱にまみれた表情で鮫島を睨みつけている。
「さて…」
 鮫島は、グラスの中のワインを飲み干すと、玲香に向かって、
「気分はどうだ?宿敵を前に、手も足も出せずに立たされるのは悔しいか?」
「……」
「お前には手を焼いた。今まで生きてきて、ここまで俺を追い詰めた女はお前が初めてだ」
 一歩ずつ歩み寄る鮫島。
「女っ気を感じるヒマもなかった。執念深く俺を追い詰めてくる軍用犬みたいなヤツとしか思えなかった。しかし、こうして、しおらしくなった姿を見ると、やっぱりお前も一人の女なんだ。となると、当然、そいつの本当の顔、つまり“オンナの顔”が見たくなるのが男の性というものだ」
 鮫島は、玲香の背後に回ると、突然、耳元に顔を寄せ、
「オナニー…やって見せろよ。今ここで」
 と囁いた。
 玲香の眉がぴくっと動く。
 そして目を背け、いやいやをするように首を振る。
 鮫島は、ぱっと離れて、
「嫌なら構わないぞ。別に、断ったからといって、お前が死ぬワケじゃない。死ぬのは━」
「や、やめて…!若月を巻き込まないで…!」
 俯いて、声を絞り出す玲香。
 鮫島は、再び耳元に顔を寄せ、
「だったらやれよ。若月から手を引くかどうかは、お前の態度次第だ」
「……」
「さぁ、とくと見せてもらおうか。捜査官のヴェールを脱いだ本当の姿、そして、普段は見せないオンナの顔を!」
 と鮫島が煽る。
 玲香は、観念して、手を胸元へ持っていった。が、間髪入れずに鮫島が、
「おいおい、ふざけてるのか?服を脱いでからに決まってるだろ」
 と指摘した。
 逆らえない玲香は、血が出るほど唇を噛みしめながら、静かに、着ている服のボタンを一つずつ外していった。
 屈辱のストリップ…それも、宿敵の目の前で、という気が狂いそうな状況で、徐々に露わになっていく玲香の素肌。
 上下とも脱ぎ去り、下着姿になったところで、
「さぁ、普段してる通りにやって見せろ」
 と鮫島の野次が飛ぶ。
 否定をするのも面倒で、玲香は、口を真一文字に縛って、両手で、ゆっくりと自身の胸を揉んだ。
 正直、全く気持ちよくない。
 そういう気分ではないからだろう。
 だが、それでも始めないといけない状況だったし、さらに今、それを続けないといけない状況だ。
(この男の考えることだ。どうせ最後まで…イクまでやらせるつもりに違いない…!)
 先が思いやられるが、逆に、さっさと済ませたいという思いもあった。
 覇気なく、そして空しく、一心不乱に胸を揉み続ける玲香に突き刺さる鮫島の卑しい視線。
(くっ…そ、そんなにまじまじと見るな…!)
 その視線が気になるにつれ、少しずつ快感が現れるのが不思議な感覚だった。
 恥じらえば長引くだけと割り切り、自身で強弱をつけながら揉むと、
「んっ…」
 と、徐々に吐息が漏れ始める。
「ほら、下も触るんだ」
 と指示をされて、玲香は、右手を股の間へ移動させた。
「くっ…んっ…」
 やらなければいけないとはいえ、さすがに浸るワケにはいかない。
 出来るだけ声を押し殺しつつ、パンティの上から秘部をなぞる玲香。
 一方、上の方も、乳房全体を揉みしだく動きから、それによって現れた先端の突起の辺りをブラの生地の上から指で弾く動きに変わる。
「いいぞ、いいぞ。さぁ、いつもはそこからどうやってるんだ?」
 と鮫島がニヤニヤしながら言う。
 別に、その言葉に従ったワケではないが、玲香は、ブラをずらして乳首を摘み、パンティの中に手を入れて指を動かした。
「んっ…あっ…!」
 ついつい、内股で前屈みになる玲香に対し、鮫島は、
「よく見えないな。座って、こっちに向けて脚を開いてやってもらおうか」
 と注文をつけた。
 拒否権の無い玲香は素直に従って、鮫島に向けてM字開脚の体勢になって自慰を続けた。
 屈辱以外の何物でもない行動。
 だが、冷めきった精神とは裏腹に、息はだんだんと荒くなり、乳首はみるみる勃起し、そして秘部をますます濡れてくる。
(わ、私…こんなヤツの目の前でも少し感じてる…?な、何で…!?)
 指を止めないまま、不本意な身体の反応に困惑する玲香。
 鮫島は、そんな玲香の欲情や狼狽を敏感に感じ取り、一言、痛烈な言葉を浴びせた。
「何だ、お前。…もしかして、見られるのが興奮するのか?」
「ち、違うっ!!」
 慌てて否定する玲香。
 しかし、鮫島は一人で勝手に納得し、
「ククク…なるほど。さては、普段から若月に見てもらったりしているのか?それなら、こういうのも嫌いじゃない筈だなァ?」
「ち、違うって言ってるでしょ!」
 玲香は必死に反論するが、唇が少し震えている。
 鮫島は面白がって、
「ほら。いつも若月の前でしてるようにやれよ」
「い、嫌っ!」
(若月の名前を出さないで…!)
 自分の本性を押し込んで閉ざした扉を無理やりこじ開けられるような感覚。
 今すぐ指を止めたい。が、止めたら反抗と見なされ、鮫島が何をしでかすか分からない。
 苦し紛れに目を閉じる玲香。
 今、その場の状況、光景を、一旦、全て忘れ、あくまでも機械的に絶頂を迎え、さっさと行為を終えるように努力する。
 しかし…。
「何だ?若月の顔でも想像しているのか?」
(…くっ!)
 鮫島の意地悪な雑音が、玲香を逃がさない。
 そして鮫島は、玲香の考えを潰すように、
「やっつけでやるのはノーカウントだ。目を開けて、俺の目を見て、俺の目の前でイクまでやるんだ」
「んっ…いやぁ…!」
 突き刺さる視線。
 その相手が相手だけに、どうしても自制心が働き、なかなか絶頂には届かない。
 しかし、長引けば長引くほど、それもまた苦痛だった。
 ふいに鮫島が、玲香の眼前に電マを差し出した。
「どうする?使ってみるか?」
 ニヤニヤしながら問う鮫島。
 最初は突っぱねようとした。が、
(指よりは気が楽なのかも…)
 と思った。
 脅迫によって強制された不本意な自慰行為だから、自分の指で自ら気をやるより、スイッチを入れれば動く機械で気をやる方が、仕方ないと思って割り切れるような気がした。
 受け取った電マのスイッチを入れ、股間にあてがう。
「んっ…!」
 下着越しでも伝わる振動に、思わず腰がくねる玲香。
 鮫島の好奇の目に晒されながら、本心とは裏腹に性感を高めていく。
「くぅっ…んっ、あっ…やぁっ!」
 思った通り、機械の振動は有無を言わせずに玲香の身体を絶頂へと導いていった。
(くっ…あっ、イ、イキそうっ…!)
 腰がぷるぷると震え始めた時、ふいに鮫島が、玲香に耳打ちをした。
(……なっ!)
 絶頂目前のところで急にキッとした顔になって電マを離し、行為を中断する玲香。
 唇を震わせながら、
「そ、そんなの、言えるワケないでしょ…!」
「別に嫌なら嫌で構わんがな」
 と、鮫島は、あっさりと言い、これ見よがしにポケットから携帯電話を取り出す。
「ま、待って…!」
 玲香は慌てて呼び止めると、顔を赤らめて、
「わ、分かった…言うから…」
 と言った。
 その言葉に鮫島は満足そうに笑って、
「そうか。じゃあ、再開だ」
「…んっ、くっ…はぁっ…!」
 電マを用いて、再び絶頂へと駆け上がる玲香。
 皮肉なことに、少し慣れてきて、当てると快感が得られるポイントが分かってきた。
 そして、また、あと一息というところまできた。
 玲香は、自然と漏れる喘ぎ声を抑えながら、鮫島に指示された文言を口にした。

「わ、私…桜井玲香が…オ、オナニーでイ、イクところを…み、見てください…。イ、イッて…か、身体が、ビクビクするところを…い、いっぱい、な、舐め回すように、見ていてくださいっ…!」

 そして…。
「んっ!イ、イクっ…!んあぁぁっ…!」
 腰を突き出すようにして跳ね上がる玲香の身体。
 小柄ながら鍛え上げられた美しい肉体が、笑う悪魔を目の前にして、屈辱のオーガズムに達し、大きく痙攣する。
 その様は、まさに、鮫島の言わされた卑猥なセリフの通りとなった。
「…ハァ…ハァ…」
 絶頂の余韻で息が上がる玲香。
 パンティに押し当てた電マを退けると、そこにはくっきりと、その布の向こうにある花弁を象るように大きなシミが広がっていた。
「ククク…素晴らしい…素晴らしいぞ、桜井!お前のオンナの顔、とくと拝ませてもらった!なかなか可愛らしい声で喘ぐじゃないか!なかなかいいイキっぷりじゃないか!」
 鮫島は、嬉しそうに声を上げ、
「では、次へ移ろうか!お前は特別だ。快楽のフルコースでたっぷりともてなしてやるぞ!」
 と言った。

鰹のたたき(塩) ( 2020/01/26(日) 15:03 )