乃木坂抗争 ― 辱しめられた女たちの記録 ―





























































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第二部 第五章・遠藤さくらの場合
2.目撃
 戻ると、ジムはひっそりとしていた。
 さくらは、忍び足で気配を消しながら、そっと廊下を進んだ。
 更衣室は、先ほど自分たちが出たっきりで人の気配はなかった。
 続いてトレーニングルーム。
 電気が消えているし、誰もいない。
(居残り練習してるんじゃなかったの…?)
 てっきりそうだと勝手に思っていたさくらは、がらんとした部屋を見て、首を傾げた。
 続いて救護室。…いない。
 だとすると、残るは奥のトレーナー室だけだ。
 さくらが近づいていくと、だんだん、中から話し声が聞こえてきた。…が、何やら様子が変だ。
 一つはレイの声に違いないが、なぜか、やたらに息が荒く、時々、呻くような声が混じる。
 一方、それに対してトレーナーの衛藤の声はクスクスと笑う声が多く、レイのことを心配している様子もない。
(どういう状況…?)
 さくらは、気づかれないように、こそっと、ドアの隙間から顔を覗かせた。
 そこからの視界の中に、衛藤の姿は見えない。
 見えているのは床にへたりこんだレイの姿だけだ。
 しかも、レイは、M字開脚のように股を広げ、そこに手をやり、もじもじと身体を震わせている。
「んっ…あっ…」
「ほら、もっと脚を広げてくれないと見えないわよ?」
「やぁっ…あんっ…」
 衝撃の光景だった。
 さくらは思わず出そうになった声を必死に押し殺した。
(な、何これ…!?)
 開いた口が塞がらない。
 レイは、クチュ、クチュ…と卑猥な音を部屋に響かせながら、
「み、美彩さん…もう無理です…!」
「ふふっ、催眠を解いてほしい?」
「は、はい…お願いします…もうイキたくてたまらないんですっ…!」
 おねだりしながらも一向に指を止めないレイ。
 さくらは、その様子を、顔を紅潮させながら覗いていた。


 衛藤に犯され、処女を奪われた日…。
 あれ以来、清宮レイは、口止めのため、毎日、ジムから帰る時に、また媚薬クリームを身体に塗られては“イクことができない”催眠をかけ直されていた。
 その催眠のせいで、帰宅後、身体が疼いて自慰を始めても絶頂に達することはできない。
 何度やってもイケない生殺しで悶々とした夜を過ごすレイ。
 そして翌日、もはや性欲が暴発寸前となったレイは、また、トレーニング終わりに一人だけ残り、術を解いてほしいと懇願する。
 美彩は、術を解くかわりに、毎日、何らかの指示を出しながら自慰を要求した。
 今日はM字開脚、昨日は四つん這い、その前は立ったままやらされた。
 それでもレイが甘んじて受け入れるのは、とにかく術を解いてほしいからだ。
 そして、決してイクことの出来ないオナニーを見せつけることを強要され、美彩が満足すると術を解かれ、褒美としてようやくイカせてもらえる。
 この時のレイは、いつも、まるで獣のように何度もイキ狂う。
 しかし、解放されたのも束の間、最後にまた敏感なところに媚薬を塗られ、再び催眠をかけて帰される。
 そして次の日も身体が疼きに耐えきれず、催眠を解いてほしいがために美彩の言いなりになる。…レイは、今、その無限ループに陥っていた。


 レイは泣きが入ったような声で、
「解いてくださいっ!お願いしますっ!」
「解いてどうされたいの?」
「オ、オマンコっ!オマンコをいじくってほしいですぅ!」
 絶叫するレイ。
 その同期の姿を陰から見つめ、唖然とするさくら。
(ヤ、ヤバイじゃん…レイちゃん、大きな声で何を言ってんの…?)
 動揺が隠せないさくら。
 そんなさくらの視界の隅から、美彩の姿が初めてフェードインした。
「そうねぇ…解いてあげてもいいけど、一つ、条件があるわ」
「じょ、条件…?」
 息を飲むレイ。
「実は…さっきから私たちのことを廊下からコソコソ覗いてる娘がいるんだけど」
(…!!)
「その娘を捕まえてきたら催眠を解いてあげてもいいわよ」
(ヤ、ヤバイっ!)
 さくらは急いで立ち去ろうとしたが、慌てすぎたせいで足がもつれた。
 そこへ一目散に飛びかかってくるレイ。
「痛ッ!」
 タックルされたような格好で廊下に転がる二人。
「え…!?さ、さくらっ!?」
 レイは驚きながらも、しっかりその細い身体を掴んで離さない。
「は、離して…!」
「さぁ、お仕置きの時間よ!レイちゃん、その娘を連れてこっちへいらっしゃいっ!」
 美彩の声が高らかに響いた。

鰹のたたき(塩) ( 2019/12/30(月) 14:10 )