乃木坂抗争 ― 辱しめられた女たちの記録 ―





























































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第二部 第四章・清宮レイの場合
7.苅られた芽
 処女喪失、初めてのセックス、そして身体を貫かれての初イキ。
 今まで守ってきたそれらをこの一瞬で矢継ぎ早に経験してしまったレイは、まだ意識朦朧としている。
 美彩は、服を整えると、レイの手首を掴み、
「ほら、そろそろ起きなさい」
「うっ…ん…」
 引っ張り上げられて身体を起こすレイ。
 まだ、胸や陰部が少し熱い。
 美彩は前屈みになってレイと目を見合わせ、
「私の目を見なさい」
 と言った。
 そして、“アイツ”と同様、独学で会得した催眠術をレイにかける美彩。
 レイにかけられた『絶頂に達することができない身体になる』催眠。
「この催眠を解くことは術士の私にしかできない。コトを荒立てると、二度とあの快感を味わえないわよ?」
 と告げる美彩。
 ただでさえ持続性の高い媚薬クリームを敏感な箇所に塗られ、さらに女の悦びを叩き込まれて間もない身体。
(それでなくても、日頃から週に二回もオナニーに浸っていたんだもの。我慢できる筈がないわ)
 そんな女にはうってつけの口止めであり、また、効果的な調教の手段だろう。
「さぁ、もう用は済んだから服を着て帰るなり、あとは好きにしなさい」
 美彩はレイを冷たく突き放すと、先に部屋を出ていった。
 裏の非常階段に出て、タバコに火をつけながら、携帯電話を取り出す。
 タバコを吸う姿は、普段、「乃木坂46」という組織の一員として振る舞っている時は見せていない。
 これが裏の、いや、本当の顔だった。
「もしもし、私。…終わったわよ」
「━━━」
「大丈夫。ばっちり撮れてると思う」
「━━━」
 美彩は電話の相手との会話でクスクスと笑って、
「全然。私が実は裏でアンタと組んだ内通者だなんて誰も気づいていないわ。疑いもせず、まだ私のことを警察庁OBのトレーナーだと思ってる。この調子だと、もう一人ぐらい手にかけてもバレないんじゃないかしら?ふふっ」
「━━━」
「心配いらないわ。そのへんはぬかりなくやるから」
 そう言って美彩は、共謀する鮫島との電話を切った。


 翌日。
 人知れず、この場で行われた卑猥な出来事など嘘のよう、トレーニングルームでは、何事もなく、少女たちの鍛練が行われている。
 黙々と汗を流す遠藤さくら、柴田柚菜、早川聖来。
 そして、その隣に少し伏し目がちな清宮レイ。
 他の三人の空を切る連打と違い、見せかけだけの拳を繰り出しては誤魔化しを続けている。
 時計の針が18時を差し、部屋にベルが鳴り響いた。
「はい、今日はここまでっ!お疲れ様!みんな片付けて〜!」
 衛藤美彩は、まるで園児の面倒を見る保母さんのように声を上げた。
 片付けが終わると、滴る汗を拭きながら、礼をして更衣室へ消えていった四人。
 美彩も、使ったトレーニング用具を片付け、黙々とジム内の掃除を始める。
「お疲れ様でしたぁ!」
 着替え終わった少女たちが帰路につく。
 作り笑いで見送る美彩。
 そして、また、掃除に戻る。
 ふいに、一人、ジムに戻ってきた少女がいた。
 やはりレイだった。
「…何?どうしたの?」
 美彩が手を止めて見つめると、レイは、もじもじしながら、
「美彩さん…あ、あの…その…」
「今日のメニューは終わりよ。また明日ね」
「ま、待ってください…!」
「…何よ?」
「あ、あの…してほしい…です…」
「…ふふっ」
 美彩は微笑むと、ホウキを床に置き、レイの身体をそっと抱き寄せ、
「またしたくなっちゃったの?」
「…は、はい…」
 美彩の腕の中で、もぞもぞと身体をくねらせるレイ。
「ふふっ。その様子だと、さては昨日も帰ってからオナニーしたんじゃないの?」
「……」
 図星だった。
 だが、イケない催眠のせいでイケなかった。
 何度やってもイク寸前のところで思考が停止してしまう。
「…それで我慢できなくなったんでしょう?」
「…はい…」
「ふふっ。どうりで練習中も一人だけ上の空だと思ってた」
 美彩は笑って、
「どうしてほしいの?」
「イ、イキたいです…お、お願いします…!催眠を解いて、もう一度、私をイカせてください…」
 赤面しながら声を発するレイ。
 そして、再び二人で行われる忍耐力のトレーニング…。

 こうして期待のルーキーは裏切り者の催眠術に翻弄され、快楽欲しさに淫らなおねだりをして静かに堕ちていった。


(つづく)

鰹のたたき(塩) ( 2019/12/29(日) 23:58 )