Episode1
13 先客
授業を終え、昼休みになると日向は屋上に向かっていた。

教室は騒がしく、自分は好きではなかったが、屋上には他の生徒は来ないため、1番の気に行っている場所である。

今日も静かに1人で過ごせると思っていたが、屋上に出るドアを開けた瞬間にそれが間違っていることに気付かされた。

柵にもたれて葵と見たこともない、女子生徒が1人座って静かに弁当を食べていた。

葵が柵にもたれて立っていることには何も違和感を覚えることもなかったが、女子生徒は葵のことは見えておらず日向に気づくと静かに頭を下げるだけだった。

日向は、女子生徒に話しかけることもせずに少し離れて柵に座って弁当を食べ始める。
葵も女子生徒の前を隠れることもせずに通ると日向の隣に来るが、見えていないのか反応を示さないところを見ると改めてこの世のものでは無いことを実感できた。

しばらく沈黙が続いたが、女子生徒は弁当を食べ終わり、地面に置くと日向の方を向くと

「君って、同じクラスの渡邉日向くんだよね。君もここ好きなんだ。」

女子生徒に声をかけられると日向は、驚いたように顔を上げると相手を見つめる。
クラスの生徒に関心を向けたことが無いためというのもあったが、1度くらいは顔を見た事があるだろうとも考えたからだ。

「佐々木美玲って言います。
渡邉くんクラスに関心を示しているの見た事ないから私のことがわからなくても当然だよね。
まぁ、私もなるべく関わらないようにしてるからかもだけど。」

美玲と名乗った彼女を改めて見ると顔が整っており綺麗だとも思ったが、眼鏡の奥の瞳は暗かった。
自分が気づく前も教室にずっと居たであろう、葵の方を振り返ったが検討もつかないという顔をすると肩を竦めてまた指を回し始める。

日向「よろしく、静かな場所が好き同士、仲良くできるといいね。」

日向は顔を合わせることも無く冷たく言い放つ。
美玲は、鋭い目付きで日向を見るが、直ぐに屋上から出ていった。

よほど静かな場所が好きなのだろうか、ただ一人でいたいのだろうか。

考えようとも、知ろうとも思わないのだけど。

■筆者メッセージ
佐々木美玲さんと日向の関係性をどうしようか迷います。

葵は日向のお家に居候させようかなと思っています。

生きてませんが…
闇の申し子レイ ( 2020/12/15(火) 21:39 )