目の前にいる人
「…え?」
「だから、私が好きなのは蓮見君だよ」
「あぁ、友達としてってやつね!びっくりするな〜」
「違うよ。異性として、1人の男の子として好きなの。」
「…マジ?」
鈴木は無言で頷く。
非常に困った。これ以上何を話せばいいのかわからない。
少しの間の沈黙を切り裂いたのは、鈴木の方だった。
「蓮見君の好きな人って、誰?」
「俺が好きなのは…「純奈ちゃんでしょ?」
俺の言葉を遮るように鈴木が入ってくる。
俺は否定しようとしたが、鈴木は話を続ける。
「私、放課後たまに純奈ちゃんと蓮見君が一緒にいるところ見るんだよね。あ、でもこの前は真夏さんも一緒にいたから真夏さんってこともありえるのかな?」
鈴木の話は止まらない。
「私、初登校日の朝に蓮見君が話しかけてくれたの凄く嬉しかったんだよ。新しい学校で友達できるか不安だったし、人見知りだからもしかしたら友達できないんじゃないかって思ってたの。そんな私にずっと優しく話しかけてくれたし、蓮見君のお陰で色んな人と友達になれたんだよ。そんなの、好きになっちゃうじゃん。」
感情が高ぶったのか、鈴木は泣いてしまった。
「ちょ…大丈夫?」
俺はテーブルの上のティッシュを数枚差し出す。
鈴木は呼吸を整えた後、話を再開した。
「私ね、純奈ちゃんと蓮見君が一緒にいるのを見てすごく落ち込んだの。でも、こんな私なんか好いてくれるわけ無いし、切り替えて蓮見くんと純奈ちゃんを応援しようって思ってたんだよ。でもこうやって2人きりになって思ったの。やっぱり蓮見君のこと諦めきれないなって。」
鈴木は再び泣いてしまった。
「もう私…どうしたらいいか自分でもわからないよ…」
泣いている鈴木を、俺は優しく抱きしめた。
「落ち着いて。それで俺の話を聞いて?」
俺の胸で泣いている鈴木の頭が縦に動く
「まず、鈴木は勘違いしてるよ。俺は純奈と付き合ってない。
「え…そうなの?」
「そうだよ。だって俺の好きな人は、今目の前にいる人だもん。」
鈴木は一瞬驚いた顔をして、また泣き出してしまった。
そんな鈴木を俺は強く抱きしめた。
「なんで私なの?一緒にいても面白い人間じゃないし、蓮見君に何もしてあげれてないよ。」
「一緒にいるときの鈴木はいつも面白いし、話してるだけでも俺は幸せな気分になれてるよ。」
「…ほんとに?」
「ほんとだよ。」
「…まさか蓮見君と両想いなんて、夢見たいだよ」
そんなことを言う鈴木の頬を軽くつねってやる。
「いてててっ、いたいよ〜」
鈴木に笑顔が戻っていく
「やっぱり鈴木は笑ってる方がいいね」
「からかわないでよっ」
すると鈴木は思い出したかの方に俺に質問をしてきた。
「そういえば、なんで純奈ちゃんと一緒にいたの?」
俺は一瞬、どう言い訳をするか考えたが、やめた。
隠し事はやめよう、正直に全て話そうと覚悟を決めた。
そして全てを鈴木に話した。
プリクラを撮った時に勃起したこと、その性欲の処理を純奈に手伝って貰っていたこと、そして、純奈と秋元と身体の関係があること。
鈴木は黙り込んでしまう。
「鈴木こそ、こんな俺を好きにならない方がいいよ。」
一瞬の間の後に鈴木が口を開いた。
「でもそれって私の為を思っての行動なんでしょ?純奈ちゃんと真夏さんとエッチしちゃったのも、それくらい蓮見君には魅力があるってことだよ。」
俺は驚き、そして涙がこみ上げてくるが、なんとか耐えきる。
顔にはなるべく出さず、鈴木を抱きしめる力を強くする。
「だから蓮見君を嫌ったりなんか絶対しないから安心して。
だけど、2人とはエッチまでしたのに私とはしないの?」
「…鈴木が嫌じゃないなら…したい」
「嫌なわけないじゃん」
そう言って鈴木は俺の口にキスをした。