第1章
中間試験
テスト当日の朝、俺は学校へ向かう途中で鈴木を見かけた。

「鈴木じゃん。おはよう。」

「あっ、蓮見くん!おはよう!」

鈴木はクラス内では大人しいが、こうやって話しているときはとても明るい。

このギャップがたまらん。

「蓮見君、テスト勉強した?」

「もちろん。鈴木は?」

「びっちりするつもりだったんだけど、本の続きが気になり過ぎて結局読んじゃった」

鈴木が笑いながら言う

「まぁ鈴木は普段からマジメに授業も聞いてるし大丈夫じゃない?」

すると彼女は悪戯っぽく、

「もしかして授業中ずっと私のことみてるの〜?」

図星なだけに言葉に詰まり一瞬固まる。

「なんてねっ。ボーッとしてると置いてっちゃうよ!」

鈴木は笑顔で走っていく。

ああ、これが青春ってやつなのか。






テスト用紙が配られテストが始まった。

勉強してきた甲斐があり、余裕を持って全て回答し終えた。

カンニングだと思われないようにこっそりと鈴木のほうへ目線を向ける。

鈴木のペンは止まっていた。

俺と同じく全て解き終えた上で見直しをしているのか、問題が解けていないかの二択だろう。

まぁ鈴木に限って後者ではないだろう。

そう思うと俺は机に突っ伏して、時間が過ぎるのを待っていた。






チャイムが鳴り、テスト初日が全て終了した。

「慎どうだった?」

前にいる純奈が後ろを向いて聞いてきた。

「1教科だけ満点の自信あるわ。それ以外はそこそこにかな。純奈は?」

「平均以上は取れたかなぁ」

「まぁ十分だね。鈴木は?」

俺は鈴木の方を見ると、彼女はとても焦った顔をしていた。

「やばいかも…」

「え、まじ?」

「うん…赤点は無いとは思うけど、あんまり自信はないかな…」

すると鈴木は申し訳なさそうに、

「…もしよかったらでいいんだけど、勉強教えてくれない?」

「全然構わないけど、どこでやる?テスト期間は図書室閉まってるはずだよ」

「あ…そっか…」

「良かったら俺の家くる?」

「え、いいの?」

「鈴木が嫌じゃなければ」

「全然嫌じゃないよ!じゃあお願いします!」

鈴木は少し元気を取り戻した。

俺は純奈の方を見て

「純奈もくる?」

「んー、やめとこうかな。私オールで勉強してるから夕方のうちに寝とかないと死んじゃうかも」

「わかったよ。体調崩すなよ」

「ん、ありがと」

純奈は俺に近づき、耳元で

「もしかしたら絢音ちゃんのこと抱けるかもね」

などと馬鹿げたことを言ってきた。

「しねーよ。」

と、言いつつも部屋に2人きりという状況を想像して少し興奮してしまった。

「じゃ、また明日ね」

純奈が俺と鈴木に別れを告げ去っていく。

「俺らも帰ろうか」

「うん!あ、帰りちょっとコンビニ寄っていい?」

「おっけー。」

そう言って学校を出た。




俺達は俺の家の近くのコンビニに立ち寄った。

「すぐ済ませるからちょっと待っててね!」

そう言って鈴木は小走りで買い物をする。

鈴木がレジに行ったのを見ると俺は念の為と思い、コンドームを手に取り、鈴木とは違うレジに行った。


「蓮見君も何か買ったの?」

「ま、まぁね」

そう言って俺の家へ向かう。


家に着き玄関の鍵を開け、ドアを開ける。

「ただいまー」

「おじゃまします!」

中から返事が無いのと、靴がないのを見る感じ母親はどこかへ行っているらしい。

二階へ行き鈴木を俺の部屋に案内する。

「適当にくつろいでて。俺は制服着替えてくるから。」

俺は着替えを持って下へ降りた。

部屋着に着替えて、お茶を入れて部屋へと戻る。

「おまたせー」

「あ、気を遣わせてごめんね」

「いいよ、お茶くらい」

お互いお茶を一口ほど飲む。

「じゃあ始めよっか。」

まず筆記道具を取り出す俺。

「何の勉強する?」

「明日の物理が不安だから教えてもらっていい?」

「おっけー。物理ね。」

俺は鞄から本棚から教科書を取ろうと思い立ち上がろうとした瞬間、鈴木が教科書を持って俺の横へとくる。

「ここ教えて?」

そう言って肩が当たる距離で聞いてくる。

少し動揺しながらも勉強を始めた。







1時間くらい経過したころに俺はペンを置いた。

「ちょっと休憩しようか」

「そうだね」

俺が伸びをしていると、

「ホントに迷惑かけてごめんね」

「気にしないでよ。俺の勉強にもなるし。」

「じゃあ、お礼として肩揉ませて?」

どうしても何かでお返しをしたいようだ。
義理堅いというか、やっぱり真面目だなぁ。

「じゃあお願いしようかな」

俺はあぐらの状態で鈴木に背を向けた。

鈴木は俺のすぐ後ろに膝立ちで立ち、肩を揉み始めた。


「おー、鈴木上手だね」

「たまにお父さんとお母さんにやるからね。少し得意なんだ。」

強すぎず弱すぎず、ちょうどいい力加減で凝っているところを押していく。

「蓮見君、肩凄い凝ってるね。ガチガチだよ。」

鈴木からガチガチというワードが出てきたことに興奮する。
気を抜いたら勃起してしまいそうだ。

すると突然、

「蓮見君って好きな女の子とかいるの?」

鈴木が肩を揉みながら聞いてきた。

「え、突然どうしたの?」

「気になったの。蓮見君色んな女の子と仲良いし。」

俺は内心ドキドキしながらも

「まぁ、いるかな。」

と、何気無い返事をした。

「そうなんだ…」

心なしか、鈴木の声に元気が無くなった。

「鈴木はいるの?」



「いるよ。今、目の前に。」


■筆者メッセージ
次回から第2章です。
vinc ( 2018/11/21(水) 01:04 )