第一章
出会った日
快晴の空。
その空の下を歩く1人の男子高校生。

(さて、アイツはどんな顔して入学式に出てるかな)

何やら考え事をしながら歩いている彼の表情はどこか嬉しそうで、足取りも軽い。
その足はボロボロの校門をくぐり抜ける。

彼が嬉しそうな理由である『アイツ』と彼の出会いは今から数ヶ月前の話である−−



寒空に重たい雲が広がる。
冬も本番を迎え、風が吹けば肌に刺すような痛みが走る。
街を離れれば街灯の光は減り、視界を闇が覆う。

そんな暗い世界に男子高校生5人の姿があった。
横一列に並んで楽しそうに話している。
その高らかな笑い声は彼らがいるガードレール沿いの空き地の外にも響き渡っている。

「そういえば最近さぁ、勇人学校からいきなりいなくなるけど、何してんの?」

「あぁ、あれ? あれはただの散歩。
学校いても退屈だしさ」

「確かにな。3年の奴らは怖じ気づいたのか黙ってるし」

彼らはとある学校の2年生。
その学校がどういう学校で彼らがどんな存在であるかはいずれ分かるだろう。

だが、彼らがどんな高校生なのかはこんなに辺りが暗いというのにその暗さに何も恐怖を感じず、むしろそれを楽しんでいる事を考えても分かる。
彼らは普通ではないのだ。
だが、彼らも人間は人間である。
この暗さでは視界にあるものをはっきりとは捉えられない。

「おっと。ん? あ、大丈夫か?」

先ほど勇人と呼ばれていた彼が何やら声を出す。
どうやら彼は人とぶつかってしまったらしい。
さらにそれは女性らしく倒れてしまっている。

「………………ッ!」

勇人とぶつかった女は無言で立ち上がると突如、彼に殴りかかった。
コンクリートを蹴る音。
凍てつく空気を切り裂くような音と共に拳が突き出される。

だが、次の瞬間に響いたのは人を殴った鈍い音ではなくその拳を止めた高らかな音。
その拳は勇人の横にいた男の左手に納められていた。

「お前、どういうつもりだ? 女1人で俺らにケンカ売るつもりか?」

「チッ……これだから、群れてる奴らは嫌いなんだよ!」

次々と繰り出す拳。
だが、その拳は易々と止められていく。

「お前、俺らと本気でやりたかったらどっかの学校1つ分ぐらいの仲間でも連れて来るんだな」

女の拳を止めた男は彼女の体を突き飛ばした。
でも、突き飛ばされた彼女は受け身を取り、すぐに戦闘態勢になる。
それに反応して彼も構える。

「敦士、やめろ。俺がぶつかったのが悪いんだ。
すまなかった。この暗さで気づかなかったんだ。
悪意は無いんだ。だから、その拳を降ろしてくれ」

「じゃあ、私と一戦やれ。それで私に勝ったら、今の事も無しにしてやる」
「てめぇ!」

「やめろ、真!」

勇人が叫ぶと真と呼ばれた男はピタリと止まった。
そして、勇人は1歩。相手の方へ踏み出す。

「勇人、お前正気か?」
「良いから、俺にやらせてくれ。
じゃあ、俺が勝ったらさっきの事はチャラで。
それと俺が勝ったら、俺の言うこと聞いてもらうっていう条件で良いか?」

「フッ、良いよ。さっさとやろうぜ」

凍るような風が吹き荒れる。
それと共に『1つ』、拳が舞った。

別名 ( 2013/11/02(土) 22:37 )