第一章
01
ーー事の始まりは、いったいどこからだったのだろう。



優美の趣味は物語を書くことだ。昔から書いているが、小説と呼ぶほどのものではなく、文章をただ重ねただけのものであった。昔は小説家になりたいとよく夢見たことだが、今は微塵もその気持ちはなかった。

だけど物語を書くのは楽しい。
その気持ちは今も昔も変わらなかった。どうして楽しいのかは、分からない。自分だけの世界を作れるからだろうか。

ただ一方で、物語を作っていくほど、たまっていく欲求があった。
誰かに見てもらいたい。
そんなありきたりな欲求が優美を支配していた。

誰に見せようと考えてみた。由衣なら見てくれるのではないかと優美は思った。由衣は優しい。姉の目から見てもそう思った。
しかし、優美は自分の創作した物語を見てもらいたいと思う一方、それ以上のためらいがあった。自分が創作した物語をほかの人に見せるなんて、いくら身内でも恥ずかしい事なんだろう。
そのためまだ物語は、優美以外の目にふれたことがなかった。



由宇木 ( 2014/02/16(日) 14:37 )