最終章
8話
神崎は携帯に送られたマップの示す場所に到着した。そこはいかにも怪しい雰囲気の廃工場。意を決して中に入る。

「黒田ぁ! 来てやったぞ!? さぁ早く遥香を返して貰おうか!! 」

神崎は廃工場中に響き渡るほどに叫ぶとゾロゾロとだらしなくスーツを着た男達が現れる。

『やぁ神崎くん! とりあえず君はバカなのかな? そんなホイホイ人質返すわけねぇじゃん! マジで一人で来るなんて思わなかったよ! ヒャハハッ! 超ウケるんですけど!? 君がそんなバカだとは思ってなかったよ…ガッカリだ…だから君には死んでもらうよ? まぁ最初からそのつもりなんだけどね!? 』

スピーカー越しに黒田の声が響く。するとスーツ男達は一斉に手に銃を持ち神崎に向ける。

『島崎遥香だっけ? あの子はなんかラリっちゃうまで翔が犯しちゃったからどっかの金持ちの変態にでも売るよ。それじゃバイバイ、神崎くん……』

スピーカーが切れると男達は神崎に標準を合わせる。そして引き金に掛けた指に力を入れようとしたその瞬間……

「止まれぇぇ!! 警察だぁ! 全員確保ぉぉ!!」

突然神崎の後ろから防弾の盾をもった部隊が駆けつける。銃を持った連中は想定外の展開にパニックになり瞬く間に取り囲まれた。神崎は薄ら笑いを浮かべながらスッと現場から離れる。

今回の一件、相手にヤクザというバックがある為神崎は早々に自分達高校生でやり切るのは不可能と断定した。そこで仕方なく母親で警察官上官のみなみに頼った。

黒田は下手なドラマのようなシナリオだったため、神崎は手に取るように次の展開が分かった。なのでさっきの事件もどうせ言っても黒田や遥香はおらず組の連中がいるだろうと予想した神崎は黒田の連絡の後すぐにみなみに連絡して特殊部隊を手配してもらった。

そして結果は神崎の計画通り。2、3発打たれても大丈夫なように速達のア⚪ゾンで防弾チョッキまで購入していたがそれは無駄だったようだ。

神崎は微かに銃声と唸り声の聞こえる工場の裏口に回っていた。入る前に下調べしていたので場所は知っている。母親にすぐに部隊を突入して貰うように言っていたためどうやら裏口には部隊はいない。

神崎の予想では今回黒田に加担していたヤクザ連中はきっと頭のキレる幹部や優秀な組員ではなく、親がガキの喧嘩に付き合えと命令した調子乗りの集まりの筈。ならばきっと警察にビビって何人かがここから出てくると踏んだ。

ガチャッ!

「ヒィィッ! 」

「はい、ビンゴ! 」

神崎は逃げてきたヤクザに出会い頭に足を引っ掛けマウンドを取る。そのままの流れで十発ほど殴り続ける。するとヤクザは詰んだと思ったのか抵抗をやめてしまった。

「黒田の居場所…教えてくんない? 」



ーーーーーーーーーー

ヴヴヴヴッ…ヴヴヴヴッ…

「おっ、キタキタ。神崎くん屠ったご連絡♪ にしてま遅かったなぁ…親父に言って喝入れてもらうか……はいはーい? 神崎くん死んじゃったぁ? 」

『それが死んでないんだなぁ。黒田くーん? 』

「へ、へぇー…なかなかやるじゃん……まぁこんなくらいで死んじゃったら面白くないし? 現状君が不利なのは変わりない。もしかして勝てるとかって思っちゃった? ブァーーカ! 次の指示まで大人しくマママの乳でも飲んでろ! 」

『いや、その必要はない…なぜなら……』

ガチャ……

「俺から来てやったからな? 黒田……」

黒田は驚愕し携帯を落とす。そしてフツフツと沸騰した水の底から湧き上がる水蒸気のように昔の記憶が蘇る。

南那の学校に転校した初日、自分の前の席に座っていた南那を可愛いとは思った。ただそれだけだった。学校案内の中でなんとなく気に入ってしまいそれとなく彼氏がいるか聞いてみた。想定していたが彼氏がいることが分かるとなんだかその彼氏に負けたような気分になり最後には南那に元気付けられてしまいイラッとした。

まるで俺が振られたみたいじゃないか。黒田組の若頭である俺をコケにした借りを必ず返してやるとこの時に誓った。

それからは南那としてかなり友好的な関係を築き上げた。そしてポロっと南那が「明日彼氏とデートするの。」と言った次の日に黒田は南那の家に朝早くから張り込んだ。精一杯のおめかしをした南那が家から出てくると黒田もその後を追う。

そして彼氏と会った瞬間に偶然を装ってばったり出会ったように見せかける。運が良いことに南那は俺が誘う前に自分から遊びに誘ってくれた。完璧だ。

彼氏は嫉妬を帯びた目で睨みつけてくる。本来なら嫌悪感を感じる筈だがこの時は違った。圧倒的優越感……ただそれだけを感じた。どうだ。彼氏よ。彼女が自分の前で自分の知らない男と仲良さそうに喋るのは。南那はお人好しで優しくちょっと鈍感なためそんなことには気付かない。

そしてその日はそれで終わるつもりだった。しかしその日中に感じ続けた優越感を更に感じたくなった。そして思いついた。そうだ、この女…俺のモノにしちゃおうと。

帰り道が同じだったのが好都合だった。南那の好きなアイドルのCDをエサに俺の家に誘い込みセフレとのプレイの一環で使ったシャブ入りの媚薬でいとも簡単に南那は堕ちた。

そこからは楽しかった。南那がどんどん彼氏よりも自分に時間を割くようになり最初は挿入を躊躇していたにも関わらず少し焦らすとすぐに快感に飲まれ最後には家に入ったらすぐに生まれたままの姿になり俺を淫に誘うようになった。

1番最高だったのは証拠映像をあの神崎とかいう彼氏に見せた時だ。あの時の神崎の顔はサイコーに傑作だった。顔から出る液体全部を垂らしながら南那、南那と呼ぶ姿はまさに滑稽だった。俺はコイツから彼女を寝取ったのだ。

それからは夏休みに入ると神崎はパッタリ南那と会わなくなった。観念したと思い次に見た時にインパクトを与えられるように南那には今までとは真逆の人生を歩ませた。露出の高い服、日焼け、金髪、ギラギラしたアクセサリー、派手なネイルと学校から始まり、麻薬、窃盗と組のアホ共と一緒に悪さを働き内面も変えていってやった。

そして南那から彼氏から話があると連絡が来たと聞いて喜んで送り出してやった。神崎はどんな顔をするか。想像しただけでニヤニヤしてしまう。俺は寝取りに向いているのかもしれないとおもった。

しかしその日は南那から連絡がなかった。何度か電話したが一回も出ない。おかしいと思いながらも携帯を無くしただけだと決めつけ寝てしまった。

次の日郵便受けに意味枚のDVDが入っていた。俺宛だからなんだろうと映像を確認して愕然とした。南那を奪われた。俺が調教している時よりも更に乱れ狂いながら男の象徴を求めていた。

黒田は直感で感じた。これは一時の気の迷いではなく本当に神崎に堕ちたのだと。なぜなら快感に溺れた表情のなかに微かに喜びが混ざっているように感じたからだ。

敗北。しかもただの敗北ではない。俺は南那に麻薬まがいの媚薬というチートまで使ったのに負けたという屈辱的完全敗北。

俺は頭の中が煮えくりかえり大声で液晶越しに神崎と南那に暴言を吐きまくった。それは正に負け犬の遠吠え。しかしそうでもしないと自分が自分でなくなるような気がした。

しかし次第に熱を帯びた怒りは氷点下まで下がりリモコンのスキップボタンで何度も何度も神崎と南那の行為を見返した。なぜ自分が負けたのか。南那を寝取り完全に優位に立った自分をどう敗北に追いやったのか分析するためだ。

そんな学者のようなことは一度もしたことがないが目に焼き付けるように徹夜で何度も見た。そして結論に至った。

火力不足。神崎はきっと夏休みに女の扱いをマスターしたのだろう。それにより技術面で俺が劣ってしまった。それに加え黒人並の一物。あれでは壊れるのではないかというサイズだ。

そして俺は組の情報網で闇の整形外科医という奴に性器の改造を依頼した。医者からは段階を踏んだ手術とサプリの服用を勧められた。そして組の凌ぎになっている風俗に入り浸った。若頭の名を使っていろんな女を抱きまくり技術を盗んだ。

そしてとうとう準備が整った。性器のサプリは神崎を超え、技術は申し分ない程になった。善は急げ。俺は南那を拉致して無理やり手紙を書かせた。後は南那が堕ちるまでヤリまくればいい。そう思っていた。

しかし南那が堕ちることはなかった。何度イカそうが何度中だし使用が何度媚薬を使おうが南那の心にはいつも神崎がいた。だから壊す相手を変えた。神崎が死ねばいい。アイツが消えたらスッキリすると。しかしまたしても自分は敗北の一歩手前にいる。

「どうした? 驚きで声も出なくなったか? 」

神崎の言葉で現実に帰る。黒田は切り札を使うことを決意する。

「まさかここに来れるなんて。仕方ないから切り札を使わせて貰うよ?」

■筆者メッセージ
まずは読者の皆さんに謝罪します。本当に遅くなってすみませんでした。理由につきましてはまず、受験に伴う通信機器の使用禁止を親に強制させられたからです。日頃ネットにかまけて勉強を怠った自分のせいです。家にはパソコンもなく更新する術がありませんでした。しかし先日ひと段落ついたため再開しようと決意しました。自分の中でも時折この小説を完結させていない罪悪感が思い起こされていました。なので勝手に執筆を辞めた自分はどう言われても構いませんでもこの作品をどうかまた読んでください。今回はもう休みません。ノンストップで投稿して完結させます。どうかまたよろしくお願いします。
カルマ ( 2016/12/06(火) 12:34 )