1話
時は流れ卒業のシーズン。周りは受験勉強に勤しんでいた。神崎は神社の一件以降コレクションを増やさなかった。
「最近新しい玩具増やしてないね。」
「突然なんだよ。」
冬休み神崎の家に居候してきた遥香はふと思ったことを口にする。
「だってつい一年前は次々と新しい娘奴隷にしてまた新しい娘ってしてたのに…なんかあったの?」
ふと涙ぐんだ由依の顔が浮かんだ。なんだか胸が苦しくなった気がした。
「別に…」
「あ…嘘ついた。」
(忘れてた…コイツ生まれつき読心術体得してるんだった…)
「何を隠して…」
「そうだ!今日の夕飯の食材を買わないといけないんだった!行ってくるわ!」
「あ!逃げた!!」
神崎はさっさと支度を済ませしつこく聞いてくる遥香を置いて外に出る。
「俺は何で逃げたんだ?」
街をブラブラとしているとき先程の自分の行動が自分で理解できなかった。遥香の言う通り確かに自分はあの場から逃げた。逃げる理由など無かったのに…。あの時の胸の苦しみを見透かされるのが…恐かったのだろうか?あの苦しみすら理解できない…
「輝!!」
懐かしい声が聞こえる。何年も聞いていなかった声だ。バッと後ろを振り返るとそこには…
「南那…か?」
あの日一通の手紙と共に消えてしまったあの南那だった。南那は誘うように手招きすると走って行く。
「なっ!待てよ!!」
角を曲がると次の角でまた手招きすると走って行ってしまう。それを何度もくりかえされたそして南那を追っている間に街から外れてしまっていた。
「はぁ…はぁ…どこ行きやがった?南那のやつ…。」
大分走った。あんなノロマな奴だったのにここまで弄ばれるとは…。南那を見失った直後に電話がかかる。
「誰からだよこんな時に…ん?公衆電話からだと?」
神崎はとりあえず電話に出る。
『神崎くーん!!?元気ー!?』
反射的に携帯から耳を遠避けた。
(コイツ!頭イカれてんのか!?ボリューム考えろよ!!でもこの声は…)
公衆電話の相手は頭が痛くなるような大声で話してきた。
『覚えてるー!?僕だよ!宮脇翔!!君のせいで全てを失った!!イェイ!!!』
(やっぱりか!でもなんだ?このテンションは?ぶっ壊れてんのか?)
『今回はね!!宣戦布告を言おうと思って電話しましたぁ〜!!』
パチパチと電話の奥から拍手が聞こえる。
「お前と遊んでる暇はない。」
『うるせぇ!ごちゃごちゃ言わずにメール送ったから見ろ!!』
(完全に情緒不安定じゃねぇか…)
神崎はメールを確認すると確かに着信があった。内容は…
『遥香ちゃんもーらい!!』
というメッセージと一枚の写真。そこには縛られた遥香と変顔Wピースの翔が写っていた。
「どお?よく撮れてるでしょ?」
「お前…死にたいのか?…」
神崎の声色が急激に低くなる。その額にはびっしりと血管が浮いている。
「電話越しに恐怖が伝わるよぉ…いいねぇ…返して欲しかったら一人で僕たちの所においでよ…場所は後で送ってあげる…」
翔はそう言うと電話を切った。神崎はもう一度よく写真を見る。
「くそっ!…遥香……」
神崎は強く握り拳を作ると壁に打ち付ける。