5話
「くそっ…玉がいたい…」
翔はゲームの後ゆりあに全てを搾り取られた。咲良たちはまだ行為をしている。一人深夜に帰るのは心底寂しさを感じた。まるであの時の夜のようだ。
全てを失ったあの夜倉庫で気が付くと一人だけだった。側にはコンビニの買い物袋と置き手紙があった。その手紙には『お前に合わせる顔がない。裏切って悪かった。一応適当な食べ物と飲み物を買っておいた。本当にすまない。』と書かれていた。翔は読み終えた瞬間袋の中の物をやけ食いすると大泣きした。幼児の時よりも大泣きした。何も無いことの辛さと寂しさが後からどんどん沸き上がってくる。何とか泣き止んで帰宅してもそこにはいつもの家は無かった。外見が同じでもそこにある家は今朝の家とは違って見えた。家に入るといつもの妹の出迎えはなかった。咲良はリビングでお菓子をたらふく側に置いて真っ暗な部屋で大好きなアニメを見ていた。
「ただいま…帰ってたんだね…」
「……死ね。」
翔の言葉に咲良は顔も合わせずボソッと返した。翔は自室に駆け込むとまた泣いた。その日は一睡もせずに泣き続けた。
「なぁ!そこの君!…泣いてる君だよ!」
翔は突然誰かに呼ばれた。振り返ると浴衣姿の男がいた。そしてどうやらいつの間にか泣いていたようだ。
「何ですか?」
「何故、神崎輝の家にいた?」
「神崎を知っているのか?」
「俺が質問している。質問で返すな。」
(なんだコイツ?神崎を知ってるみたいだけど…)
翔は少し考えてから口を開いた。
「神崎のしょーもないゲームに付き合わされたんだ。」
「なるほど…弱味を握られて使いやすい奴隷にされたか…」
「うるさい!用がないなら帰るぞ!」
「待てよ…今の状況を壊したいだろ?」
翔は帰ろうとすると男の言葉を聞いて立ち止まる。
「そんなこと…無理だ。」
「お前みたいにごり押しで勝とうとするから負けるんだよ、宮脇翔…」
「何で僕の名前まで!」
「今泣いてたのもその時を思い出していたからじゃないのか?…図星だな?」
的確にあてられ何も言えなくなった翔を見て男はいった。
「俺には緻密な策も最強の後ろ楯と切り札がある。きっと前のお仲間も俺が話せば帰ってくるぜ?」
翔はそんな夢のような話があるのかと思った。
「俺の仲間になりたいか?」
「なりたい!…です。」
翔は即答した。どんなことをしても神崎から全てを奪い返したかった。
「でもなぁ…今のお前じゃあ足手まといなんだよなぁ〜!」
「そんな!どうすれば!?」
男の顔が至近距離に来る。相当怖い。
「そうだなぁ…俺がプランした特訓に付いてこれたら仲間にしてやる。」
「頑張って特訓します!」
「もしかしたら頭ぶっ飛んじゃうかもしれないよ?」
「耐えます!」
「良く行った!それでこそ男だ!!」
男は翔と強引に握手する。
「俺のアジトに案内してやる!さぁ行こうぜ!」
男は翔と肩を組んで歩く。
「あの…あなたのお名前は?」
翔は名前を聞くと男は立ち止まりこう言った。
「俺の名前は…黒田仁だ。」