第7話
ほとんどの店を見て回ったくらいで時計を見ると、夜7時を過ぎた頃だった。
あんまり遅くなりすぎると良くないのでそろそろ出ようかと思った時、飛鳥が恥ずかしそうに聞いて来た。
飛鳥「あの、良かったら、最後にあれ撮らない?」
蒼「あれって、プリクラ?」
飛鳥「うん。」
飛鳥が指をさした方向にあったのは、プリクラ機だった。僕も何度か見たことはあったが、実際に撮るのは初めてだった。
蒼「良いけど、僕撮ったことないだよね。」
飛鳥「大丈夫。私やり方わかるし。ほら、行こ?」
そういって飛鳥は僕の手を引く。思わずドキっとしてしまった。
プリクラ機の中に入ると、飛鳥は慣れた手つきでボタンを押していく。撮り終わるまで一瞬の出来事だったが、終始僕は飛鳥の真似をしながら機械の指示に従っていた。
印刷された画像を見て、飛鳥が大爆笑している。
飛鳥「きゃはは。蒼くん、めっちゃぎこちない。」
蒼「ほんとだ。顔引きつってる。なんかやだな。とかいって飛鳥も1枚目瞑ってるじゃん。」
飛鳥「う、うるせぇ!これでも緊張してたの!」
蒼「はいはい。それじゃ、そろそろ出よっか!」
飛鳥「そうだね...。」
そういった飛鳥は少し寂しそうだった。
ショッピングモールを出ると、外はすっかり真っ暗だった。駅の周辺は街灯が立ち並び、より一層華やかさを増していた。
自転車を押しながら、僕は飛鳥の歩くスピードに合わせて歩いていた。こんな風に女の子と2人きりで遊んだのはいつ以来だろう。女の子と遊ぶタイミングは何回かあったものの、それはいつも圭介や他の男子が一緒だった。
周りからしたら、僕らはカップルに見えるんだろうか。そんなことを考えていると、飛鳥が口を開いた。
飛鳥「今日は、ありがとう。」
蒼「ううん。俺も楽しかったし。」
飛鳥「私、本当は不安だったの。今の時期に転校なんて、あんまりないじゃん?だから、今更クラスに馴染めるのかなって。でも、蒼くんやまいやんが話しかけてくれて、嬉しかった。」
僕は、教室に入って来た時の彼女の表情が、不安から来たものだったのだと気付いた。誰しも自分がその立場なら不安になるだろう。
蒼「僕も、飛鳥と話せるよーになってよかった。まさか、初日でこんなに打ち解けてくれるとは思わなかったけどね。」
飛鳥「私も。蒼くんは優しい人そうだなって思ったら、なんだか安心しちゃって。」
蒼「なんか照れる、でもありがと。」
飛鳥「明日からも宜しくね?蒼」
蒼「あ、初めて呼び捨てで呼んでくれた。もう一回呼んで。」
飛鳥「一回しか言いませんー。」
蒼「ちぇ。ま、いいや。こちらこそよろしくね。」
そんなやりとりをしてるうちに飛鳥の家に着いた。
飛鳥「それじゃ、私の家ここだから。また明日ね。」
蒼「うん、また明日ね。おやすみ。」
飛鳥「おやすみ。」
飛鳥は、小さく手を振りながら、家の中へ入って行った。僕は彼女が中に入ったのを確認した後、自分家に向かって自転車を漕いだ。