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「で、なんで俺達はここに来てんだ?」
「夏と言えば海だろ」
隣に座っている一馬は当たり前と言わんばかりの顔で俺を見ている。意味が分からず俺は何気なく眼前に広がる海を眺めた。綺麗に光り輝く波が陽の光を浴びて、海全体が大きな宝石箱のように輝いていた。
(しかし・・・・・・暑い。場所が場所なだけに仕方ないんだろうが)
俺達がいるのは、海岸沿いの防波堤の上。座っている尻も暑いが日陰もなく頭も暑い。いや、寧ろ全身がくまなく暑いと言った方が正しいのかも知れない。
「暑いぞ、まこちゃん」
「暑いよ、誠くん」
何故か俺に文句を言う一馬を真似てか、飛鳥ちゃんも俺に文句も言ってきた。
「ここに来たのはお前だろ! ばかずま。飛鳥ちゃん、俺も被害者だよ」
そう、これは俺のせいではなくて一馬のせいだ。
「そうだったね。暑いよ、ばかずまくん」
「齋藤までそんな事言う? って怒ると余計に暑い」
立ち上がって反論した一馬はまたすぐに座りなおした。
「泳ぎたいな、まこちゃん」
「いきなり何を言い出すんだよ、お前は」
「夏と言えば海! 海と言えば海水浴! そして、水着美女だぁぁ!」
拳を掲げ立ち上がった一馬は、海に向かって叫びだした。
(恥ずかしい奴だ。周りの人が何事かとこっち見てるじゃねぇかよ・・・・・・他人のふり出来ないのが辛いところだ)
好奇な目から逃げる様に俺はゴロンと寝転がった。薄い制服のシャツ越しに陽の光を目一杯に浴びた防波堤の熱が背中に広がった。
「はぁ、花火してぇな」
(・・・・・・何なんだよ、お前のテンションは)
「いいなぁ、花火。私もしたい」
一馬の意見に同調して、俺の顔を覗き込む飛鳥ちゃんの顔はどこか楽しそうだった。
「おっ、さすがは飛鳥嬢。話が分かるねぇ。・・・・・・それに引き換え、お前さんのカレシは乗り気じゃなさそうですな」
「だねぇ〜、寂しい限りだよ」
そう言って楽しそうに笑い合う2人を見て、なんとなく疎外感を感じてしまう。
(一馬の顔は悪くない。いや、昔からかなりモテた方だった)
中学時代から今まで特定の彼女を作らない一馬は色々なウワサがあった。実は男が好きだとか、本命が他にいるとか。
(やっぱり、客観的に見ても一馬と飛鳥ちゃんはお似合い。・・・・・・俺なんかよりもずっと)
去年の一時期、そう言うウワサもあったくらいだ。お互いが意識してない訳はないだろう。
(それに比べて、俺には何も取り得はない。顔も勉強もスポーツも。何もかも平凡だ。平凡の中の平凡)
熱い背中に反比例して俺の心はどんどん温度を無くしていく気がしていた。