07
いつもの朝。
規則正しく鳴り響く電子音と揺れている僕の身体。
「・・・史緒里?」
ベットの淵に腰掛けるようにして、僕の身体を揺すっている史緒里が恥ずかしそうに目を細めて微笑む。
「もう、朝か・・・じゃ、すぐに――んっ」
不意に視界が暗くなり、次いで甘い匂いが鼻腔を擽り、柔かい感触が唇に広がっていく。
「史緒里・・・」
恥ずかしそうに目を逸らしていく史緒里を僕は抱きしめた。
驚いて目を丸くしている史緒里だが僕の腕に手を添えていく。
「おはよう」
頷きながら僕に身体を預けてくる史緒里。
史緒里はまた喋れなくなってしまった。理由なんて分からなかったけど、僕は何故か悲しくはならなかった。
史緒里は笑っていたから。
その笑顔は、今まで見たどの笑顔より綺麗で輝いていたから。
きっと、父さんと義母さんが与えてくれた贈り物。
そう、史緒里の笑顔が教えてくれているようで、僕も自然と笑顔になっていた。
言葉にするにしても上手く表現出来なくて、でも言葉にしたくても、出来ない想いもある。
史緒里が教えてくれた大切な事。
僕の気持ち、史緒里の気持ち。
大切な家族。
大切な人。
大切な・・・
僕達の時間は始まったばかり。ゆっくりと、優しく言葉にして想いを伝えよう。
いつかまた史緒里の言葉を聞く、その日まで。だから僕は言葉にするんだ。今の気持ちを。
「史緒里。愛してるよ」
ゆっくりと唇を重ねた僕を史緒里は優しく微笑み、包み込んでくれた。