battle1
finish
俺もついにかつてのチームメイトと戦うことができると思うとわくわくが止まらなかった。
しかし、準決勝の会場に翼の姿はなかった。
この前日の出来事が今の翼の状態に結びつくことになる。
準決勝前夜・・・
翼は予選を終えて寮へ戻ってきた。
LINEを見ると友梨奈から
「もうだめだ。」とメッセージが来ていた。
急いで電話を掛けた。
「友梨奈、どこにいる?」
「ごめん翼、私もうだめだ。身体もメンタルもボロボロだよ」
「迎えにいくからどこだ!」
すると位置情報だけ送られてきて電話が切れた。
ここから近い。
思った時には荷物を置いて走り出していた。
外は雨が降っていた。
東京の雨より冷たい。俺は友梨奈の気持ちをなんにもわかってやれてなかった。
俺はあいつの笑顔で何度救われたか。今度は俺が。
息を切らしながら走る。
10分ほど走ると友梨奈の姿を見つけた。傘もささずに歩いていたのだ。
「友梨奈!!」
こっちを向いた友梨奈の目に生気を感じられなかった。
駆け寄り上着をかけてやる。
「大丈夫か?友梨奈」
「ごめん翼・・・私・・」
「もうなんも言うな。友梨奈は頑張った。」
「頑張った・・・何をがんばったんだろう私は・・」
「友梨奈?」
「いくらがんばってももうだめだよ。才能がないんだ。翼とは違うんだよ。」
友梨奈は再び走り出した。
追いかけるように走る。
交差点に差し掛かる。
信号は歩行者が青
当然友梨奈は渡る。しかし
信号無視の車が走ってきた。
気づいてないのか・・・
試合の疲労感なんか関係ない。ただ目の前で大事な人を亡くしたくない。
それだけが翼の足を動かした。
接触直前友梨奈を車の前から飛ばして代わりに翼の目の前に車が・・・
「やっべ。」
「翼?」

どん!と身体に衝撃が走る。。
気づいたら翼の体は病院に運ばれていた。
どうやら通報したのは友梨奈だったらしいが翼の現在の記憶の中に友梨奈の存在はいない。

意識が戻ってから一週間、骨折していた右足のリハビリが始まっていた。
「ゆっくりでいいからね」
1.2。1.2.リハビリ専門の先生の声掛けに合わせて歩く。
久々に体を動かすとなかなかしんどい。
「よし、いったん休憩しようか」
俺は椅子に座り息を整える。
「おつかれさん」
横からペットボトルを差し出された。
「あ、どうもです。」
一週間経ったが翼の記憶はまだ戻っていない。

第一部〜完〜

■筆者メッセージ
第一部完結です。
好評であれば続編を考えたいと思います
ここまでお付き合いありがとうございました
シベリアス ( 2018/07/11(水) 22:13 )