TAKE1
give me
俺は西條翼。今年から高校二年生になる。中三からの二年間ドイツのドルトムントでサッカー留学をしていた。そこで終生のライバル ドイツの若き至宝 ミヒャエル・シュナイダーと出会った。そして互いに認め合い一旦俺は母国へ戻り
力をつけてトップチームで再会しようと約束を交わした。
そして現在、東京で新しい家族と過ごしている。
少しずつだが日本の生活にも慣れてきたがイマイチ新しい姉妹との距離感が縮められないのが今悩みのタネだ。
リビングへ向かうとちょうどみんなの姿があった。
「おはよう翼」
相変わらず寝癖が爆発している親父をみて今日も平和だ。と思えた。
「おはよう翼君」
新しい母親だ。前の母親に比べると料理も上手で親父の扱いも上手だ。
まだ君づけされてはいるが時間とともに解決させるだろう。
「おはよ」と目をこすりながら答える。
用意された朝食を食べていると横から顔を覗き込むように
「おはよう翼!」と至近距離であいさつをされた。
これが新しい姉の奈々未だ。
容姿端麗 眉目秀麗この人ほどこの言葉が似合う人はいないと思う。
ただ、距離が近い。俺だって男だ。多少の照れだってある。
前の姉と性格が真逆であるためギャップを感じはするが嫌な気持ではない。
「おはようございます。奈々未さん」
すると姉は不服そうな顔をして
「ねぇ?いつまで敬語なの?それに姉弟なのにさんづけってどうなの?」
確かに端から見たら姉弟間で敬語はおかしい。でも血のつながってない。それが俺の中で微妙な距離感を生んでいる。
「ごめんなさい。もう少し時間をください。そのうち慣れると思います。」となんとなくごまかし、その場を凌ぐ。
腑に落ちない顔をしながらもせっせと準備をしてそそくさと大学へ行ってしまった。
時計をみると丁度よい時間だ。
準備を済ませ玄関へ向かうと
妹の飛鳥がちょうど出ていくタイミングだった。
朝食の時も言葉は発さずにぺこりと頭を下げ何事もなかったかのように食事を続けていた。
今年高校入学を果たした妹は俺と同じ学校に
通うのだが一緒に登校するなんてことはないんだろうなと思う。
親父の話曰く極度の人見知りで打ち解けるのに一年を要したと言っていた。
まだ二週間の俺が打ち解けるのは無理な話だ。時間をかけて最低限の関係を築ければいいなとは思う。
さて、俺もいかないと。一息おいて
「いってきます!」とリビングへ一言
すると「いってらっしゃい!」と母と親父の声が返ってくる。
このコール&レスポンスが当たり前ではない。
俺はありがたみを感じながら家を出た。

外では桜の花びらが散って風に吹かれ舞い始めなんとも幻想的な景色を作り出していた。
家から学校へは徒歩で10分ほどだ。通学路は春は桜 秋はいちょうの名所として知られる道を通っていく。

シベリアス ( 2018/04/26(木) 00:50 )