21話
「飛鳥帰るぞ!!」
「ごめん響、教室に忘れ物したから、ちょっと待ってて」
体育祭も終わり、半分以上の生徒は下校し、静かな校舎の中を走り、2年4組の教室に向かった。教室にたどり着くと、湊が教室から出てきた。
「何してるの飛鳥?」
「いや、忘れ物して」
「そっか、気をつけて帰れよ。じゃあな」
「うん、バイバイ湊」
私は教室に入り、自分の席へと向かう。すると、私の机の上には忘れ物の他に、長方形に小さく折りたたまれた布が置かれていた。私は、その布が何か気になり、広げてみた。するとそれは、先ほどまで行われていた体育祭で使用されていたであろう、ハチマキだった。
だが、このハチマキ私のものではない。では、一体誰のものなのだろうなどと考えていると、このハチマキが置かれてあった場所に正方形に折りたたまれた小さな紙切れが置いてあることに気づく。
私はその紙を広げると、そこには文章が書かれていた。
〔 飛鳥へ
今日のリレーの時はありがとう。
最後の最後で飛鳥のでかい声援のおかげでリレーで勝つことができた。
本当は昨年渡したかったんだけど、そのハチマキ貰って欲しい
今日はありがとう。 湊 〕
私は驚きを隠せなかった。湊は知っているのだろうか、この学校のジンクスを。ハチマキを渡すことの意味を。
「でも、もう遅いよ…」
この小さな呟きが誰かの耳に届くことはなかった。