2章
8話
「家に帰るまでが遠足だからな。気を付けて帰れよ!」

設楽先生の話も終わり、この日は解散となった。校門を出て、家に向かって歩いていると、後ろから頭を叩かれた。振り返るとそこには飛鳥がいた。

「なにすんだよ飛鳥」

「べつにいいじゃん。そんなことよりこれから用事ない?」

「ないけど」

「そうか、じゃあそんな暇な湊には、この飛鳥ちゃんと帰る権利を与えよう」

「はぁ?てか成瀬君は?」

「バスが渋滞に巻き込まれて、こっちに戻るのに時間かかるから先に帰っていいよってさっきLINEがきた」

「そっか」

「だから暇な湊と帰ってやる」

なぜか上から目線の飛鳥に逆らうことこともできず、一緒に帰ることになった。話の中心は、もちろん本日の遠足のことだ。

「そういえば、湊イルカショーでずぶ濡れになってたね。あれは笑った」

「うるせー。でもあんなずぶ濡れになるとは思ってなかった」

「でもよかったね」

「何が?」

「タオル貸してくれる女の子がいて」

「はぁ?」

「ねるのこと好きになった?」

ニヤニヤしながら、飛鳥は顔覗き込んでくる。

「べつにそんなんじゃないし」

「そんなこと言って、タオル貸してもらったとき満更でもなそうな顔してたくせに」

「してない!」

「あームキになった。さては図星か?」

飛鳥はこちらを指さしながらニヤニヤしながら、こちらをからかってくる。

「長濱のことをそんな風に見たことはない」

「ふ〜ん、じゃあ他にタオル貸して欲しい人でもいたの?」

飛鳥の質問の答えに戸惑う。ここで本心を言ってもいいものか。だが、ここのままではまた後悔する気がした。だから意を決して飛鳥の質問に答えることにした。

「どうしたの湊?急に黙り込んで」

「あのさ飛鳥、おれがタオルを貸して欲しかったのはさ・・・」

次の文字を発そうとしたその瞬間だった。

「あっ!!!お兄ちゃんそれに飛鳥ちゃん!」

急にした声に驚き、声のした方を見ると祐希がこちらに大きく手を振っている。そして祐希は走って駆け寄ってきて飛鳥に抱きつく。

「飛鳥ちゃ〜ん!!」

「祐希!元気だったか?」

飛鳥は祐希の頭を撫でている。

「うん!飛鳥ちゃんこそ元気だった?」

「元気だぞ!祐希に会えたしな」

飛鳥の言葉を聞き、ますます嬉しそうする祐希。

「そういえば湊、さっきなんて言おうとしたの?」

「べつに、なんでもない」

「ふーん、まぁいっか。祐希帰るぞ!」

大きな声で「はーい」と返事をする祐希。そしてこの後3人で話しながら家路についた。



■筆者メッセージ
久々の更新です。
更新できていなくて申し訳ございませんでした。
これからはできるだけコンスタントに上げることができるよう努力していきますので、これからも何卒よろしくお願いします。
アゲハ ( 2019/01/08(火) 20:19 )