1章
3話
担任の設楽統先生の号令によって朝のショートホームルームは始まった。設楽先生の担当科目は国語だ。生徒の話を親身になって聞いてくれて、生徒から人気のある先生の1人だ。社会の日村勇紀先生と仲が良いらしい。

連絡事項などが伝えられ、ショートホームルームは終わった。一限目から四限目までの授業は睡魔と闘いながらもなんとか乗り切きることができた。途中の休憩時間に齋藤に話しかけてみるも、反応すらしてもらえなかった。

昼休憩になり、京介と一緒に学食で昼食をとっていた。

「おまえ本当に心当たりねぇの?」

「ないよ」

「今日のおまえ、かわいそうを通り越して、もう笑える」

「笑いごとじゃないよ」

「まぁ理由わかんないなら、もう本人に聞くしかないじゃね?」

「それができたら苦労しないよ」

「それもそうか」

昼食を終え、五限目は化学の授業のため、京介と一緒に化学教室へと向かった。今日の授業は実験のため、隣席の人とペアとなり実験の行うのだが、教室が違うとはいえ座席の順番は変わらないため、当然のことながらペアは齋藤だ。

実験は終始無言で進んでいく。前の席を見ると、京介は隣の席の小池美波と楽しそうに話しながら実験を行っていた。正直、京介が羨ましかった。この気まずい空気を換えるために、勇気を出して齋藤に話しかけるてみることにした。

「あの、齋藤さん」

すると齋藤はこちらを鋭い目つきで見てきた。

「いや、なんでもないです」

齋藤の視線の鋭さに負け、話すのは諦め、その後も齋藤と無言で実験を続けた。



アゲハ ( 2019/01/08(火) 18:27 )