本編
贈り物
明音の体調はすぐに良くなった。会社でも今までと変わらずにテキパキと仕事をこなしている。
しかし、今までとは違うことがあった。

12時になると、ちらほらと仕事を昼休みにする人が出てくる。今日も例外ではなく、その様子を明音は確認すると、携帯を手にとった。

総一郎の机でバイブがなった。彼はパソコンから目を離すと携帯を手にとった。明音からだ。その名前を確認すると、彼は周りから隠すようにそのメッセージを見た。
仕事もちょうどきりがいい。総一郎は明音にメッセージを返信した。

「じゃあ、行こっか」

総一郎の背後で声がし、彼が振り向く。すると、笑顔で彼を待つ明音がいた。総一郎は持ち運び用の手提げを持つと、明音とともに昼の街へとくり出していった。

今日も寒い。季節外れの粉雪が降っているほどだ。総一郎は手をさすった。明音は彼に寄り添うように、幸せそうな顔で歩いている。彼は苦笑い半分、にやけ半分な顔で街を歩いている。街ゆく人からしたらまるでカップルのようだった。
いつもの交差点に着いた。普段なら右に曲がる牛丼屋に続くこの道を総一郎は震える足取りで直進した。明音が不思議そうに首を傾げる。

「あれ、道違わない?」

「いえ、いいんです」

総一郎が明音の腕を掴む。これも珍しい。明音の目は丸く、これから何が起こるのか分かりはしなかったが、期待で輝いていた。
今日、総一郎はいつにも増して無言だった。
明音といて緊張しているからではない。ここ二週間、明音とともに昼ご飯を食べに行ったり、話したり、よく絡んでいた。
数分後、ふぅ、と総一郎は息を吐き、立ち止まった。明音と総一郎の目の前にはこじんまりとしたイタリアンレストランが建っている。彼がやっとの事で見つけたレストラン。

「高柳さん。ここ、美味しいんですよ?」

「そうなの!? 楽しみだな」

総一郎がレストランのドアを開く。中から暖かな空気が流れてきて、冷たくなった手を温めた。流れるような接客でテーブルに着くと、明音はお冷を一口飲んだ。

あの日の約束。総一郎はずっと考えていた。明音をイタリアンレストランに連れて行く、という約束を。

「総一郎君は何にするの?」

明音がお冷を一口飲んだ。

「そうですね……表に書いてたランチセットにします。高柳さん、なんでも頼んでください。僕が奢りますから」

「うぅ、じゃあお言葉に甘えちゃおうかな! 私もランチセットにしよう」

「店員さん? いいですか?」

客は2人しかいない。店員は頷いて、総一郎の注文をメモした。
お冷を飲みながら、明音はキョロキョロと店内を見回す。こんな店に来たことも、総一郎が連れて来てくれたことも、彼女にとっては新鮮だったのだ。厨房から漂ってくる美味しそうな香りも彼女の感情を高ぶらせた。

「高柳さん」

「どしたの?」

総一郎は手提げから細長い箱を取り出した。真っ白で、高級感のある箱だ。

「開けて見てください」

そう急かされ、明音は恐る恐る箱に手を伸ばした。そして、ゆっくりと開ける。中身を見た明音の顔はぱあっと明るくなり、頬が紅く染まった。

「わ、これ……ペンダント!」

「高柳さん、えっと、付き合ってください!」

少々の間。突然の出来事に明音の頭は追いつかなかった。



「……喜んで」

俯いて恥ずかしがる明音。そんな彼女を捉える総一郎の瞳は大きくなっている。


「いいんですか……?」

「当たり前だよ。ねぇ、このペンダントつけてよ!」

先に小さく輝くダイヤのついたペンダント。実は総一郎の貯金をはたいて買ったものであり、何日間も宝石店に通い詰めて選んだものである。

震える手で総一郎が明音からネックレスを受け取る。明音の背中に周り、それを首に回した。緊張からか、なかなかつけられない。そんな総一郎との時間を明音は幸せそうな笑みを浮かべながら感じていた。

■筆者メッセージ
次で終わりです。
更新遅れてごめんなさい。
ちょっと無理やりすぎましたかね…?
ちゅりさん、可愛いです。
公演で必殺技「ファイヤーワイヤーファイヤーちんたらぽんたらちんたらぽんたらてぃやぁぁあああ」を披露したそうですね(笑)
僕もよく分かりません(笑)
インスタントラジオ ( 2014/03/18(火) 23:28 )