81 Storys 〜ジュピター〜
乃木坂46の冠番組を収録するため、メンバー達は控え室でメイクアップをしている。着替えが終わっているため、晃汰は部屋の傍に置いてあるパイプ椅子に腰掛け、スマホを弄っている。
「何してるんですか〜?」
甘い声を振りまきながら晃汰に近づいてきたのは、山下美月だった。
「ん?SNS更新しようかなーってしてんの」
晃汰は山下にスマホの画面を見せた。
「あ、じゃあ私載せてくださいよ!晃汰さんが好きな、セーラームーンのポーズとりますから!」
山下はそう言って、なんと台詞まで込みのセーラームーンのポージングを惜しげもなく披露した。
「ん〜、一人だと何か違うんだよなぁ。あ、チームセラミュの方々がいらっしゃるじゃないの」
そう言って晃汰は山下の手を引き、ミュージカル・セーラームーンに出演した面々を集めて回った。そしてそれは、連中のまだ癒えていない傷に触れることでもあった。
「雷と勇気の戦士がもう一人足りねぇや…」
能條の後ろ姿を思い出しながら吐き捨てた晃汰は、熱くなる目頭を押さえて天を仰いだ。そんな彼の仕草に気づいた高山は、そっと晃汰に歩み寄った。
「みんなで写真撮ってさ、じょーに送ろうよ!」
晃汰の肩をバンバン叩きながら、高山は再び戦士達を並ばせてポーズを決めさせた。能條が入るべき場所に晃汰が入り、10人が揃って写真に収まった。撮影はスタイリストが買って出た。
「てか、晃汰めちゃくちゃ決めてるじゃん」
井上が、保存された画像を見ながら晃汰のポーズを笑う。
「いや、本気でやらないとじょーさんの彼女のかずみんさんに怒られると思って」
「あーなにそれ!まだその弄り方する訳!?」
満更でもなさそうに、高山は晃汰の身体揺らす。
「え…高山さんと能條さんてソウイウ関係だったんですか…?」
神妙な面持ちで、伊藤理々杏は周囲を見回す。これにはさすがにヤバイと感じた晃汰は、すぐさま彼女の誤解を解いた。
「やれやれ…」
やっとの思いで座っていたパイプ椅子に戻ってきた晃汰は、また椅子に自身の身体を委ね、天井を向いてスマホを弄る。
そんな時、またもや一人のセーラー戦士が晃汰を見下ろす。
「今夜、3期の成人メンバーで飲みませんか?私も晃汰さんと飲んでみたかったんです」
晃汰のペースを丸無視して、梅澤はかなり強引に彼を誘う。そんな梅澤の積極性に若干引いた晃汰ではあったが、手帳を確認してから首を縦に振っていた。
「時間と場所決まったらLINEしますね!」
語尾にハートがついてしまうのではないかと言う程に、梅澤は乙女丸出しで晃汰の元を去っていった。
「モテ男は辛いね」
そんな二人のやりとりを見ていた生田が、晃汰に声をかける。
「いくおさんには負けますわよ」
涼しい顔で、晃汰は生田に答えた。対する生田は悪そうな顔をして、晃汰に無言で答えるのであった。