AKBの執事兼スタッフ 2 Chapters











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第8章 48or46
74 Storys 〜Black Curtain〜
「なんだ?これは」

 必死に晃汰をAKBに戻した役員、横山と名乗った男は、目の前に置かれた二通の封筒を見る。

「書いて字のごとく、辞表です」

 膝に置かれた拳をそのままに、晃汰は横山を睨むように眼を細めた。

「こちらの環境に何か不満かな?」

 横山は、さも自分に落ち度はないと言わんばかりに、晃汰の主張を笑顔で交わす姿勢だ。

「いえ、それはないです。ただ、僕はもうギタリストであり作曲家です。僕を求めてくれる所でしか、働きたくありません」

「同じく、丸山と同じ所でしか働く気はありません」

 ブラックスーツに黒縁メガネといった出で立ちの竜恩寺も、晃汰を援護射撃する。

「君たちには期待しているよ。次の曲は君たちと決めていたんだが・・・」

「それは、僕たちの“名前”が欲しいだけですよね?」

 晃汰の切り返しに、横山の眼が鋭くなる。そして暫くの沈黙が続く。晃汰と横山は視線をぶつけたままである。

「ここを辞めてどうする?AKBを“辞めさせられた”人間を何処が拾うっていうんだ」

 青年二人の主張を、横山はあざ笑う。

「ハローワークで良い再就職先があったので、ソコに再就職します」

 余裕の表情で、晃汰は竜恩寺を横目で見ながら答えた。

「それより・・・」

 晃汰は更に続ける。

「NGTの件、末端の僕が言うのもお門違いかと思いますけど、最後までキチンと最後まで対応された方がいいですよ。じゃないと、信用とメンバーが逃げていきますよ」

 晃汰の言葉に、竜恩寺はせせら笑う。対する横山は眼を血走らせている。

「退職金はいらないので、今日付で退職します。短い間でしたがお世話になりました」

 そそくさと立ち上がり、晃汰と竜恩寺は横山に頭を下げた。そして役員の反応を拝むことなく部屋を後にしようとした二人だが、扉の手前で立ち止まり振り向かずに横山に忠告をする。

「まさかとは思いますが、週刊誌なんかに僕らの私生活なんやらを売らないように。それをした瞬間、僕らはあなただけではなく、黒幕の根源を消さなくてはならなくなってしまう・・・そんな手荒な真似はしたくありません」

 それだけ言い残し、晃汰と竜恩寺は部屋を出た。残された横山は老眼鏡を外して目元に手をやった。AKB復活つ欠片をいっぺんに失った横山は、ひどく肩を落とすのであった。

 ビルを出た晃汰と竜恩寺はネクタイを緩め、無言で拳を合わせた。

「祝杯あげにいくか」

「だな、行こうぜ」


 まだ昼下がりだと言うのに、執事二人は行きつけの居酒屋を目指して秋葉原の街を歩いた。


Zodiac ( 2019/06/27(木) 21:35 )