65 Storys 〜黒い情報交換〜
「なるほどね、もうトップシークレットになってるのか」
ミルク多めのカルーアミルクを口に含み、晃汰は左隣に座る京介に目線を合わせた。
「組織としては内々に終わらせたがってるけど、真帆さんがあれだけ外部に発信しちまってるんだ…もうマスコミも悲劇のヒロインに祭り上げるだろうし、手遅れってことよ」
京介はそう言い切り、レッドアイを豪快に飲み干した。
乃木坂46の晃汰とAKB48の京介は、深夜零時前に行きつけのバーで密談を交わしていた。彼らの近所にあるこの店は、二人の父親の代からの馴染みで会員制となっている。大きな声で話せない話題を扱うにはもってこいのこの店を、晃汰は京介との情報交換の場に選んだ。
「で、凄い面白い話があるんだ」
悪戯っ子のような目で、京介は晃汰を見た。
「恐らく組織は事を内密に収束させようと動くと思う。ただ、それは裏目に出るのが丸見え、世間からの目が一気に冷たくなるだろう。そこで、名誉挽回の“何か”が欲しいんだ。人気を取り戻す、“イコン(象徴)“がな」
「それが、スーパーギタリストの電撃復帰って訳か」
晃汰の鋭い答えに、京介は指を鳴らして二杯目のレッドアイに手を伸ばす。
「京介、俺は…」
「大丈夫、分かってる。ただ、やっぱりお前とまた仕事がしたいよ…」
晃汰はその時、京介の孤独感を初めて見つめることとなった。
「まぁ黒い話はさておき、お前最近、咲良とどうなのよ。上手くやってんの?」
テイストを変えてカシスオレンジを頼んだ晃汰は、気晴らしに京介へ恋愛話を持ちかける。
「まぁな。アイツが韓国でやって行くって言った時はどうしようかと思ったけど、蓋開けてみたら殆どこっち(日本)にいるしな。お前こそ、まどかと続いてんのかよ?」
京介は、既に三杯目のレッドアイを舐めながら、晃汰に返す。
「最近、全然会ってねぇんだよな〜。そろそろ病気になりそう」
そう言って晃汰は苦笑いをし、肩をすくめた。
その後、久し振りの盟友ということもあって、二人は限界に達するまで飲み明かしてしまった。彼らをよく知るマスターの計らいで、ボックス席で何時間かの仮眠を二人は取ることができた。そして重い頭と身体を引きずり、晃汰と京介は出勤するのであった。