AKBの執事兼スタッフ 2 Chapters











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第8章 48or46
64 Storys 〜一報〜
仕事がひと段落してスマホを眺めていた晃汰は、思わずその記事を眼を見開いて読んだ。その記事は、晃汰の元同僚であった人物達の名前がうたわれており、そしてそれは晃汰の眼を背けさせるには充分すぎるほど強烈なものだった。

「嘘だろ…」

晃汰はすぐにある人物に電話をかけた。小さい時から知っていて、今も“あっち”サイドにいる人間であった。

「記事見た。お祭り騒ぎか?」

数コールで出た懐かしい声に、晃汰は皮肉たっぷりのジョークを浴びせた。

「革命どころじゃねぇな…ちょうど緊急会議が終わったとこだった。またすぐに会議あるけど」

渇いた声で、京介は親友に答えた。まだ48グループに籍を置いている彼は、世間や晃汰が知るよりも確かな情報を掴んでいるのだ。

「夜空いてるか?いつものとこで…」

ひとつトーンを下げた晃汰は、京介を夜の街に誘った。

「空いてなくっても来いっていうだろ。22時には着けるから先入っといて」

そう言って京介が一方的に通話を終わらせた。ホーム画面に戻ったi phoneXSをそっと目の前の机に置き、晃汰は腕を伸ばした。

「竜恩寺か?」

彼の隣に座る徳長が、パソコンから目線を外さずに彼に尋ねる。

「ザッツライトです。なんだかこっち(46)も忙しくなりそうですね」

苦笑いを浮かべながら、晃汰は缶コーヒーを口にした。

現役アイドルがファンの男達に、自宅の玄関先で暴行を加えられるという痛ましい事件が起きた。そしてその被害者が、晃汰がかつて所属していた48グループ系列のNGT48・山口真帆であった。在籍中に何度かの交流があった晃汰であったが、連絡先を知らないが故に意外な人物に連絡を試みた。

「このタイミングで連絡が来るってことは、記事見たってことでいいよね?」

名探偵のような推理で晃汰の思惑を察したのは、NGT48の兼任でお馴染みの柏木由紀だ。

「お久しぶりです…の前にご名答です。こっち(46)としてはまだ公式には動いていないですけど、留学生として早く確かな情報がほしくて…」

「ごめんだけど、私も殆ど東京にいて新潟の方には行けてなくて。あっちであんな事になってたなんて知らなかった」

電話越しからでも分かる声の低さに、晃汰は柏木の心中を察する。

「そうですよね…お忙しいところ申し訳ないです、また何かあったら教えてください」

晃汰はそう言って電話を切り、再び椅子にもたれかかった。

晃汰との通話を終えた柏木は、画面のまだ明るいスマホをグッと胸に押し当て、怒りに震える手を必死に落ち着かせようとしている。

『誰がこんな事を…』

アイドルを愛し自分を理想のアイドル像に近づけようとしている柏木にとって、今回の事件は温厚な彼女を怒らせるには充分すぎるほど卑劣で残酷なものだった。

■筆者メッセージ
シリアスに、まほほんの事件について触れたいと思います。
Zodiac ( 2019/05/30(木) 22:00 )