AKBの執事兼スタッフ 2 Chapters











小説トップ
第5章 47人目のギタリスト
47 Storys 〜観戦〜
 大阪公演の二日目。 大阪城のすぐ近くに位置するこの”箱”は、晃汰にとって未知の存在となっていた。 午前の早い時間に始まったリハーサルで、晃汰は本ツアーで初めて自身のサウンドシステムの変更を行った。 初日の自身のサウンドの出来があまりにも芳しくなかったようで、晃汰は誰に言われたわけでもなく、エフェクターをミリ単位で調整を繰り返し、気づけば時計の長針はぐるりと一周をしていた。 そんなこともお構いなしに、晃汰はエフェクターのつまみと睨めっこを続ける。 そんな彼に、松村と白石、それに衛藤といったお色気ムンムンのお姉さま方が近づいた。

  「ねぇ丸ちゃん、この後さ、甲子園行かへん?」

 いつもの笑顔を携えた松村が、ギタリストの肩を叩く。 あまり乃木坂では聞き慣れない単語に、晃汰の眠れる情熱が眼を覚ましそうになっている。 元球児の晃汰にとったら、生の甲子園など夢の舞台であった。
 

  「ここから1時間ぐらいですよね。 変装して電車で行きましょう」

 松村他は、晃汰のマジな眼に驚きながらもウキウキで支度にとりかかった。 炎天下では日焼けグッズは欠かせず、晃汰はサングラスを欠かせない。 

 現地への道中、晃汰はメンバーと離れて移動した。 一方のメンバー達は、高校野球好きを公言する衛藤を筆頭に、大阪桐蔭が母校である松村、中学時代にソフトボール部に所属していた白石、故郷が広島の中元、宮城出身の久保史緒里ら五人が名を連ねている。

  「丸ちゃ〜ん、こっちやで〜!」

  「りんごさん、そんなデカイ声出したらバレますよ!!!」

 阪神甲子園駅で待ち合わせをしているメンバー達は、改札から出てきた晃汰に気付く。 松村が空気を読まずに大きな声を出すものだから、晃汰は周囲を警戒しながら彼女らに近づいた。 

  「それにしても、今日は凄く良いカードですね。 りんごさんの桐蔭(大阪桐蔭高校)も出ますし、ひめたんさんの広陵(広島広陵高校)も久保の故郷の育英(仙台育英高校)も出ますしね。 今日は当たりですよ」

 バックネット裏とアルプススタンドの中間地点に位置する場所に座り、晃汰は電光掲示板を見ながら言った。 サングラス越しに双眼鏡を覗く衛藤に、早くも焼きそばを分かち合う松村と白石、そしてパンフレットに眼を通す中元と久保である。 

 灼熱のグラウンドでは、既に第二試合が始まっており、智辯和歌山の攻撃中である。 中元の故郷の広島代表である広島広陵高校は、第一試合に登場しており大差で勝利していた。 久保の故郷の宮城代表の仙台育英高校はこの後の第三試合となっていて、それまでいられないことを六人は理解していた。

  「今のコースよく打ったな〜」

 コーラを片手に観戦をする晃汰は、二塁打を放った大阪桐蔭高校の選手を褒める。

  「一番バッターが得点圏にいきなりいると、なんでもできるよね」

 頭部を覆うタオルを顔までもってきている衛藤は、晃汰の呟きに同調した。 さすがの松村も、母校の攻撃中は白石とのいちゃつきをやめて、試合観戦に集中している。 

 試合は大阪桐蔭が先制し、一度は追いつかれるものの最後はもう一点を入れて桐蔭の勝利となった。 母校の勝利に松村ははしゃぎ、その姿を見ている白石もどこか嬉しそうである。 サングラスをかけたギタリストとタオルをまだかけている衛藤は、試合後の戦評に没頭し、第一試合に勝利を収めている広陵高校に満足な中元達である。 久保の故郷の仙台育英の試合は第三試合に予定されているが、彼女たちには彼女たちの”試合”があるので、桐蔭の勝利を見て一行は甲子園球場を後にした。 帰り道、仙台育英の試合を楽しみにしていた久保に、晃汰はソフトクリームをご馳走してやった。 久保にすっかり笑顔が戻った事に晃汰を含めお姉さん方は胸を撫でおろした。 

  「さぁ、球児たちに負けないようにライヴ頑張りますよ!」

 灼熱のもとで走り回る高校球児たちに触発され、いつも以上に暑苦しくなった晃汰が、ひときわ大きな声でメンバー達を鼓舞する。 母校の勝利に元気づけられたのか、松村が呼応し、その事がより一層晃汰のテンションを上げてしまうことになった。

Zodiac ( 2018/04/14(土) 20:37 )