AKBの執事兼スタッフ 2 Chapters











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第5章 47人目のギタリスト
41 Storys 〜すき焼き〜
 本番よりも大袈裟に照らしてくるスポットライトに眼を細め、ギタリストはギターの調弦を静かにしている。 メンバー達はステージのあちこちでストレッチや自主練をしており、その見慣れた光景に晃汰は見向きもせず、愛器と会話を楽しむ。

 神宮公演と同様に何着もの衣装を用意した晃汰は、惜しげもなく本番で披露し、メンバーよりも衣装の面で所々目立っていた。 MCにもだいぶ慣れてきた様子で、持ち前のSっ気を遺憾なく発揮し、様々なメンバーをタジタジにさせていた。 

 終演後、遅くに会場近くの割烹料理屋で打ち上げが行われた。 有志だけでの参加となったが、かなり多くのメンバー、スタッフや関係者が集まった。 今夜は珍しくそう言った場に参加をしない晃汰の顔もあり、メンバー達はいつもよりも盛り上がりをみせている。
 
  「晃汰さ、今日間違えたよね?」

 開始早々、ギタリストの隣に座った齋藤飛鳥が彼に強烈な一言をお見舞いする。 勢いでなんとか飲めるようになった生ビールをむせそうになった晃汰だが、落ち着いて飲み込むことに成功をした。 そして、片手で掴めるぐらいの小顔に向かって反論をする。

  「人間なんだから間違いはあるよ。 お前さんだって、振りを間違えたこと、一回もないのかよ」

 それは・・・ と唇を噛みながら、齋藤は俯く。 晃汰はしてやったりといった顔で、ビールを煽る。

 アルコールで十分場は温まり、ちょうどのところで店員がすき焼きの肉を焼き始めた。 大好きな食事を前にし、また、夜中ということもあって生田絵梨花のテンションはアッパーを超えてしまった。 意味不明な言動をとり始め、彼女の横にいる川後陽菜が晃汰に救いを求めるほどである。

  「あれ? 丸ちゃん、お酒飲んでるん?」

 場所替えをした西野七瀬が、オレンジ色の液体が入ったグラスを持つ晃汰の隣に座った。 晃汰は少し赤くなった頬を指で擦りながら、彼女にグラスを合わせた。

  「カシスオレンジです。 水と交互に飲んでるんで、そんな酔ってないですよ」

 カランとグラスを鳴らし、余裕の表情で彼は西野を見た。 口元を押さえてキュートに笑う西野は、彼の隣でくつろぎ始めた。

  「そういえば、丸ちゃんと飲むの初めてやんな。 なんか変な感じ」

 顔だけを晃汰に向けた西野は、なぜだか嬉しそうに首を傾げる。 対する晃汰も口元を緩め、カクテルに手を伸ばす。 カシスの甘みとオレンジの酸味が程よく舌を触り、喉を通り過ぎていく。 酔いたくて飲むわけではなく、この味を堪能したいがために、彼は決まってカシス系を注文する。 その隣の西野は透明な炭酸の吐いた液体を飲む。 恐らくレモンサワーだろうと晃汰は推測し、今度は水の入ったグラスを傾ける。

  「丸ちゃんのギター、なんか知らんけど、めちゃくちゃ歌いやすいねん。 音がしっかり聞こえるというか、ギターが歌ってくれるというか・・・」

 乃木坂内の人気の上位者からこんなに自身の事を褒められてしまっては、晃汰はどういう対応を見せるのが正解なのかわからなくなってしまった。 

  「そうですか? ありがとうございます」

 照れた顔を酔いのせいにできるのは幸いで、晃汰は髪をかけ上げて彼女に礼を言う。 それでも続ける西野に、晃汰は二十歳の落ち着きを必死に取り繕う。

  「七瀬さんは、ライヴになると普段とは違うテンションになるんですね。 観客の煽り方もかっこいいし、後ろで弾いてて楽しいですもん」

 今度は自分の番とばかりに、晃汰は西野を褒めたたえる。 対する西野も酔い以上に頬を赤らめ、サワーに口をつける。 その後も西野とギタリストは何かと話が合い、二人だけの世界を繰り広げることとなった。

 宴会は2時間ほどでお開きとなり、余裕のある者は二次会へと向かった。 晃汰もさほど酔ってはいなかったが、次の日に朝からメンバーとともに愛車を運転して帰らなければならないので、二次会を彼は自重した。 

 熱くなった心身を冷まそうと店外に晃汰は出た。 8月の夜風は少し熱を帯びているが、東北の風は都会よりも涼しく、さわやかである。

  「何してるの? ひとりで」

 ドキリとして晃汰は声のする方に振り向いた。 そこには、彼の頭が上がらないメンバーがビー玉のような瞳を彼に向けて立っていた。

■筆者メッセージ
メンバーとの絡みの描写は何回書いても慣れないものですね。 官能小説っぽくなるのも嫌なんで極力官能シーンは減らしてはいますが、どうしても官能回は拍手をいただけているんですよね(笑)
Zodiac ( 2017/12/16(土) 22:29 )