AKBの執事兼スタッフ 2 Chapters











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第4章 坂シリーズ
34 Storys 〜アクセル全開〜
 マイナー調の重々しい『会いたかったかもしれない』から、初日は始まった。 ハードロック寄りのサウンドを求める為、晃汰は偽イティスを駆る。 セットリストは主にメンバーが考案したものなので晃汰に意見を言う余地はないが、ギタリスト的には初っ端から愛器を使いたかったのが本音であろう。 

 だがそんな一時の感情を、晃汰の頭で分泌されたアドレナリンが吹き飛ばした。 今回のライヴは期生ごとに区切りをつけており、初めは初々しい三期生の出番である。 まだAメロのメロディを晃汰が奏でているときでも、三期生たちの顔には緊張が張り詰めていた。 そんな中、さっそく晃汰はメンバー達と同じように踊りながらプレイをし始める。 笑顔のお兄ちゃんギタリストが近づくにつれ、三期生たちは心の底からの笑顔を取り戻していった。 そして4曲目の『ロマンスのスタート』では、カウントが始まるや否や、彼女たちは一斉にステージを縦横無尽に走り出した。 ライヴでも有数のアガる曲で、クレイジ−ギタリストまがいの晃汰も布袋モデルを抱えながら、三期生たちよりも速く走っている。 圧巻だったのは間奏部である。 シンセのコード音のみの間奏部に、晃汰は案の定ギターソロをねじ込む。 明らかにファンがどよめくのがイヤモニ越しでも晃汰の耳に届き、それが一層彼のテンションを上げた。 

 続いて二期生の登場である。 ギタリストは真っ黒いテレキャスターに持ち替え、一曲目の『バレッタ』を大人しいトーンで奏でる。 四曲目の『そんなバカな…』では、独特な効果音から始まり、布袋モデル特有のハイトーンが熱い神宮を切り裂く。 ここぞとばかりに二期生たちは所狭しとステージを駆け回り、ギタリストもそれに応戦するようにギターを抱えながら走った。 ここらへんから、ギタリストのテンションが一度壊れた。

 最後の一期生の登場を前に、メンバー達は一旦バックへと下がった。 簡易的に作られた控室に入り、衣装を着替えたり髪をセットしなおす。 ギタリストも汗まみれになった上着を脱いでタンクトップ姿となり、髪の毛を自分で整える。 表では一期生の軌跡を紹介する映像が流されており、少しの猶予はそれによって稼げている。 納得いく髪型に整えなおし、新しい衣装に袖を通したギタリストは誰よりも早くにスタンバイ位置へと向かった。 ちょうど出番を待つ一期生たちもそこで待機しており、彼女たちのねぎらいの言葉で、ギタリストのテンションはさらにアガッた。

 一期生の一曲目は『制服のマネキン』であるが、恒例となったダンスパフォーマンスのBGMが、今回はギタリストによるギター一本のみとなっている。 メインステージとは離れたセカンドステージでニューウェイヴ風のカッティング(アクセントをつけて歯切れよく音を短く切る演奏方法のこと)を晃汰は踊りながら刻む。 そこへ各メンバーの名前がアナウンスされ、一人ひとりに焦点を当ててダンスが披露されていく。 最後にはギタリストの名前がアナウンスされ、これには事前に知らされていなかった晃汰だけが驚きを隠せない表情をした。 そんなギタリストの表情はしっかりとモニタに映し出されており、メンバー思わず二やついてしまっていた。

 一期生のターンはユニット曲で大半を占められていて、最後にはピアノの壮大な音色が素晴らしい『君の名は希望』がすべてを浄化して、一期生のコーナーは終了となった。 すぐさまステージは暗転し、演者はバックヤードへと下がる。 何度着替えても衣装は汗に濡れ、晃汰はすっかり重くなった上着を脱ぎすてた。 程よく筋肉がついた腕が露わとなり、少なからず意識したメンバーは何人かいるはずである。 黒いタンクトップの上に薄いシャツを羽織り、ギタリストは再び待機場所へと向かった。

 最後のセクションは、全期生が一同にステージに集結した。 メインステージのみならずセカンドステージにまでメンバーは集い、数で圧倒している。 そこから始まったのはピアノの音色と繊細なギターの音が入り混じる『設定温度』だ。 曲の展開に合わせてギタリストは、流れるようなクリアサウンドと迫力のあるドライヴサウンドとを 絶妙に使い分けた。 後半は夏曲のオンパレードだった。 ガールズルール、夏のFree&Easy、太陽ノック と、これでもかと夏仕様の曲順が設定され、ギタリストは狂ったように踊りながらギターをかき鳴らし、ステージを縦横無尽に走る。 晃汰のせっかく立てた髪は汗と激しいアクションでいい具合のセットになり、メンバー達は前髪を額に張り付けてスカートの裾をはためかせている。 

 ファンの間では密かに『47人目のギタリスト』とささやかれている事実を、晃汰は余すところなく披露する。 彼の隣に駆け寄った生駒が豪快にエアギターをかき鳴らし、同い年の星野や川後らが彼について歩く。 衛藤が油断している晃汰の背中に水鉄砲を放ち、白石がコーラスの部分で自らのマイクを彼の口に当てた。 ファンなら誰しもが羨む事を晃汰は公衆の眼前に晒し、炎上覚悟でライヴを本気で楽しむ。 ギタリストが楽しむことによって乃木坂メンバーも楽しむことができ、次いでは観客も楽しむことができる。 たった一人のギタリストの存在がここまで乃木坂46に影響をもたらし、ビジュアル面だけではなく音楽面にまで相乗効果をもたらしている。 

 晃汰がすべてを手掛け、齋藤飛鳥に捧げた『裸足でSummer』は、TV番組の中継も兼ねて披露された。 

  「次の曲は、僕が作詞から作曲、アレンジに至るまで全てを担当させていただきました。 そして、この曲は齋藤飛鳥に捧げる曲でもあります」

 ツアーティーシャツ姿になったギタリストが、当時の思い出を回想しながら曲紹介をし、MCの後からTV中継がスタートした。 メンバーよりも自分が目立ってはいけないというギタリストの心遣いで、そういった順番となった。 そして、乃木坂メンバーだけでなく、神宮にいたファンも、彼のその心意気には気づいていた。 無事に齋藤飛鳥の初センター曲の披露が終わり、演者は観客席に手を振ってステージを降りた。 再び舞台は暗転し、しばらくは静かな時間がステージ上にだけ流れた。 再登壇を待つファンは必死にメンバーの名前を叫び、再びステージが明るくなるのを待つ。 神宮初日はまだ終わらなかった。

■筆者メッセージ
今回は相当長くなってしまったので、誤字脱字も多いのかなと思います・・・ 詠みぐるしいとは思いますが、よろしくおねがいします!
Zodiac ( 2017/10/14(土) 19:03 )