AKBの執事兼スタッフ 2 Chapters











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第4章 坂シリーズ
30 Storys 〜愛すべき野郎ども〜
 その夜は、晃汰の家族に森保を加えた五人で夕食をとり、食後の珈琲を晃汰は一人掛けのソファに身を委ねながら飲む。 晃汰の嗜好を完璧に把握し尽くした吉田が淹れるカフェオレは、外で金を出して飲むよりも美味いと、晃汰は事あるごとに言っている。

 そこへ、車のカタログを何冊も携えた兄の晃介と父の晃一が、晃汰のくつろぐソファに腰かけた。 晃汰も興味本位でそのカタログを手に取って捲るが、どれもこれも男心をくすぐるものであった。

  「来月にLSが新しく出るから、物を見てみて考えようかなって思ってる」

 LEXUS・LS のカタログを開きながら、晃一が締まりのない笑顔を受かべる。

  「俺はRXが欲しいんだけど、まだ買えねぇな。 20代では乗りたいけど」

 晃介が、こちらも LEXUSのRXのカタログを眺めながらため息を吐く。

  「俺は今後10年は86で十分だな。 その次はビーエム(BMW)かアウディ(Audi)は考えてるけど。 てか、父さんも一台スポーツカー買えばいいじゃん。 俺の86、すげえ乗るじゃん」

  「お前、俺のLSに半年ぐらいお世話になった過去を忘れちゃいないよな?」

  「・・・どうぞお乗りください」

 そんな野郎どもの不毛な議論を他人事のように眺めながら、丸ママと森保は食後のティータイムを楽しむ。

  「どう? ああいう馬鹿男たち。 今は車だけど、一昔前は野球だったのよ」

 丸ママはあきれ顔をするが、どことなく愛おしさがにじみ出ている横顔を森保は察する。 そんな丸ママは、娘のいないせいもあってか、森保との会話にとても積極的である。 対する森保も最低限の敬語は心得るものの、もう何度も顔を合わせ、なおかつLINE友達でもある丸ママに気兼ねなく会話ができている。

 夜9時からのドラマも見終え、各々バスタイムや歯磨きの時間となった。 晃汰は真っ先にバスルームに向かい、10分ほどでバスローブに身を包んだ。 気を遣った晃汰一家の計らいで、二番目に森保が湯船に浸かった。 濡れた髪をタオルでまとめている姿に、晃汰は思わず鼓動が早くなった。

 ドキドキが落ち着かないまま、晃汰は翌日の仕事の確認をする。 手帳とメール、さらにはスマホ内の手帳とを見比べ、漏れがないように細心の注意を払う。 そんな晃汰の苦労を顧みず、森保は晃汰のベッドの上で髪を乾かす。 横目の端に映る森保の妖艶な姿に必死に理性を保ちながら、晃汰は最終確認を終えてベッドに近づいた。

  「ねぇ、晃汰・・・」

 森保は上目遣いで晃汰を見つめ、自身の唇を人差し指でなぞる。 健康な紅色に瑞々しさも相まって、晃汰の心臓の鼓動は速さを極める。 頭の中で何かが吹き飛んだ晃汰は、森保を抱きしめてその唇を奪った。 お互いの唇に吸い付いたかと思えば、いつの間にか舌を絡めあう大人なキスになっていった。

Zodiac ( 2017/10/01(日) 13:45 )