AKBの執事兼スタッフ 2 Chapters











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第4章 坂シリーズ
29 Storys 〜Omens Of Love〜
 乃木坂のメンバーが数多く出演する映画「あさひなぐ」関係の取材で、高山と西野は晃汰を連れて都内の雑誌出版社へ来ている。 乗り心地を保証するミニバンを業務車として与えられてはいるが、晃汰はあえてそれには乗らずに決まって愛車の86をメンバーの送迎でも使用している。 だが、スポーツカー故の乗り心地の悪さと乗降のし辛さは、メンバーの間ではちょっとした噂になっていた。 それを知ってもなお、晃汰は用意されているアルファードにまだ乗ろうとしない。

 高山・西野ペアは記者一人を相手に、普段と変わらない笑顔を見せている。 晃汰は少しだけ離れた場所でカフェラテを啜っているが、二人があまりにも面白い話を繰り広げるので、何回もむせそうになっていた。

  「本当にお二人って仲良いんですね」

 二つの取材が終わり、高山と西野を各々の最寄り駅へと送り届ける最中、ルームミラーに映る西野と助手席に座る高山を見比べながら、晃汰は言った。 西野が真っ先に照れ笑いをし、それにつられて高山も笑いを隠せなかった。 ことあるごとに冠番組では仲の良さが露呈していたが、オフでも本当に仲が良いのだなと晃汰は改めて感じた。

 やがて、高山の最寄り駅に到着した。 順序的に高山が先に降りるので、西野は狭い後部座席に我慢して座っていたのだ。 笑顔で高山が去っていくのを見届け、晃汰はギアをローに入れてクラッチをつないだ。 回転を合わせ、ギアをセカンドに入れる。 この瞬間が、晃汰は森保と抱き合う時間の次に好きである。

  「まいやんに聞いたで。 丸ちゃん、レモンサワー三杯でフラフラになったんやってな」

 首都高の合流に赤い86が成功した時、やけに機嫌の良い西野が運転席の晃汰の方に顔を向けながら言った。 晃汰は目線をずらさずに答える。

  「厳密に言うと、二杯と半分ですよ。 もうあれからお酒は飲んでません」

 後続車両がいないことを確認し、晃汰は慣れた手つきで方向指示器を点滅させ、ステアリングを切る。 速度メーターは優に三桁を突破している。

  「初めはそんなもんやんな。 ウチも、最初の頃は全く飲めんくて。 今でもそんなに飲めへんけど・・・」

 苦笑いを受かべながら、西野は晃汰を気遣った。 晃汰も苦笑いをしながら、ギアを一段下げて急カーブに備える。 壁面に描かれた赤い矢印がカーブの鋭さを表し、荷重が徐々にタイヤの横にかかっていくのが、晃汰の官能をくすぐっている。

 無事に西野の最寄り駅に到着し、彼女が晃汰に手を振ったところでギタリストの今日の仕事は完了だ。 直近のリハーサルの音源が録音されているディスクを再生し、再び86は走り出す。 全体リハーサルを半分ほど聴き終えたところで、晃汰は自宅へと帰ってきた。 ガレージにキレイに駐車をし、ギターにエフェクターボード、手荷物を持って母屋に帰った。 例のごとく吉田が出迎える。 

  「森保様がお部屋でお待ちです」

 嬉しそうに目じりを下げながら、吉田は手荷物と86のキーをを受け取った。 ギターとボードはギタリストが持っている。 

  「あいつも暇人だな」

 晃汰はにやけながら呟く。 吉田も微笑み、晃汰の部屋へと続く階段を手で指し示した。

  「ただいま〜」

 自然流れで部屋の扉を開け、晃汰は自部屋へと入った。 ベッドの上でスマホをいじる森保をあえて無視し、ギターとボードを定位置に据える。 腕時計を外し、大きく伸びをしてから晃汰は森保に飛び込んだ。

  「なになに!? どうしたのよ!?」

 思いがけない先制攻撃を喰らった森保は、しがみついてくる彼氏の頭を撫で繰り回す。 晃汰はまだ森保の胸に顔を埋めたままである。

  「ずっと会いたかった」

 甘えた声で晃汰は小さく答えた。 思いの外、可愛い答えに満足な森保は、さらに強くギタリストを抱きしめた。 

■筆者メッセージ
愛の前兆です。お察しください(笑)
Zodiac ( 2017/09/26(火) 22:44 )