AKBの執事兼スタッフ 2 Chapters - 第4章 坂シリーズ
19 storys 〜またかよ・・・〜
 人数が多いAKBとは逆に少数精鋭といった乃木坂では、メンバー間がAKBよりも近いことが特徴である。 派閥でまとまることもしばしばあるが、嫌みのない派閥が出来上がり、お互いを尊重して共存している。 晃汰は様々な集まりに引っ張りだこであり、いろんなところに顔を出してはメンバー達との会話を楽しんでいる。
 
  「いや、最初のときはまいやんさん(白石麻衣)が怖かったですもん。 なんか近寄りがたいオーラが漂ってて・・・」

  「いやいや、そんなことないよ! 私こんなにアットホームな感じなのに」

  「や、まいやんたまに凄い怖い顔してるときあるから・・・」

  「あぁ!?」

 いつものように、秋元真夏の一言に発動する黒石さんを目の前で見れた晃汰が、ご満悦なのは言うまでもない。

  「お! 黒石さんいただきました」

 手をたたいて喜ぶ晃汰に、白石は軽くパンチを食らわせる。 それを見た秋元が更に白石を茶化す。 普段から仲の良い二人は、いつもこんな感じなんだなと、晃汰はふと感じる。

 ファッション誌の特別企画で、白石と秋元の二人に焦点を当ててインタビューや撮影をしている。 晃汰はその両名の世話役で彼女らに帯同しているのである。 今はちょっとした空き時間で、三人で楽しく会話(?)を楽しんでいる。

  「まいやんさんって、本当にお茶目なんですね。 工事中とか見てても、裏ではお茶目って皆が言ってましたし」

 ペットボトルのお茶を飲みながら、晃汰は白石に訊ねる。 
   
  「お茶目なのかなぁ・・・ 素がこういう感じだから、無理に作ってるつもりはないんだよ、こっちのほうが真夏とかも喜んでくれるしね!」

 白石はそう答えながら、秋元の少し・・・だいぶ大きな頭をこれでもかと撫でまわす。 例によって極限まで眼を細める笑顔を、秋元は白石と晃汰に披露する。
 
 取材が終わったのは、西日がビルの隙間からこぼれるぐらいの頃だった。 晃汰を除く2人はこの後はオフらしく、何人かと合流してちょっとした飲み会を開く予定らしい。
  
  「終わったら来ればいいじゃん。 というか、来なさい(笑)」

 黒石さんにそう言われてしまえば、晃汰に選択の余地はない。 この後に予定のある晃汰は、白石と秋元に合流の約束をして乃木坂の事務所へと急ぐのであった。

 乃木坂の事務所で全体会議が行われる。もちろん、留学生の晃汰も出席対象である。 この時期の会議は専ら、夏に行われる神宮での野外ライヴの打ち合わせであろうと晃汰は踏んでいる。 案の定、議題から神宮ライヴであり、最後までその通りとなる。 2か月後の7月に開催が決まっており、ステージセットなんかの発注なども万全という話である。 ただ、ここで予想外のことが言い渡される。 
 夏の神宮球場でのライヴを、晃汰率いるバックバンドによる生演奏を全編にわたって繰り広げるというのだ。 その上、15thシングルの作詞作曲を、すべて晃汰に託すというのである。 薄々感づいていた本人ではあるが、いざ好評されると戸惑いを隠せないでいる。 

  「まあ、丸なら大丈夫でしょ」

 乃木坂の先輩スタッフたちは会議の後、そう言って最年少スタッフの肩を叩いていくのであった。

■筆者メッセージ
皆さまお久しぶりです。すっかり乃木坂にはまってしまい、しばらくは乃木坂モードをお楽しみください。
Zodiac ( 2017/07/30(日) 21:40 )