AKBの執事兼スタッフ 2 Chapters











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第4章 坂シリーズ
17 Storys 〜成り行きに任せて〜
 自分の部屋で客が待っていることを知っていても、晃汰は自分のペースを崩さない。 ゆっくり湯船に浸かり、しっかりと髪を乾かして歯を磨く。お気に入りのパジャマに着替え、廊下をゆっくりと自室へ向かって歩く。 

  「おかえり、遅かったね」

  「恋愛禁止のアイドルが、男のベッドの上で言う台詞じゃないぜ」

 ベッドでくつろぐ森保を横目に流し、晃汰はまっすぐ机に向かってデスクトップ型のパソコンを起動した。 スマホとパソコンのメールをリンクさせてはあるが、漏れの確認という意味で、彼はこうして毎晩メールを眺めている。 

  「乃木坂の人とメールしてんの?」

 変わらずベッドの上で俯せになって本を読む森保は、視線を活字から離さずに晃汰に訊ねる。 もちろん、晃汰が今の今まで乃木坂の歓迎会に行っていたことも、彼女は知っている。

  「仕事関係のメールだよ。 見たきゃ見ていいよ」

  「じゃあいいや」

 アイツもドライになってきたな。 晃汰はそんなことを頭の片隅に思いつつ、メールの確認を終える。 ブルーライト加工の眼鏡を机にそっと置き、背伸びをしながらベッドに歩を進める。 彼が近づいてくるのに気づき、森保は本を閉じて布団をかぶった。 その布団に潜り込むように、晃汰は森保の隣に寝転んだ。 彼の左腕に森保は絡みつき、まだ温かくなりきらない布団で、互いの体温で温めあっている。 

  「久しぶりだね、こうして寝るの」

 暗くなった室内に、晃汰の声が響く。 森保の方に振り向いてもまだ眼が暗闇に慣れていないから、彼女がどんな顔をしているのか、晃汰はわからない。 そんなことも手伝って、晃汰は彼女の頬に手を伸ばした。 顔の輪郭をなぞり、額を撫で、鼻のてっぺんを通って唇を辿る。 だんだんと闇に慣れてきたとき、唇の感触とともに晃汰の視界には森保の少し広い額しか見えなくなった。 十数秒間、唇は触れ合い、最後は森保の方から離れた。どうせ森保のことだから、深いキスをせがんで来ると思った晃汰は、少し拍子抜けである。 なにはともあれ、2人は仲良く腕を絡ませあいながら眠りについた。

 翌朝、晃汰の目覚ましで森保は飛び起きた。 いつもと違う音が鳴ったため、敏感(Sensitive)な森保の耳は瞬時に異変を脳に伝え、結果として跳ね起きたのである。 そんな森保にとって時限爆弾を仕掛けた張本人は、昨晩の疲れがまだ癒えない様子で、未だに夢の中である。 子どもみたいな彼の寝顔と時計を見比べ、森保も再び彼とともに夢の中へと落ちていった。

■筆者メッセージ
まさかまだ年内に更新できるとは思っていませんでした(笑)今度こそ、恐らく最後です・・・
Zodiac ( 2016/12/29(木) 22:25 )