AKBの執事兼スタッフ 2 Chapters











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第4章 坂シリーズ
15 Storys 〜ファーストコンタクト〜
 突然の留学を言い渡されてから1週間が過ぎたこの日、AKB専属のギタリストの肩書を持つ男は、乃木坂46が新曲の振り入れをしているスタジオに足を運んでいた。 特に上層部の方からの指示ではないものの、これから世話になる人たちの稽古を見学するのも悪くはないと考え、晃汰は某スタジオへと向かったのである。 

 事前に乃木坂界隈の関係者には連絡をしておいたから、門前払いを食らうことはなかった。 逆に、VIPのような手厚いもてなしが晃汰には用意されていた。 そこまでの対応を求めていなかったギタリストは、終始落ち着かない様子だった。

 晃汰よりも歳が5個上、しかも身長が5cm上の徳長という男が、彼のサポート役として期間内は動くということである。 直近の若手が徳長しかおらず、こういった人選になったと徳長自身が笑いながら晃汰に説明する。 それを当の晃汰は苦笑いをしながらでしか受け答えができない。 だが、その人選が誤りではないことを、晃汰はその後に身をもって感じることになる。

  「メンバーに紹介するよ」

 気さくな徳長は、自身が用意した珈琲を飲み切る前に立ち上がり、晃汰を手招く。 晃汰としても本命はメンバーへの挨拶だったので、やっと今日来たかいがあったなとため息を吐いた。 敵情視察ではないが、乃木坂のレギュラー番組は毎週チェックしていた彼は、早く「黒石さん」や「箸くん」を見たいのであった。

 メンバーがレッスンをしているスタジオの前まで二人は移動し、扉に取り付けられている丸い窓から中の様子を探る。 ちょうど休憩時間(ブレイクタイム)らしく、何かの番組の企画で見た、素の彼女たちがそこにはいた。

  「ちょっとだけいいですか!?」

 板張りのスタジオに徳長の声が響き渡り、メンバーは一斉に二人の方に首を向ける。 え?と声を漏らして口元を覆う者が半数以上で、恐らくその連中は少なくとも晃汰のことを既知なのだろう。 そんなこともつゆ知らず、徳長は続ける。

  「今日から期間限定で、AKBさんから留学生として乃木坂加わる、丸山くんです」

 徳長は晃汰を掌で示しながら紹介する。

  「AKBから来ました、丸山晃汰と申します。 正式な期間は決まっていませんが、仲良くしていただければと思います。 どうぞよろしくお願いします!」

 長身のギタリスト兼スタッフは深々と頭を下げ、それに応えるかのようにメンバー達は笑顔で拍手を送る。 元SKEの松井玲奈が乃木坂を兼任していたこともあり、AKBと乃木坂は多少の交流は今もあるらしい。 そんなことも手伝って、あまりにもTV露出が多いこのスタッフのことを、乃木坂の連中は前々から知っていたのだ。
 
  「雰囲気が違いますね、AKBと・・・ 少数精鋭って感じが羨ましいです」

 ひとますスタジオを後にする廊下で、晃汰は徳長に意味ありげな笑顔を向ける。 返答に一瞬戸惑った徳長だが、「AKBは大人数で楽しそうで羨ましいよ」と、うまく返すことに成功する。 どちらの本音も、互いのグループが抱える影を孕んでいた。

■筆者メッセージ
お久しぶりです・・・
またゆっくりかいていきますので、よろしくです
Zodiac ( 2016/12/11(日) 21:06 )