AKBの執事兼スタッフ 2 Chapters











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第2章 まどかデイ
8 Storys 〜プレゼント〜
 楽しい時間もあっという間に過ぎ、晃汰と森保、そして浩樹の3人は電車を乗り継いで森保家の最寄りの駅までたどり着く。 森保のパパが駅まで車で迎えに来ており、暗い夜道を歩かずに3人は森保家まで帰ることができた。 以前にも何度か森保の両親とは面識があり、晃汰は今夜も臆することなく森保の自宅に上り込めた。 
 
 森保がシャワーを浴び終えると、すぐさま森保一家に晃汰を足した5人で、ささやかな誕生パーティーが始まる。 野球好きな森パパは、晃汰が中学まで野球をやっていたことを分かっているから、普段ではできない野球の話でビールが進む。 息子の浩樹にも野球をやらせたかったらしいのだが、本人はテニスに傾倒してしまった。 だが、そちらの方で並々ならぬセンスを見せ始めたので、結果よしと森パパは言う。 そんなことも手伝って彼は目の前にいる娘の恋人を肴に、いつも以上に旨い酒を舐めている。

 食後、蝋燭を立てたバースデーケーキが食卓にあがり、森保はそれを二息で吹き消した。 白いケーキを一切れずつ食べ終わると同時に、晃汰は日中に浩樹に受け取らせておいたプレゼントを、リビングに持ち込んだ。 

  「これは、ほんのつまんない物だけど・・・」

やけに大きな段ボールから晃汰が出したのは、国産の老舗メーカーRolandの電子キーボードである。 ピアノを習っていた森保の為に、鍵盤は普通の物とは違う重い物となっており、その事が森保をいっそう喜ばせることとなる。 本体の全面、社名のロゴとは逆の位置にローマ字で森保のフルネームが刻み込まれている。

 口直しの珈琲を待たずに、晃汰と森保は彼女の部屋に行き、早速キーボードに指をのせる。 まずはデフォルトで設定されているグランドピアノの音色で開始され、森保は十八番である 『黒鍵のエチュード』 を滑らかに弾く。 それをクッションに身を委ねた晃汰が、鼻歌でハモる。 ここにギターがあれば即興(アドリブ)で弾けるのに と、晃汰は少し悔しがって、両手を頭の上に置いた。 

   「今日はここまで」

 キーボードの電源を切った森保は、付属されていたケースをかぶせながら言った。 晃汰にとってはもう少し彼女の演奏を聴いていたかったが、これから先も聴ける機会があることを考えて自重した。 そんな時、森ママがトレイに紅茶と珈琲、それにお菓子を載せてやってきた。 ブラックの珈琲を好まない晃汰の嗜好をよく知っている森ママは、砂糖とミルク多めの珈琲を彼の為に淹れたのだ。 蒸気に鼻を濡らしながら、2人はマグカップを傾ける。 晃汰は、森保家で飲むコーヒーがどこよりも好きだった。

 

Zodiac ( 2015/12/22(火) 19:26 )